分析007 SIGMA Art 70mm F2.8 DG MACRO

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シグマ Art 70 F2.8の性能分析・レビュー記事です。

特許情報や実写の作例から光学系の設計値を推測し、シミュレーションによりレンズ性能を分析します。

世界でこのブログでしか読む事のできない特殊情報をお楽しみください。

作例写真をお探しの方は、記事末尾にありますのでこのリンクで移動されると便利です。

レンズの概要

このレンズは新しいのでこちらに情報があります。

執筆時現在(2020)においてArtシリーズの中で唯一のマクロレンズです。マクロといえば100又は105mmの焦点距離で、最大撮影倍率が等倍の仕様が全盛となっているこの時代に、あえて70mmを出す狙いとは何なのか色々と気になる仕様です。

なお、先代となる同仕様のレンズがあるそうですが、こちらになるようです。

先代(EXシリーズ)とはレンズの断面形状が異なるので光学系は新規設計されているようです。実のところ、マクロレンズは1本持っていればそれでなんとかなってしまうのでマクロレンズには詳しくなく70mmのマクロがあったなんてArtシリーズで復刻するまで知りませんでした。しかもユーザーからカミソリなどと言う名まで付けられているとは。

私の想像では焦点距離70mmとはAPSセンサのカメラに装着するとフルサイズ換算で約100mmの画角となるため、フルサイズ/APS双方で都合が良いのではないかと思います。APSならいつもの100マクロ感覚で、フルサイズなら長めの標準感覚と言うのが狙いではないかと推測しています。

製品サイズ感も絶妙で、焦点距離70mmと短めなので製品としてコンパクトにまとまっており、大口径のため大柄なレンズの多いArtシリーズの中では小ささが際立ちます。

さて、どんな時にこのレンズを選択するのかと考えてみますと、広角側を単焦点一本に男らしく決めた時、もう一本持つ標準〜中望遠としてこれを選択するとマクロ撮影もできて大変便利かつコンパクトな組合せの機材設定ができるのではないかと思います。

SIGMA Art 70mm F2.8 DG Macro

私的回顧録

前回の記事「SIGMA 35mm F1.4 Art」から引き続きArtシリーズの単焦点を分析します。

これは現代的な光学設計値の基準作り(ベンチマーク)を行うための取り組みの一環になります。SIGMAのArt単焦点レンズは「性能重視、大きさ度外視」という非常にわかりやすいコンセプトで設計されておりベンチマークの基準として扱いやすいというのが理由です。

文献調査

さて特許文献を調べると現代の製品なので関連すると思われる特許が簡単に見つかりました。断面図の雰囲気から特開2019-144441実施例1が製品に見た目で近いので設計値と仮定し、設計データを以下に再現してみます。

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。

設計値の推測と分析

性能評価の内容について簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

SIGMA Art 70mm F2.8 DG Macro 断面図 光路図

上図がSIGMA Art 70 F2.8 Macroの光路図です。

10群13枚、9枚目のレンズと最も撮像素子に近い最終玉に非球面を配置し、特殊低分散材料も4枚配置する贅沢な仕様です。私の記憶ではマクロレンズに非球面レンズを2枚使った製品は過去に無いのではないかと思います。

製品のフォーカシング時の動き方を見ると被写体側のレンズが大胆に飛び出す昔のマクロタイプのように見えますが、特許の説明では絞りより被写体側のレンズ群と、絞りより撮像素子側の3枚が別の動きで繰り出すフローティングタイプと説明されています。複数の群が個別に動くという事は設計自由度も高まりますので性能向上も期待できます。

このレンズは一般の等倍マクロに比較すると焦点距離が短めで前玉が繰り出すため前玉から被写体までのワーキングディスタンスは短めです。距離が取れないので虫撮りなどにはあまり向かないかもしれませんが、静物相手だと手元が撮れるので使いやすく好みが別れる所でしょう。

