レンズレビューへようこそ。
普段の当ブログは、プロのレンズ設計者である高山仁が写真用レンズの性能分析しておりますが、当記事では特別にカメラの分析・レビュー記事となっております。
今回、分析を行うカメラは2023年発売のミラーレス一眼カメラ「NIKON Zf」となります。
作例をお探しの方はこちらの記事をご参照ください。
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新刊
カメラの概要
2018年、NIKONのフルサイズミラーレス一眼システムであるZマウントシステムが発売されました。
ミラーレス一眼カメラの発売初期にはZ7、Z6の2台体制であったものの、執筆現在(2023時年)ともなるとZ5、Z6II、Z7II、Z8、Z9と多くのフルサイズミラーレスが発売される活況となり、一眼レフカメラについては「終了の時」が迫るのを感じます。
また、NIKONのミラーレス一眼はフルサイズだけでなく、撮像素子サイズの一回り小さなAPS-Cサイズの素子を採用した小型機のZ50、Z30、Zfcも発売され、特にZfcはフィルムカメラを彷彿とさせる古風なデザインが大人気となりました。
そして、発売となったのが今回分析するフルサイズミラーレス一眼の「NIKON Zf」です。
NIKON Zfは、一眼レフの往年の名機であったNIKON FM2(1982年発売)をリスペクトしたデザインを採用し、かつてフィルムカメラで感じたような精緻と剛性を感じる端正な佇まいで大人気となり、2023年10月27日の発売時点で次回入荷は半年待ちとなるほどの品薄状態となりました。
仕様比較
NIKON Zfと同時期に発売されているZマウントのフルサイズミラーレスを一覧にまとめました。
項目 | Zf | Z5 | Z6II | Z7II | Z8 | Z9 |
---|---|---|---|---|---|---|
発売日 | 2023/10/27 | 2020/8/28 | 2020/11/ 6 | 2020/12/11 | 2023/5/26 | 2021/12/24 |
有効画素数 | 2450万画素 | 2432万画素 | 2450万画素 | 4575万画素 | 4571万画素 | 4571万画素 |
画質モード | RAW 14ビット | RAW 12/14ビット | RAW 12/14ビット | RAW 12/14ビット | RAW 14ビット、 | RAW 14ビット |
画像処理エンジン | EXPEED 7 | EXPEED 6 | EXPEED 6 | EXPEED 6 | EXPEED 7 | EXPEED 7 |
メディアスロット | SDカード microSDカード | SDカード×2 | XQDカード CFexpressカード TypeB/SDカード | XQDカード CFexpressカード TypeB/SDカード | XQDカード CFexpressカード TypeB/SDカード | XQDカード CFexpressカード TypeB/SDカード |
ISO感度 | 標準:ISO100~64000 拡張:ISO50相当、204800相当 | 標準:ISO100~51200 拡張:ISO102400相当 | 標準:ISO100~51200 拡張:ISO102400相当 | 標準:ISO64~25600 拡張:ISO32相当、102400相当 | 標準:ISO64~25600 拡張:ISO32相当、102400相当 | 標準:ISO64~25600 拡張:ISO32相当、102400相当 |
フォーカスポイント | 273点 | 273点 | 273点 | 493点 | 493点 | 493点 |
