雑学007 レンズの保護フィルターは光学性能を低下させるのか?

「レンズの保護フィルターを装着すると光学性能が低下する」と聞いた事がありませんか?

結論としては収差的には光学性能はほぼ低下しませんが、実写上はデメリットも存在します。これを光学シミュレーションソフトを利用して検証します。

結像性能は変わらない

レンズの前側へ装着する「保護フィルター、PL、ND」などの平板フィルターは光学的には収差が発生しません。

これは遠距離から到達する光(平行光)は、すべての光線がフィルター内部を通過する角度変化が同じとなるためです。

よって「レンズ前にフィルターを装着しても結像性能は変わらない」がひとつの結論です。

わかりづらいので具体的にシミュレーションで検証してみます。

検証 前側にフィルターを装着

左側の図にはフィルタ無し(NoFilter)の光路図、右はレンズ前側にフィルターを装着した(On Filter)光路図です。

基準のレンズはSIGMA 50 F1.4を利用しています。フィルターサイズはφ77mmですがフィルターの厚みはわかりませんが見た目で3mmとしました。

この状態で縦収差図を確認します。

左から球面収差、像面湾曲、歪曲の収差図です。

まったく変わりません。

さらにMTFでの結像性能変化も確認します。

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まったく変わりません。

厳密には無限遠(極遠い距離)側の撮影では収差への影響はありませんが、近距離になるとわずかに影響が出ます。

 ※確認困難な微小量なので割愛します

ただし、マクロ撮影のような超近接撮影では影響が大きくなる可能性はあります。

加工誤差の影響は?

雑誌の記事でフィルターの表面が歪んでいる写真を見たことがある方もいると思いますが、両面が同じ歪み方ならば光学的には収差への影響はありません。

片面だけを測定すると歪んで見えることがありますが、表裏2面の関係に「歪みの差」がなければ問題無いのです。

一般的にフィルターのような平板は両面を同時研磨で加工するので、両面の歪み量はほぼ同じになり差がありません。

一般ユーザーの気にするような量の加工誤差は乗りません。(ただし国産メーカーの話)

マルミ光機の工場の様子が以下のリンク先にありますので参考にしてください。

 外部リンク:マルミ工場

完全に国産みたいですね。きっとすばらしい品質なんでしょう。

検証 反対に装着するとどうなるか

より理解を深めるために普通の製品では不可能ですが、後ろ側(撮像素子側)にフィルターを装着するとどうなるのか?検証してみます。

左は元の状態で撮像素子の前には元々入っているフィルターはあります。右の図は普通はありえませんが、レンズの後ろ側へフィルターを装着しています。

この状態で縦収差を確認してみましょう。

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球面収差と像面湾曲が右側(プラス側)へ倒れます。

縦収差ではわずかな変動に見えますが、MTFで詳細を検証してみましょう。

画面中心(青)の特性を見ると山の高さは10ポイント近く低下しています。周辺部はもっと落ちている個所もあります。

レンズの前側へフィルタを装着しても無限光(平行光)では収差の影響はありませんが、後ろ側へ装着しますと角度を持った光の場合はフィルタを通過する光路距離が異なってくるためその差が収差となって表れるのです。

ただし、一般的にはレンズの後ろ側にはフィルターを装着しませんので問題ありません。

一部の超望遠レンズは、後ろ側に装着を前提としたレンズがあります。

そのようなレンズはフィルター挿入込みで最適化された設計がなされておりますのでご安心ください。

豆知識ですが、デジタルカメラ黎明期のレンズは「デジタル対応設計」と言われる物がありましたが、これは「撮像素子前のフィルターによる収差変動を考慮した設計」とも言えます。

逆の理由で、オールドレンズをデジタルカメラに装着すると、撮像素子前のフィルターの影響で少し性能が低下します。

ゴーストには注意

フィルターを前側に装着する分には結像性能は変わりませんが、レンズ内部での反射材料が増えるためゴーストが増加する懸念があります。

ゴーストは主に逆光や夜景で発生するものです。ゴーストのサンプル写真を記載します。

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画面左上は太陽で逆光の撮影です。右下に扇形のゴーストが激しく出ていますね。

この種のゴーストは、レンズ表面での乱反射が原因です。

ゴーストはレンズ側の特性に大きく依存しますので、フィルターにより必ず悪くなるとは言えませんが、懸念材料は増加することになります。

対策としては、フィルター自体に高級コーティングを施した物が近年お安くなりましたので「コーティング(透過率)の良いフィルターを購入すること」をお勧めします。

マルミ光機のこちらの商品は驚異の超低反射率「0.2%」でありながら高強度+防汚機能も付いている恐ろしく高機能フィルターです。

フィルターなんて枯れた製品だと思っていたのですが、年々すばらしく進化するものですね。

画質にこだわるなら某大手通販サイトで売られているような出生不明な激安中華フィルターはやめましょう。

ケンコーの物は反射率「0.3%」とわずかに劣りますが、実用上の差は無いでしょう。

まとめ

フィルターを装着しても結像性能は低下しませんが、ゴースト悪化の懸念は存在します。

しかし、近年の高性能フィルターを装着すればゴーストもかなり緩和できると思います。

良いフィルターには高いだけの価値があると言うわけでした。

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