なお、センサー前の平面の平板ガラスはローパスフィルターや紫外線カットなどを表しています。記載する会社とそうでない会社がありますね。

縦収差

球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

SIGMA Art 70mm F2.8 DG Macro 縦収差

球面収差 軸上色収差

球面収差は解説する意味も無いほどに、略直線の特性図です。

少し良く見てみますと球面収差図の上端側でf線(水色)の収差とd 線の(オレンジ)収差が略重なることから解像力は極めて高くなると思われます。g線(青)、c線(赤)の収差は解像力に対する影響が小さいので色のにじみのような現象にはつながりますが、解像力にはあまり影響しません。いかにf線とd線を重ねながら、他の色をまとめるかが軸上色収差の補正の狙いになります。

g線がわずかにずれているとは言え絶対値的には小さな量ですから解像力は極めて高いのでしょう、カミソリと言われる理由がここから見えてきます。

像面湾曲

中間部分を超えると少し像面湾曲、非点隔差があるようです。

歪曲収差

歪曲収差は焦点距離が50mmよりも長くなると比較的補正が容易となりますので十分に補正されています。

倍率色収差

SIGMA Art 70mm F2.8 DG Macro 倍率色収差

倍率色収差は絶対値は小さいものの、g線(青)とC線(赤)が画面の外側に向かって純増する特性のようです。

横収差

SIGMA Art 70mm F2.8 DG Macro 横収差

焦点距離は70mmと短めで、Fno2.8と単焦点としては暗いのでサジタルはきれいに補正されています。像高12mmではタンジェンシャル方向でコマ収差が出てさらに高い像高ではハロが残るようですが、コマ収差は少し絞り込むと取れます。

スポットダイアグラム

スポットスケール±0.3(標準)

SIGMA Art 70mm F2.8 DG Macro スポットダイアグラム

スポットスケール±0.1(詳細)

SIGMA Art 70mm F2.8 DG Macro スポットダイアグラム

中心近傍はきれいにまとまっています。像高18mmからはハロの影響で広がりが大きくなるようです。

MTF

開放絞りF2.8

SIGMA Art 70mm F2.8 DG Macro MTF F1.4

中心域は文句なく高く、像面変動も少ないようです。像高12mmを超えると像面湾曲、ハロにより頂点がずれてくるようです。

小絞りF4.0

SIGMA Art 70mm F2.8 DG Macro MTF F4.0

絞ると山の高さが上がりますが、像面湾曲成分もかなり改善します。像高12mmまではほとんど無収差に感じるでしょう。

総評

いつの頃からレンズの解像感を表す表現にキレと言う言葉があてられ、ピント面が極薄い事とキレ味の二つの意味から「カミソリ」との表現になったわけですが、本当にカミソリマクロとは上手い表現で実際にカミソリのようにキレる撮影結果でした。

最近はマクロ=焦点距離90~100mmという常識が刷り込まれてしまっていますが、このレンズの70mmと言う焦点距離がまた絶妙でした。身構える必要のない画角とワーキング手ディスタンスです。100mmですと被写体まで少し距離を置く感覚がありますが、70mmだと「すぐそこ」を拡大すると言う体感に合う焦点距離なのでなかなか使いやすい。

また、標準レンズとして使っても違和感がありませんから、これ1本で済ませられる日も多いのではないでしょうか?しかもArtレンズにしてはとても小振りな1本です。

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 関連記事:2022年賀状印刷のススメ



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作例・サンプルギャラリー

SIGMA Art 70 F2.8の作例集となります。以下のサムネイル画像をクリックしますと拡大表示可能です。特に注釈の無い限り開放Fnoの写真です。

SIGMA Art 70mm F2.8 Macro sample
SIGMA Art 70mm F2.8 Macro sample
SIGMA Art 70mm F2.8 Macro sample
SIGMA Art 70mm F2.8 Macro sample

なお本ブログでは、作例写真は全てSILKYPIX 10で現像しております。

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 関連記事:SILKYPIX10のおすすめポイントをたくさんの作例で紹介

 

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価格調査

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製品仕様表

SIGMA Art 70 2.8 Macro製品仕様一覧表(Lマウント用)

画角34.3度
レンズ構成10群13枚
最小絞りF16
最短撮影距離0.258m
フィルタ径49mm
全長129.8mm
最大径70.8mm
重量605g

その他のレンズ分析記事をお探しの方は以下の目次ページをご参照ください。

 関連記事:レンズ分析リスト

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