背面液晶モニター | チルト式8cm/3.2型TFT液晶 約104万ドット | チルト式8cm/3.2型TFT液晶 約104万ドット | チルト式8cm/3.2型TFT液晶 約210万ドット | チルト式8cm/3.2型TFT液晶 約210万ドット | チルト式8cm/3.2型TFT液晶 約210万ドット | チルト式8cm/3.2型TFT液晶 約210万ドット |
シャッター | 電子制御上下走行式 フォーカルプレーンシャッター 電子先幕シャッター 電子シャッター | 電子制御上下走行式 フォーカルプレーンシャッター 電子先幕シャッター 電子シャッター | 電子制御上下走行式 フォーカルプレーンシャッター 電子先幕シャッター 電子シャッター | 電子制御上下走行式 フォーカルプレーンシャッター 電子先幕シャッター 電子シャッター | 電子シャッター センサーシールド | 電子シャッター センサーシールド |
シャッタースピード | 1/8000~30秒 | 1/8000~30秒 | 1/8000~30秒 | 1/8000~30秒 | 1/32000~30秒 | 1/32000~30秒 |
連続撮影速度 | 高速連続撮影(拡張):約14コマ/秒 ハイスピードフレームキャプチャ: 約30コマ/秒 | 高速連続撮影:約4.5コマ/秒 | 高速連続撮影:約5.5コマ/秒 高速連続撮影(拡張):約14コマ/秒 | 低速連続撮影:約1~5コマ/秒 高速連続撮影:約10コマ/秒 高速連続撮影(拡張):約10コマ/秒 | 高速連続撮影:約10~20コマ/秒 ハイスピードフレームキャプチャ: 約120コマ/秒 | 高速連続撮影:約10~20コマ/秒 ハイスピードフレームキャプチャ: 約120コマ/秒 |
重量 | 約710g | 約675g | 約705g | 約705g | 約910g | 約1340g |
幅x高さx奥行き | 144x103x49mm | 134x100.5x69.5mm | 134x100.5x69.5mm | 134x100.5x69.5mm | 144x118.5x83mm | 149x149.5x90.5mm |
価格 (2023/11/10調査時) | 269,280円 | 147,999円 | 246,799円 | 362,316円 | 529,572円 | 643,180円 |
※仕様が実質同じ項目などは記載していません。
基本的な撮影機能はZ5に近いのですが、専用のシャッターダイヤルやISO感度ダイヤル、モノクロ撮影切替スイッチ、などハードウェア的にも大きく異なり、最新の画像処理エンジンEXPEED 7が搭載されたことで、AF時の被写体認識能力がさらに向上しているそうです。
パッケージ
さて、まずは梱包状態から確認いたしましょう。
2023年9月20日にNIKON Zf が発表されましたが、その瞬間から入手困難になることを判断した私は9月22日の予約開始日に安心のヨドバシカメラへ即注文を入れました。
予想通り、予約開始日の数日後にヨドバシカメラを再度確認すると「発売日以降のお届け」との表示になっており、初回在庫は予約開始直後の数日間で無くなったようです。
そして発売日2023年10月27日の夜、めでたく到着しました。
ぴっちりと止められたテープには剝がしやすいように折り返しがつけられており、さすが国内最大手カメラ店の「まごころ」を感じます。
そして梱包の外からでも、NIKON Zf の威光を感じるの私だけでしょうか。すでに何か漏れ出しているのを感じます。
さっそく開梱してみましょう。
運搬用の梱包を紐解くと、そこには渋いダークカラーで低反射率の箱に黒文字でNIKON Zf と刻まされた箱が鎮座していました。
反射率が高くいわゆる「テカる」箱ですと撮影時に、反射が目立って安っぽく見えるので、このような低反射率のデザインにしているのではないでしょうか?
