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【深層解説】 ニコン大口径超広角ズーム NIKON NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S 前編 広角端-分析030

ニコン ニッコール Z 14-24 F2.8 広角端(14mm側)の性能分析・レビュー記事です。

さて、写真やカメラが趣味の方でも、レンズの仕組みや性能の違いがよくわからないと感じませんか?

当ブログでは、光学エンジニアでいわゆるレンズのプロである私(高山仁)が、レンズの時代背景や特許情報から設計値を推定し、知られざる真の光学性能をやさしく紹介します。

当記事をお読みいただくと、あなたの人生におけるパートナーとなるような、究極の1本が見つかるかもしれません。

作例写真は制作中です。

レンズの概要

NIKONのミラーレスフルサイズ一眼であるZマウントカメラ用の大口径超広角ズームレンズとなります。

先代には同仕様のAF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED (2007年発売)がありますが、10年以上の時を経てミラーレス一眼用として再設計されました。

NIKONのミラーレス一眼Zシリーズの発売開始からこの執筆時点(2020秋)で約2年が経過しますが、Zマウントレンズは明らかに広角レンズ重視のラインナップで展開しており、その象徴たるレンズなのでしょう。

カタログでの宣伝文を見ても、非球面レンズ3枚を配置し前玉には大口径両面非球面レンズ、EDレンズ4枚、アルネオコート、ナノクリスタルコートと現時点の最新技術を全て搭載し、高性能と小型・軽量を達成したことが伺えます。

私的回顧録

実は執筆時点(2020/9)ではこのレンズは発売されていません。

当ブログはニュース紹介ブログでは無いので、作例実写を確認した上で記事化する事を重要視しています。

しかし、どうしてもこのレンズを分析したくなる理由があったのです。

まずはミラーレス一眼用となって再設計された性能向上の確認です。

ミラーレスカメラは、従来一眼レフからクイックリターンミラーを排除したため撮像素子側に自由な空間が生まれています。

その効果として広角レンズ(短いレンズ)ほど性能向上や小型化に効果的とされています。

そこでNIKON広角ズームの象徴たる14-24F2.8の設計値を分析することで、どれだけその効果があったのか検証しようという目論見です。

また、広角レンズは非球面レンズ技術の発展とも関わりが深く、先代のFマウント14-24F2.8から10年以上を経てどのような技術的発展があったのかも検証したいわけです。

なお、今回の記事は初のズームレンズの分析ですが、ズームレンズの場合は前編を「広角端編」、後編を「望遠端編」として2部構成で記事を公開します。

望遠側記事をお探しの方はこちらをご参照ください。

 関連記事:NKKOR Z 14-24 F2.8 望遠端(24mm側)

文献調査

このレンズは珍しく製品販売前に特許が公開されておりました。

まず、特許の出願から公開までは2~3年かかりますが、経験的に製品の販売が開始され半年から1年後ぐらいに特許文献が公開となるのことが良くあるパターンです。

特許が早く公開されたと言うことは、それだけ早くから時間をかけて開発し、特許の出願を行ったと言うことなので「力の入れ方」がにじみ出てきます。

このレンズの特許は早期に出願されているだけでなく、同時に複数件が出願されており力の入れようが半端ではない雰囲気を感じます。

複数件あったのでどれが製品に近いか難しいのですが、形状の一致度と特許内容が製品レンズの基本構成に近いことから特開2020-134806実施例9を設計値とにらみ以下に再現します。

