オリンパス ズイコー 100mm F2の性能分析・レビュー記事です。
レンズの仕組みやその性能は一体どう違うのか、具体的な違いがほとんどよくわかりませんよね。
雑誌やネットで調べても似たような「口コミ程度のおススメ情報」そんな記事ばかりではないでしょうか?
当ブログでは、レンズの歴史やその時代背景を調べながら、特許情報や実写作例を元にレンズの設計性能を推定し、シミュレーションによりレンズ性能を技術的な観点から詳細に分析します。
一般的には見ることのできない光路図や収差などの光学特性を、プロレンズデザイナー高山仁が丁寧に紐解き、レンズの味や描写性能について、深く優しく解説します。
世界でこのブログでしか読む事のできない特殊情報をお楽しみください。
作例写真をお探しの方は、記事末尾にありますのでこのリンクで移動されると便利です。
レンズの概要
Zuiko 100 F2は、オリンパスOMマウント用のZuikoレンズシリーズでは大口径中望遠の銘玉と称賛されるレンズです。
焦点距離的には主にポートレート用でしょうが、私はスナップにも好きな焦点距離です。
焦点距離100mmはどこか懐かしさを感じさせる仕様です。それは近年、単焦点100mmの大口径製品をあまり見かけないからかもしれません。
マクロレンズの定番が100mm F2.8なので各社とも仕様のかぶりを考慮して100mm単焦点が少なくなったのでしょう。
さて、このZuiko 100 F2は手に取るとずっしりとした重みがありますが、AF機構や手振れ補正機構などを搭載した現代的レンズに比較すればかわいい大きさです。
しかしながら、オールドレンズらしいガラスと金属の塊感や密度感がすばらしく是非ともコレクションしたくなる手触りです。
Zuikoレンズはよく小口径のレンズが銘玉に挙げられることが多いように思いますが、中望遠の焦点距離レンジではこのZuiko 100mm F2.0とZuiko 90mm F2.0が並んで銘玉として挙げられています。
私的回顧録
私が購入したのは2000年ごろでしたが、購入の前に同じく銘玉扱いのZuiko 90mm F2.0マクロと悩んだ記憶があります。
マクロは他のマウントのレンズを持っていたので、結局はこちらのZuiko 100mm F2.0を買ったのでした。
このレンズを初めて使った日の事をなんとなく覚えていますが、ファインダーから見た像がすでに綺麗で「これは良い写真が撮れるな」と直感しました。
当時はまだフィルム全盛で、性能の良いレンズというのは限られていますからそれぐらい感動するわけです。
結局、後年90mmも購入しましたので、後日90mmマクロも解析し比較したいと思います。
なお、このレンズで何人の女性を撮影したのかは墓場まで持参する情報です。
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文献調査
1970年代後半ぐらいからの特許文献を総当たりで調べると2件ほど製品の断面図と類似する物がありますが、両方とも近距離撮影時の性能を改善したことを特徴として権利化されています。
具体的な改善策としてはフォーカス時に2つのレンズ群を同時に別体移動させるフローティングフォーカスを導入することで無限遠距離から近距離まで性能を均質に高めることを実現しているようです。
分解しないとフローティングフォーカスしているのか判断できませんが、しているものと仮定しましょう。入ってた方がうれしいですし…
特許文献より断面図の形状が類似し、公開年代や性能の様子から特開昭57-111506の実施例1が製品構成に類似すると予想しこれを設計値として再現してみます。
!注意事項!
