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【プロが教える】簡単で綺麗にできるレンズのクリーニング方法

レンズの表面に指紋などの汚れがついてしまうと、写真の解像度が低下してしまうため常にピカピカにしておきたいものですね。

しかし、普通のティッシュで拭いてもあまり綺麗になりませんし、カメラ店へクリーニング道具を買いに行くとたくさんありどれが良いのかさっぱりわかりませんよね?

私、高山は長年レンズ設計の仕事をする傍ら、写真用レンズを解説するブログ「LENS Review」を運営しています。

この記事では、レンズの構造から製造方法まで知り尽くしたプロのレンズ設計者である私がおすすめの、簡単で綺麗に仕上がるレンズの汚れのクリーニング方法を解説します。

レンズのクリーニング方法

クリーニングの作法や道具は色々な物がありますが、私のおすすめする簡単で一番きれいになる方法について、ご紹介しましょう。

その前に、私が若かったウン十年前のお話ですが、勤め先におられたレンズ製造職場のお師匠様からよく『拭き3年』と言われたものです。

「拭き3年」とは、レンズを綺麗に拭き上げるだけでも3年もの修行を要する、そんな意味です。

実はそれほどまでにレンズを綺麗に拭き上げることは難しいのですが、現代では様々な便利な道具が登場しており、うまく使いこなせば3年修行したレンズ職人のごとく、綺麗に拭き上げることが可能です。

それでは本題のレンズクリーニングの便利技をご紹介しましょう。

結論からご説明すると、クリーニングの工程はなんとたったの3つです。

手順1 ブロワーで全体のゴミを飛ばす

手順2 ウェットタイプのクリーニングティッシュでレンズ表面を拭く

手順3 マイクロファイバークロスでレンズ表面を仕上げ拭き

それでは各工程について、詳しくご紹介しましょう。

手順1 ブロワーで全体のゴミを飛ばす

ブロワーとは、空気の圧力でゴミを飛ばす道具です。手で握り込むことで空気を圧縮し勢いよく噴出させます。

一番最初の作業としては、ブロワーによる空気の圧力でレンズに付着したゴミをできるだけ飛ばします。

ブロワーは大きいほど威力が大きくなりますが、持ち運びには少しかさばりますので自宅用と外出用で大小2個そろえるのが良いでしょう。

ブロワーを使う意味

最初にブロワーでゴミを飛ばすのには重要な意味があります。

ブロワーでの作業の目的は、目に見えずらいとても小さなサイズの砂などの硬い付着物を除去することにあります。

なぜこれが重要かと言うと、次の作業でレンズの表面を拭いた際に硬い付着物が残っているとレンズに傷をつけてしまいます

指紋などの汚れなら拭けば綺麗になりますが、傷がついてしまうと元に戻すことができません

特に、小さな線状の傷ができるとこれが最悪でスリット効果により回折現象を起こしてしまいます。

線状の傷によって回折現象を起こすと、画面内に光線状(光条、光芒とも言う)に写り込みます。

上は線状の傷が原因となり発生する有害な光線の様子の模式図です。

左側のようにレンズの表面に傷が入り、そこへ太陽や街灯などの強い照明がかかると回折現象により傷と直交方向へレーザー光線のような像が写り込みます。

クロスフィルター

この傷による回折現象を逆手にとって、上手く使っているのがクロスフィルターです。

クロスフィルターを使うと、回折現象の効果により街灯などの強い光源の周りに印象的な光線を描くことが可能です。

クロスフィルターならば美しい効果を自在に作ることができ、取り外しも可能ですが、レンズに直接的に傷ができると戻すことができませんから絶対に避けたいものです

手順2 ウェットタイプのクリーニングティッシュでレンズ表面を拭く

近年、安くなり手軽に使えるようになったのがウェットタイプのレンズ専用のクリーニングティッシュです。

これは、アルコールを主成分とした液体が染み込ませてある使い捨てタイプのレンズ専用クリーナーで、レンズ表面の油分を強力に浮かせて綺麗に除去できる手軽で便利な道具です。

1枚づつ小分けになっているので必要な枚数だけ屋外への持ち出すことも可能です。

注:ウェットティッシュと言っても手を拭くような衛生用品ではありません。

大量に入った物ほど1個あたりの値段が安くなりますので、通販でまとめ買いするとお安く済みますね。

なお、洗浄成分がよくわからない安物は少々心配ですので、国産のレンズ専用品をおすすめします。

手順3 マイクロファイバークロスでレンズ表面を仕上げ拭き

ウェットタイプのティッシュでも十分綺麗にすることもできますが、アルコール洗浄液がたっぷりと付いている国産品ですと拭き残しが斑点状に残ってしまうことがあります。

これを最後にピカピカに磨き上げるのに使うのがマイクロファイバー(超極細繊維)のクロスです。

マイクロファイバーは、ホコリや糸くずを出さずに指紋などの汚れを綺麗に拭き上げることができる優れた素材です。

取れにくい汚れとは、主に指紋や皮脂などの油分を含む極微細な粒なのですが、繊維が細いほどそんな小さな汚れを巻き取ることが可能なためマイクロファイバーが有効なのです。