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。

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設計値の推測と分析

NIKKOR 14-24 F2.8の広角端(14mm)での性能を以下に紹介します。

性能評価の内容について簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

上図がNIKKOR Z 14-24 F2.8 広角端(14mm)の光路図です。

11群16枚、色収差の補正のためにEDレンズをなんと4枚、非球面レンズは3枚採用しています。

まず目を引くのは最も被写体側の第1レンズの大口径両面非球面レンズです。

かなりいびつな形状でどうやって加工しているのか記載がありませんが、きっとお高いのでしょう。

このような大径の非球面レンズの加工技術が進歩したおかげで超広角ズームが実現できているわけです。

また、昔の超広角レンズはいわゆる出目金形状で第1レンズが飛び出たような形状ですが、このレンズは非球面レンズを多用することで出目金形状をだいぶ抑制しています。

なお、カタログには記載されていませんが、絞りの前後にはフレアカット絞りが2枚配置されています。

このフレアカット絞りは性能の様子を見るにズーム駆動に合わせて適切に口径を切り替えているようで、広角端と望遠端では口径が変わります。

絞り以外に光量調整機構を2か所も持つレンズは、あまり聞いた記憶がありませんからメカニカルな機構もかなり複雑で特殊な物であることが想像されます。

縦収差

球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

球面収差はわずかにマイナス側にふくらみを持つ形状となっています。像面湾曲も少しマイナス側へ倒れているのでバランスを取ったのでしょう。

ズームでF2.8の明るさを考えれば十分に補正されています。

軸上色収差も十分に小さい量になっています。

像面湾曲

像面湾曲は全体に少しマイナス側へ倒れていますが、Fno等を考慮すると気にするほどの量では無さそうです。

歪曲収差

超広角ゆえか最大で5%ほどの大きめの量が残ります。

安いズームレンズでは最大5%ほどの歪曲収差はよく見かけますので異常な量ではありませんし、超広角ズームという仕様を考慮すれば健闘しているとも言えます。

また、近年のカメラなら歪曲収差は画像処理で補正できますから、画像処理で補正する方針としているのかもしれません。

特にZマウントレンズは、ミラーレスカメラ専用であり画像処理のできない光学ファインダーで処理前の様子を見られてしまう事がありませんから「光学的に補正する」か、「画像処理に頼るか」は現在では大きな問題ではないのかもしれません。

仮に補正が無くても従来のレンズでは少し大きい部類と言った感じの量です。

また、超広角レンズですから歪曲収差が残っていたほうが「それらしくて良い」と考える方も多いのではないでしょうか。

倍率色収差

倍率色収差は、不気味なほどに何度もうねりながら広角大口径ズームの広角端であることを忘れるぐらいに小さくまとまっています。

横収差

左タンジェンシャル、右サジタル

横収差として見てみましょう。

ほとんど直線。衝撃的な補正ですね。

過去の分析事例から比較しますと、Fnoは異なりますがSIGMAのArtレンズでもこのレベルまでは補正されていません。

NIKKOR Zレンズで過去に分析したレンズですとNIKKOR Z50mm F1.8も高性能で衝撃的でしたがそれを上回りそうです。

スポットダイアグラム

スポットスケール±0.3(標準)

ここからは光学シミュレーション結果となりますが、最初にスポットダイアグラムから見てみましょう。

横収差があれだけの補正具合ですからきれいにまとまっています。

スポットスケール±0.1(詳細)

スケールを変更し拡大したスポットの様子です。

拡大してもサイズ自体は極小さいですね。

単焦点レンズでもこのレベルまで補正されている14mmが過去には存在していなかったのではないか、そう思うほどですね。

ミラーレス化と大口径マウントの恩恵と言えるのでしょう。

MTF

開放絞りF2.8

最後にMTFによるシミュレーションの結果を確認してみましょう。

解放から画面全域で衝撃的なMTFの高さです。

小絞りF4.0

開放の性能が良すぎて差が無い…

総評

広角レンズに優位なミラーレスの良さを最大限に発揮したと思われるこのレンズはズームレンズであることが信じ難いレベルの超高性能であることがわかりました。

おそらくは星を専門にされる方でズームを所望される方には、ローン必至のマストアイテムになるのではないでしょうか?

実写が楽しみな一本です。

望遠側記事をお探しの方はこちらをご参照ください。

 関連記事:NKKOR Z 14-24 F2.8 望遠端(24mm側)

 

以上でこのレンズの分析を終わりますが、今回の分析結果が妥当であったのか?ご自身の手で実際に撮影し検証されてはいかがでしょうか?

それでは最後に、あなたの生涯における運命の1本に出会えますことをお祈り申し上げます。

LENS Review 高山仁

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当ブログで人気の「プロが教えるレンズクリーニング法」はこちらの記事です。

製品仕様表

製品仕様一覧表 NIKON NIKKOR 14-24 F2.8 広角端

画角114度
レンズ構成11群16枚
最小絞りF22
最短撮影距離0.28m
フィルタ径----
全長124.5mm
最大径88.5mm
重量650g

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