写真に真摯に向き合うメーカーらしい賢明な判断です。
なお、NIKKOR Z 40mm F2.0 (SE)がセットでのモデルを購入していますので「40/2 SE Kit」を書いてあります。
40mm F2.0についてはすでに過去に分析しておりますのでこちらの記事をご参照ください。
ここからは、マスクと手袋をして慎重に箱を開けましょう。
箱は二段構造になっており、上段には両端がUSB-Cタイプのケーブルと、マニュアルが入っています。
ケーブルはかなり立派な太さです。スマホのおまけケーブルの2倍ぐらいの太さがあるでしょうか。
下段を開けてみましょう。
基本は段ボールで構成された梱包で、カメラとレンズはポリエチレン気泡緩衝材(プチプチ)に包まれています。
環境問題などのいわゆるSDGsに配慮した構造なのでしょう。昔の梱包はプラスチックだらけでしたからね。
さらにポリエチレン気泡緩衝材を取るとこのようになります。
ようやく、カメラが登場しました。
カメラとレンズはわかると思いますが、右下はバッテリーとストラップです。
ストラップはマニュアルフォーカス時代のフィルムカメラを思わせる細身で落ち着いたデザインで、本体のデザインと良くなじみます。
ここでお気づきかもしれませんが、NIKON Zfには充電器が付属しません。充電器について本文の下の方でまとめて紹介します。
カメラの外観
それでは、カメラ本体を確認してみましょう。
カメラボディーの前カバーとトップカバーにはマグネシウム合金が採用され、ダイヤルは真鍮製だそうで、手にしてみると適度な重みと剛性感が素晴らしい逸品です。
外装には目の粗いシボが付いた人工皮革が貼られており、NIKON FM2に似たフィルムカメラ感を後押ししています。
少しだけNIKON FM2を解説すると、まずNIKONのカメラの名称はプロ向けとして「ヒト桁系(F1,F2,F3...)」があり、これは現代の若者でもご存じでしょう。
一方、フィルムカメラ時代の普及クラスの代表機種がFMシリーズで、特に人気が高くロングセラーとなったのがNIKON FM2でした。
フィルムカメラの王道にして終着点のようなデザインで、今回のZfのベースとして採用されたのも納得の選定です。
なお、このような古風で伝統的なデザインをヘリテージデザイン(heritage design)と称します。
上面から見てみましょう。
左から露出補正ダイヤル、シャッターダイヤル、ISO感度ダイヤルと専用のダイヤルが装備されています。
また、M/A/S/Pの露出モード切替レバーもフィルムカメラ感を思わせる構造です。
最近のカメラは、ダイヤルの設定を自由にカスタマイズし使う構造主流となりましたが、NIKON Zfではあえてアナログ感のある専用ダイヤルを採用することで視認性が高く、道具を使う楽しさが格段に向上します。
背面を見ると、モニター部にも人工皮革が貼られているので一見フィルムカメラかと勘違いしてしまいます。
私は「モニターはずっと閉じたままで使おう」と思います。
外観を拡大
外観の仕上がりをデジタルマイクロスコープで観察してみました。
まずは「Zf」のZ部分です。
シルクスクリーン印刷では無く、彫り込まれた中に塗装が施されており、キリリと角が立って美しいですね。
少しざらついた仕上がりの表面処理が、少し鋳物のような重厚感を与えます。
シャッター速度ダイヤルの文字部分です。
シャッター速度ダイヤルとISO感度ダイヤルは真鍮製だそうですが、表面の文字はこちらも印刷ではなく、機械加工で文字が彫り込まれています。本当に仕事が細かいですね、値段が張るのも納得です。
ISO感度ダイヤルも同様に文字が刻まれています。
最後に人工皮革のシボ(凹凸)の様子を確認しました。
このようにシボのある仕上がりにするのは、カメラを持った時の滑り止め効果と、傷や指紋などの汚れが付いても目立たないようにする効果があります。
寸法計測
続いて、外観寸法を確認しました。
まず、気になるのは「ささやかな形状のグリップ部」の厚みです。
グリップ部はカメラを握る時に必ず触れる場所ですから最重要ポイントです。
グリップ部の厚みは、実寸で43.7mmでした。
その反対側、グリップの無い側(カメラ正面から向かって右側)の厚みです。
グリップの無い側は44.5mmで、見た目の印象と異なり、グリップの無い側の方が厚みがあります。