マイクロファイバーで、最も有名で元祖と言えるのは東レ社の「トレシー」でしょう。

1980年代から販売されているそうですが、私も90年代に初めてレンズを拭くのに使いあまりの仕上がりの良さに感動しました

トレシー登場以前の世界とは、硬めのトイレットペーパーみたいな「シルボン紙」にアルコールを付けて拭いたり、鹿の皮をなめした「セーム皮」しかなかったのです。

マイクロファイバークロスは、発売当時とても革新的で感動的な道具だったのです。

現代では多数の類似品が販売されていますが、あまりに安物を買うと薄くペラペラだったり、小さすぎたり、硬かったりと使いづらい場合がありますので、ご購入の際はレンズ用と銘打った製品をおすすめします

フッ素コーティングとは?

レンズの汚れに対する最新技術として「フッ素コーティング」をご存じの方も多いでしょう。関連する技術として少しその仕組みをご紹介します。

フッ素コーティングとは、レンズの表面にフッ素の薄い膜を形成したもので、水分や油分を弾きやすくなり、汚れの拭き取りがとても簡単になります。

フッ素コートを施したレンズの表面ではどのような事が起こるのか、イメージ図を用意しました。

左側は普通のガラス表面に水を垂らした様子で、広がってレンズ表面にベタベタとまとわりついています。

右側がフッ素上の水の様子で「濡れ性」が変化し水が玉の状態を維持するようになります。

水が玉状にまとまっているため、簡単に拭き取れるようになります。

レンズのクリーニング方法で紹介したウェットタイプのレンズティッシュで拭く作業は、フッ素コーティングのレンズはアルコールも弾いてしまうので不要です。

しかし、フッ素コーティングは経年劣化で汚れの弾き効果が低下しますので、効果が弱まったと感じたらウェットタイプのレンズティッシュでも拭いてください。

さらに、同じフッ素を技術を使った馴染みのある例をご紹介しましょう。

車のフロントガラスに塗り雨水を弾く「超ガラコ」を使ったことのある方も多いのではないでしょうか?

こちらもフッ素コーティングによる効果で、水を玉状にまとめ風圧で吹き飛ばしています。(シリコンが主成分のタイプもあります)

フッ素コーティング登場時は、超望遠レンズなどの高価なレンズから採用が開始され、徐々に多くの製品へ採用が広がりましたが、まだ安価な普及レンズには付いていない物が多いですね。

そんな安価レンズの場合は、マルミやケンコーなどのフッ素コートを施した国産フィルターを購入されてはいかがでしょうか?

近年、超低反射率かつ撥油コーティングの採用された驚異の高性能フィルターが登場しています。

なお、フィルターによる撮影への影響が心配な方には、過去にフィルターを装着すると撮影時の写真の解像度にどのような影響があるか、徹底検証していますので参考にご覧ください。

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レンズペン

撮影地や内容によっては、クリーニング用品を持ち歩くのが難しいこともあるかと思います。

そんな外出時に重宝するのが、1990年代から私も20年以上愛用しているレンズペンをご紹介しましょう。

ハクバ社の物が元祖で、1993年から販売されているそうですね。

類似品もありますが、オリジナルであるハクバ社製品にはレンズを拭く丸いクリーニングチップ部分に秘密があります

レンズペンのキャップの中には、汚れを吸着するカーボン粉末が詰まっており、クリーニング後にキャップを締めて回転させるとクリーニングチップ部分にカーボン粉末が再補充される仕組みになっているのです。(約500回分)

「見た目が似ているから」と安い類似品を購入するのは推奨できません。ハクバ社製品をおすすめします。

元祖であるハクバ社製のレンズペンには色々なバリエーションが用意されており、こちらがスタンダードなレンズ用です。

カメラの液晶画面ファインダーなどの四角い場所用、平面のフィルターに適した形状のタイプもあります。

レンズ用、ファインダー用、フィルター用とクリーナー部のスペアと収納クロスがセットになった商品があり、こちらは大変お得です。

まとめ

今回の記事では、簡単でとても綺麗になるレンズのクリーニング方法を解説しました。

  • ブロワーでゴミを飛ばす
  • ウェットタイプのレンズ用ティッシュで拭く
  • マイクロファイバークロスで仕上げる

わずか3つの手順でレンズはピカピカになりますよ。

そして、レンズは必ず防湿庫で保管しましょう。

恥ずかしながら、私はマンションの壁にカビを生やしてしまったことがありますが、同じ室内に設置していた防湿庫のレンズ達はまったくの無傷でした。

電気代も1日に2円ほどだそうで、防カビ材などよりランニングコストもとても低く抑えられます。

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  • この記事を書いた人

高山仁

いにしえより光学設計に従事してきた世界屈指のプロレンズ設計者。 実態は、零細光学設計事務所を運営するやんごとなき窓際の翁で、孫ムスメのあはれなる下僕。 当ブログへのリンクや引用はご自由にどうぞ。 更新情報はXへ投稿しております。

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