当ブログで度々紹介する光路図とは何かを図解します。
断面図
まず最初は断面図から説明を始めます。断面図はレンズを横から眺めて縦切りにした以下のような図になります。
ほとんどのカメラ・レンズメーカーのホームページで商品仕様ページに記載されています。構成図と説明されることもあります。
断面図について図で説明します。
信じ難いレベルの絵心の無さが噴出する至極残念な挿絵ですが…
順に説明します。
- 青矢印:この方向が「被写体側/物体側」
- 緑矢印:この方向が「撮像素子側/像側」
- 黄矢印:ここに像が写ります。フィルムやCMOSに相当。
- 紫矢印:保護用の板ガラスやフィルターです。
保護ガラス/フィルターはデジタルカメラのカメラ本体側に付く部品です。平板状の光学フィルターが複数枚積層されており、いくつかの目的があります。
フィルタ類の目的は主に、CCDやCMOSなどのデリケートな電子部品の保護、不要な紫外/赤外線のカット、画像のノイズを除去するローパスフィルターなどです。
フィルムカメラにはありません。
ちなみにデジカメ黎明期に「デジタル専用設計レンズ」と表現される製品がありましたが「専用設計」が意味する事項のひとつはこの板ガラスを考慮して設計されていると言う意味が含まれます。
絞りが2種記載されていますが「主絞り」がレンズをのぞくと見える羽の部分に相当します。
周辺光カット絞りと書いてあるのは、余計に入る光を遮っているもので、可動の羽が有り口径が変わる場合と、固定の場合があります。
レンズの赤色面は非球面レンズであることを示しています。
光路図
以下は通常の分析記事に記載する光路図になります。断面図に光の通る様子を重ねて描いています。
一般的には公開されることも少ない情報です。特許文献にも書かれていないことも多く、収差図よりも目にする機会は少ないかもしれません。
メーカーの中の人でも設計開発部門に近い者しか見ることはできないでしょう。
各社のレンズの光路図が見れるブログはこのブログ以外に私は知りません。
レンズに入射する光は本来は無数にありますが、撮像素子上の特定の点に当たる光に限定し見やすくしています。要は間引いています。
この特定の点を一般に「像高(ぞうこう)」と言います。
光線を描く像高には意味があり、下図のような配置になっています。
この図はフルサイズセンサー上での像高の配置になります。
像高の丸印と光路図の光線の色を統一しておきましたが、
- 中心 0mm:画面の中心ど真ん中
- 中央 6mm:中心0mmと中間12mmの間
- 中間12mm:画面短辺の最大値に相当
- 周辺18mm:画面長辺の最大値に相当
- 隅 21mm:画面の最端部
なお、21mmは隅と表現していますが当ブログのコメントで隅の収差を重要視しないのは隅は何も写っていないことが多いポイントだからです。
他に、この光路図は被写体側の光が途切れていますが、これが何を意味するか説明します。
通常、分析ページに記載している光路図のレンズ~被写体までの距離は「無限遠距離」としています。
無限遠とは超遠距離の意味で、月や星を撮影しているような状態です。
そのため被写体側の光線図が遠すぎて描ききれません。
今回は被写体側での光線の様子がわかるように近距離(最短撮影距離)での光路図を以下に記載します。
近距離に焦点を合わせた場合の光路図です。
テーブルフォトを撮影しているような状態と言えばわかりやすいでしょうか。
次に、各像高に届く光の上側・下側・中央の3本で表現していますが、実際には無尽蔵に光は入ります。
参考に中心像高に入射する光をたくさん描いてみます。
調子に乗ってさらにたくさん像高の光線も描いてみます。
なにやら描きすぎてよくわからなくなりました。
このたくさん入る光が1点に集光せずにずれてしまう現象、それが「収差」と言われるのですが、収差については別の専用ページを準備しておりますので下記をご確認ください。