これは背面液晶の部分が少し厚いためですね。
次は、肩の高さを測ります。ここを知っておくといわゆる「指余り」がどの程度になるのか判断が付くので重要です。
肩の高さは76.8mmでした。手の大きい方には少し物足らない大きさかもしれません。そんな方はNIKON Z8などの方が良いかもしれませんね。
さらに、カタログに記載されているのですが、確認のため横幅も計測してみました。
カタログは144mmとありましたが実測で144.47mmでした。側面に液晶の可動用ヒンジなどの突起部分があるのでどこを測定するかでわずかにズレは出るものと思います。
自慢のシャッターダイヤルとISO感度ダイヤルの寸法も確認しました。
2か所とも同寸法のようで24.1mmほどでした。
重量計測
カタログに記載されていますが、気になったので重量も確認しました。
カメラ本体、電池、マウントキャップ込みの重量は722gでした。
セットで購入したNIKKOR Z 40mm F2.0は前後キャップ込みで192g。軽いですね。
スイッチ圧
スイッチ類の押し圧も確認しました。
確認にはこちらのデジタルプッシュプルゲージを使いました。
- レリーズスイッチ半押し:1.0N(ニュートン)
- レリーズスイッチ全押し:2.6N
- シャッター速度・ISO感度ダイヤルロック:1.9N
- レンズ脱着ロックスイッチ:7.0N
意外にレリーズはしっかりめの設定のようです。
これは安易な連射に頼らず、1枚入魂で写真を撮れとNIKONから諭されている、そんな気持ちになりますね。
NIKKOR Z 40mm F2.0装着
NIKKOR Z 40mm F2.0をセットで購入しましたので、記念に装着状態の画像を紹介します。
続いて上面です。
Zfとセットで販売されているNIKKOR Z 40mm F2.0 (SE)のSEとはSpecial Editionの略称になっています。
NIKON ZfやZfcにマッチするヘリテージデザインを採用しており、フィルム時代のNIKKORレンズの外装部に見られるローレット加工を模したデザインとなっています。
執筆現在(2023年)ではNIKKOR Z 40mm F2.0とNIKKOR Z 28mm F2.8の2本のSEモデルが発売されています。
充電機器に関する情報
NIKON Zfには充電器が付属しておりません。充電するには、3種類の方法があります。
一番手軽な方法としては、純正ACアダプタ「EH-8P」を本体のUSB端子に繋ぐことで本体充電が可能です。
あるいは、電池を取り出して純正バッテリーチャージャー「MH-34」で充電する。
マニュアルによれば、ノートパソコンのUSB-C端子とカメラのUSB端子を接続することでも充電可能とあります。
この3種が公式な方法です。
しかし、純正のACアダプタはサイズも大きく値段も高く、1個ならまだしもさすがに外出用に2個目を購入するのは現実的ではないと思います。
ところが、充電機器に対する条件が厳しく、詳細が公開されていないので、どのような商品を選べば良いのかわかりません。
実際、私の手持ちのスマホ用のACアダプタを4個ほど試しましたが、どれも充電できませんでした。
代替え商品について調査の結果、保証は一切できませんが下記のACアダプタでNIKON ZFの充電が可能であることを実際にテストし確認しました。
旅行にも最適な小型軽量で、お値段もお安めです。定番のAnker社製ですから安全性も問題無いでしょう。
※ご購入の判断は自己責任でお願いいたします。(保証は一切いたしません)
終わりに
私は仕事がらたくさんのカメラを使ってきましたが、NIKON Zfは久しぶりに手にしただけで「ニヤリと笑顔になる」そんな最高の満足感をくれるカメラです。
しばらく入手が難しい時期が続きますが、もし店頭で見かけたら手にしてください。きっと購入してしまいますよ。
さらにミラーレス一眼カメラについてもっと良く知りたい方は以下の記事をご参照ください。
関連記事:ミラーレス一眼カメラのしくみ
作例はこちらです。
関連記事:NIKON NIKKOR Z 40mm F2 + Zf 作例記事
関連記事:NIKON NIKKOR Z MC 105mm F2.8 VR S作例CP+2024の観察