レンズ分析

【レンズのプロが解説】OLYMPUS Zuiko 90mm F2.0 Macro-分析003

オリンパス ズイコー 90 F2.0 Macroの性能分析・レビュー記事です。

オリンパス の一眼レフカメラ用交換レンズシリーズより、大口径 中望遠マクロレンズ ズイコー 90mm F2.0の性能分析・レビュー記事です。

このレンズは、フィルム時代のカメラであるOM専用の交換レンズですが、マウントアダプターを利用すれば現代のミラーレス一眼カメラでも使用できます。


さて、写真やカメラを趣味とされている方でも、レンズの仕組みや性能などの具体的な違いがよくわかりませんよね。

雑誌やネットで調べても、似たような「口コミ程度のおススメ情報」そんな情報ばかりではないでしょうか?

当ブログでは、レンズの歴史やその時代背景を調べながら、特許情報や実写作例を元にレンズの設計性能を推定し、シミュレーションによりレンズ性能を技術的な観点から詳細に分析しています。

一般的には見ることのできない光路図や収差などの光学特性を、プロレンズデザイナー高山仁が丁寧に紐解き、レンズの味や描写性能について、深く優しく解説します。

あなたにとって、良いレンズ、悪いレンズ、銘玉、クセ玉、迷玉が見つかるかもしれません。

それでは、世界でこのブログでしか読む事のできない特殊情報をお楽しみください。

作例写真をお探しの方は、記事末尾にありますのでこのリンクで移動されると便利です。

レンズの概要

オリンパスのOMマウント用のZuikoレンズシリーズの一本で、中望遠域ではZuiko100mmF2.0と人気を二分するメジャーレンズです。

2000年頃まで店頭で普通に新品販売されていたのでオールドレンズと呼ぶには少々若いかもしれません。

最近のマクロレンズは100mmF2.8で等倍撮影可能の仕様がお約束となった感じですが、1990年以前までは90mmも多かったように思います。

その理由は100mmのF2.0やF2.8をラインナップしていたメーカーが多かったので、少しずらして90mmとしていたのではないでしょうか?本当の所はわかりません。

また、MacroレンズのFnoと言えばF2.8が当たり前のように思い込んでしまっていますが、なんとこのレンズはF2.0と1段明るいのです。

OMシリーズのレンズはF2.0が多いことを売りにしていたのでMacroでも統一感を出したということなんでしょう。

ただし、撮影倍率は1/2倍(ハーフ)仕様で等倍までは至りません。80年代までは1/2倍が主流だったと記憶していますが、90年代ぐらいのAF化の流れとともに1/1(等倍)仕様へ各社移り変わったと思います。

Olympus Zuiko 90mm F2.0 Macro

私的回顧録

フィルムのOMシリーズをメイン機材としていた当時はZuiko100mmF2.0の方を購入し、この90mmは見送りました。

当然、この90mmマクロと悩んだわけですが、一般撮影で多用される無限遠側は当然普通のレンズ(100mm)の方がよかろうと思ったのと、マクロレンズは別の物を所有していたのも理由でした。

マクロを数本所有するのは当時の若い私には理解しがたい行為です…

後年、フィルムのOMシリーズが終了する直前(2006年ごろ?)にセール販売されていたこのレンズを新品購入したのですが、フィルム自体が終焉を迎える時期でもあり、単なるコレクションアイテムとなってしまいほとんど使う事の無かったレンズです。悲しい。

文献調査

さて特許文献を調査しますと同時代に複数のマクロレンズの文献が見つかりますが、特開昭62-18513の実施例1は製品の構成とよく似るのでこれを設計値として以下に再現してみます。

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。

【速報】ついに「カメラ、はじめてもいいですか?」ドラマ化。どんなカメラが登場するのか楽しみですね。

設計値の推測と分析

性能評価の内容について簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

上図がzuiko 90 F2.0の光路図です。

9群9枚、非球面は採用していません。ガウスタイプの像面側に3枚のレンズ配置する構造です。被写体側の第1レンズから第6レンズまでの前側ガウス部分が繰り出す昔ながらの1群フローティング方式のマクロレンズだろうと推測されます。

