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歴史的レンズ解説 Carl Zeiss Tessar 38mm F5.5 【世界レンズ遺産】第001話

世界レンズ遺産

19世紀後半から写真技術の発展と供に急激な進化を遂げた光学技術により、この世界に多種多様なレンズが生み出されてきました。

有名無名の光学設計者達が、その人生を捧げ研鑽したレンズに改めて光を当て、その輝きを顧みるのが連載「世界レンズ遺産」シリーズです。

本日も光学設計のプロ「高山仁」がご案内いたします。

本日のレンズ

さて、本日ご紹介するレンズは、Carl Zeiss Tessar(テッサー)です。

まず、Carl Zeiss社は、近代的なレンズの製造・設計技術を確立したメーカーで、現代でも光学産業界における最高峰として光り輝く存在です。

ガラスの溶解から品質管理まで一連の近代化を成し遂げ、光線追跡法などによる現代的な光学設計の基礎を築いたとされています。

Carl Zeiss社が生み出した数々のレンズのなかでも、初期の銘玉とされるのがTessar型と言われるシンプルで美しいレンズです。

そのTessarの最初のレンズとされる38mm F5.5をご紹介しましょう。

 注:焦点距離はわかりやすいように35mm版換算値としています。

文献

Tessarは、ドイツの物理学者パウル・ルドルフ博士が1902年にCarlZeiss在籍中に設計したとされます。

実際に1902年の特許文献(DE142294)が残されています。当時の文献の表紙をご紹介しましょう。

原文はドイツ語なので細かい部分はよくわかりませんが、CARL ZEISS in JENA(イエナ)の表記が確認できますね。

レンズの概要

文献に記載されたレンズの構成図を確認してみましょう。

最も基本的なTessar型は、3群4枚構成でとてもシンプルな構成です。

レンズの構成の基本である対称型配置に近い構造とするこで、全ての収差のコントロールに成功した初めてのレンズとも言われています。

このレンズ以降、Carl Zeissは長きに渡り改良を施し、ついにF2.8の明るさを実現している。

その出自は異なるとされていますが、現代カメラの源流ともされるLeicaの最初のレンズであるElmarもTessar型の配置となっています。

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検証

特許文献に記載された実施例から再現してみました。

光路図

当時としては十分明るいFnoですが、F5.5と控えめなのでだいぶ小振りなことがわかります。

収差図

まだまだガラス材料の開発途上の時代ですから、収差は自体は残りますが見事に「コントロールされたものだ」と感じるまとまりですね。

終わりに

人類が全ての収差のコントロールに初めて成功したとされる画期的なレンズ構成であるTessar型。

その源流には美しいレンズが存在し、100年以上経過した現在でもその輝きは健在でしたね。

ぜひ、世界レンズ遺産に推薦したい逸品です。

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  • この記事を書いた人

高山仁

いにしえより光学設計に従事してきた世界屈指のプロレンズ設計者。 実態は、零細光学設計事務所を運営するやんごとなき窓際の翁で、孫ムスメのあはれなる下僕。 当ブログへのリンクや引用はご自由にどうぞ。 更新情報はXへ投稿しております。

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