以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。
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設計値の推測と分析
性能評価に関する設定詳細は、以下のリンク先にまとめてあります。
光路図
上図がzuiko 100 F2.0 の光路図です。
6群7枚構成、ダブルガウスタイプの前側に凸を追加した典型的なガウス中望遠タイプです。
本来のガウスタイプは焦点距離50mmぐらいに適するため、本レンズはそれより長い焦点距離100mmまで伸ばしたためガウスらしい対称構造は少しくずれてしまいます。
とは言え、100mmぐらいまでは性能確保は可能でしょう。
レンズの材料を見てみますと第2レンズに特殊低分散材料を採用しています。ニコンならEDガラスと言う名前です。
特殊材料を採用すると製品名に特別な名称を入れそうですが、入れないのがオリンパスの奥ゆかしい所でしょうか。
なお、一眼レフ用レンズの基礎たるガウスタイプの簡単な説明は以下のリンクをご参照ください。
関連記事:ダブルガウスレンズ
縦収差
球面収差 軸上色収差
球面収差は十分に補正されています。
この枚数でこれ以上に補正すると絞り込み時に像面湾曲とのバランスがくずれるのでほんのりフルコレクションにしておくのがポイントです。
軸上色収差はもう少しg線をプラス側にしたくなりますが、倍率色収差とのバランスに配慮した結果でしょうか。
像面湾曲
像面湾曲は大口径の部類ですが、適切に補正されています。
歪曲収差
歪曲収差は焦点距離が長くなると糸巻き側の歪曲が発生しますが、100mmならそこまで長焦点でもないのでほぼゼロに補正されています。
倍率色収差
倍率色収差は、対称型を外れた構成となってきているので収差補正には若干難が出ているようです、開放側では倍率色はあまり目立たない事が多いので実用上は気にならないとは思います。
そもそも開放側を楽しむレンズですから小絞りの性能は問題では無いでしょう。
横収差
Fnoの値からするとクセも無く十分に補正されています。銘玉と言われる由縁でしょう。
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スポットダイアグラム
スポットスケール±0.3(標準)
軸上色収差から予想するに赤の収差が目立ちそうでしたが、スポットでみるとバランスは良さそうです。
スポットスケール±0.1(詳細)
MTF
開放絞りF2.0
開放からすでにMTFは高く、周辺部のピントも一致しています。確かに銘玉認定の性能です。オールドレンズとしは面白みが無いのかもしれませんが…
少し面白いのは中心部の性能と周辺部の性能がかなり均質でそろっている点です。
通常、中心ばかり上がってしまいますが、このレンズは画面全域で均質で高性能な点が特に素晴らしい描写に繋がるものと思います。
小絞りF4.0
開放ですでに十分構成なため、絞っても大きな変化はありませんが、より像面湾曲が減少します。現代でも違和感無い性能です。
総評
これほど少ないレンズ枚数で「ここまで性能が高まるものか」と感心するほどの性能です。
実写しても申し分のない性能ですが、近年の超高性能レンズと比較しますと、軸上色収差が若干多めに残っており、少々まるみのあるやさしい描写を楽しめますね。
当時の銘玉として各所で認定されたことにも納得の性能でした。
なお焦点距離の近い近代的レンズ設計の代表例として、SIGMA Art シリーズからSIGMA 105mm F1.4を分析しておりますので以下のリンク先を参考にご覧ください。
関連記事:SIGMA 105mm F1.4
作例・サンプルギャラリー
特に注釈の無い限り全て開放Fnoの写真です。
さらに多くのZuiko 100mm F2の作例はこちらにもあります。
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製品仕様表
OLYMPUS Zuiko 100 F2.0製品仕様一覧表
画角 | 24度 |
レンズ構成 | 6群7枚 |
最小絞り | F22 |
最短撮影距離 | 0.7m |
フィルタ径 | 55mm |
全長 | 72mm |
最大径 | 70mm |
重量 | 500g |
もし、ミラーレスカメラをお持ちでしたらマウントアダプターを使用すれば再びZuiko 100mm F2で撮影が可能です。
こちらの商品はOM用ZuikoレンズをソニーのミラーレスカメラのEマウントへ取り付けるためのアダプターです。
OM用ZuikoレンズをニコンのミラーレスカメラのZマウントへ取り付けるアダプターもあります。
その他のレンズ分析記事をお探しの方は、分析リストページをご参照ください。
以下の分析リストでは、記事索引が容易です。
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レンズ分析リスト
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