Zuiko100mmF2.0に比較するとレンズ枚数は増加しており、どちらが性能的に良いのか気になるところです。

縦収差

球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

球面収差はほどよくフルコレクション型に補正されています。g線とC線が球面収差の先端で重なっており互いの色味を緩和させており好印象です。

軸上色収差もF線もd線がかなり接近しており十分な補正度合いと推測されます。全体にzuiko100mmより好印象です。

像面湾曲

像面湾曲は適切に補正されており、絞り込みでの変動も球面収差と一致し問題無さそうです。

歪曲収差

 歪曲収差は望遠域でありますから若干の糸巻きですが実用上は気になる数値ではありません。

倍率色収差

倍率色収差は、zuiko 100mmと比較すると2/3程度まで削減されているようです。 

横収差

横収差として見てみましょう。

Zuiko100mmF2.0とは特に遜色なくむしろ良好に見えます。

サジタル方向の収差量は実質的にレンズ枚数に依存しますので枚数の多いこのレンズが良好なのは当然とも言えます。

スポットダイアグラム

スポットスケール±0.3(標準)

ここからは光学シミュレーション結果となりますが、最初にスポットダイアグラムから見てみましょう。

標準スケールではスポットが小さすぎて良くわからないレベルです。

スポットスケール±0.1(詳細)

 F線の広がりが若干大きいもののg/C線がまとまっているので色にじみなどは少なそうです。

MTF

開放絞りF2.0

最後にMTFによるシミュレーションの結果を確認してみましょう。

開放でも100mmF2.0より一段良好のようです。後発製品でレンズ構成枚数も多いので当然かもしれませんが。

小絞りF4.0

コマ収差が絞りでカットされるので山は高くなりますが、解放からある像面湾曲は改善せずに残ります。F4では100mmの方が少し良いでしょうか。十分高性能ですから現代のレンズとも差はあまり感じないでしょう。

総評

Zuiko100mmF2.0と比較しつつ検証した結果、90mmMacroの方が基本的な解像性能は良いと言えそうです。

100mmの方もそつなくまとまっていますが、現代のレンズに比較すれば収差がだいぶ残っています。

オールドレンズ遊びの趣旨的には味のある100mmF2.0の方が目的には合っているのかもしれません。どちらのレンズも銘玉と言われるだけの理由はあったわけですが、複雑な気持ちになる結果です。

ゴーストについては構成枚数の多い90mmMacroの方が目立ちますが、どちらも致命的な物はありませんから大きな差では無さそうです。

長年疑問であったzuiko 90mm vs 100mm 問題に自分で終止符を打つことができたのが今回の最大の収穫でしょうか。

過去に分析したマクロレンズの記事は以下などもありますのでご参照ください。

 関連記事:Ai Micro Nikkor 55mm F2.8
 関連記事:AiAF Micro Nikkor 60mm F2.8
 関連記事:SIGMA 70mm F2.8 Macro Art

価格調査

新品から中古品まで取り扱う品揃えの良い店舗のリンクを準備いたしました。以下からご確認ください。

マップカメラ楽天市場店

もし、ミラーレスカメラをお持ちでしたらマウントアダプターを使用すれば再びZuiko 90mm F2で撮影が可能です。

こちらの商品はOM用ZuikoレンズをソニーのミラーレスカメラのEマウントへ取り付けるためのアダプターです。

OM用ZuikoレンズをニコンのミラーレスカメラのZマウントへ取り付けるアダプターもあります。

このレンズに最適なカメラをご紹介します。

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作例

Zuiko 90 F2 の作例集となります。特に注釈の無い限り開放Fnoの写真です。

製品仕様表

製品仕様一覧表

画角27度
レンズ構成9群9枚
最小絞りF22
最短撮影距離--
フィルタ径55mm
全長71mm
最大径72mm
重量550g

その他のレンズ分析記事をお探しの方は、分析リストページをご参照ください。

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