分析004 OLYMPUS Zuiko 35mm F2.0

Zuiko 35 F2.0の性能分析・レビュー記事です。作例写真をお探しの方は、記事末尾にありますのでこのリンクで移動されると便利です。

レンズの概要

フィルム時代のオリンパスOMマウント用Zuikoレンズで、広角側の大口径レンズです。

Zuikoの小口径レンズは絶賛されていますが、一方で本レンズを含む大口径はクセが強いと評価されており、特に本レンズはその代表のような物です。

焦点距離50mmのレンズがあまりに安く小型で大口径なために隣の焦点距離となる35mmもとても良いのだろうと先入観や期待感を持たれてしまい結果的に厳しい状況に追い込まれてしまうのが35mmの宿命でしょうか。

Olympus Zuiko 35mm F2.0

私的回顧録

90年代にOM-1と35mmF2.8を拾ったことがカメヲタ本格デビューのきっかけとなりました。

OLYMPUSのOMシリーズを使い始める前から一眼レフは所有していましたし、カメラ好きではありましたが、OMを見つけたときから沼の住民へと変貌を遂げたと表現すべきでしょうか。

さてこのZuiko 35 F2.0ですが、90年代当時はF2.8なら5000円ほどで中古の良品が買えたこともあり、高価なF2.0はとても買う財力が無く、購入したのは2000年代に入ってからでした。

ただし、正直なところ50mmFno1.2を愛用していた事もあり当時はまったく使いこなせていませんでした…

文献調査

特許資料を読み漁りますと製品の断面図と完全一致とまではいかないようですが、構成が類似する物があります。

この不一致の理由として予想されるのは、特許出願後に設計値をさらにリファインしたとか、開発中になにかの要因で設計値変更の必要があったのではないか、とか想像されます。

  注:あくまで勝手な想像です。

そもそもカタログなどに記載する断面図がだいぶ雑なメーカーがあるという都市伝説的な話も聞いたことがありますが…

構成枚数や形状に大きな違いはありませんので特開昭49-40127の実施例1が製品構成に類似と予想し再現してみます。

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。

設計値の推測と分析

性能評価の内容について簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 リンク:光学性能評価光路図を図解

光路図

Olympus Zuiko 35mm F2.0 断面図 光路図

上図がzuiko 35 F2.0の光路図です。

7群9枚構成。一眼レフカメラ用のレンズの基本構成はガウスタイプと言われますが広角側のレンズになるとガウスの面影はあまり感じられません。

一眼レフ用広角レンズ配置の一般的タイプはレトロフォーカスと言い被写体側に凹レンズを配置する物が有名ですが、第1レンズは極強いパワーの凸レンズです。なにか断面図からしてすでに独特な世界観を広げています。

このレンズはFno2.0と明るいので、大口径化で肥大する大きさの抑制のために強い凸レンズを被写体側に配置し、全長短縮を狙ったのではないかと考えられます。特にOMマウント用のZuikoレンズシリーズはカメラシステム全体の小型化を売りにしていますから大口径レンズと言えど小型化を狙ったのでしょうか。

全体のレンズ枚数として少ないわけではないですが、サイズダウンを重視したのか収差補正は苦しい状況のようです。

硝材も大口径特有の軸上色収差を抑制するような特殊低分散材料は採用していないため色収差もかなり苦しい状況のようです。

現代は収差が完璧に抑えられたレンズが手に入りますから、むしろ収差が大きい方が楽しみが増えますので期待に胸が膨らみます。

縦収差

球面収差、像面湾曲、歪曲収差のグラフ

Olympus Zuiko 35mm F2.0 縦収差

球面収差 軸上色収差

球面収差はフルコレクション型に補正されているとはいえその膨らみは50mm F1.2を超えるようでふわふわな写真が期待できます。逆に言うと50mmがいかにガウスタイプの恩恵で容易に収差補正されているのか噛み締めることもできます。

軸上色収差は焦点距離に比例して小さくなる特性を持つので広角レンズほど小さくしやすいはずですが、へたな望遠レンズより多いぐらいの収差を残しているようです。

ただし、球面収差グラフの上端となる光線高さ10割部ではC線とF線が一致し、7割ぐらいの位置での各色の光線が重なるような特性としているので、少し絞れば色収差の改善は大きいでしょう。軸上色収差は残しながらも美しいまとめ方をしているようです。

像面湾曲

球面収差の補正不足を補うために像面をアンダー側に大きく倒しています。収差を出すことで全体的なピントを一致させる基本的なテクニックです。ただし、この方法だとハロ・コマという横収差の収差成分が発生するのでMTFは全体に低めになります。

歪曲収差

若干の樽型ですが、絶対値的には小さいの範囲内で特に問題ありません

倍率色収差

Olympus Zuiko 35mm F2.0 倍率色収差

かなり大きく残っています。倍率色収差は絞り込むと目立ちやすくなりますが、開放からすでに目立ちそうです。

横収差

Olympus Zuiko 35mm F2.0 横収差

Zuiko 50mm F1.2レベルにサジタル方向のフレアが大きく、タンジェンシャル方向の収差も大きいですがハロ・コマを出すことでピントバランスを保っているようです。

スポットダイアグラム

Olympus Zuiko 35mm F2.0 スポットダイアグラム

横収差の通りで全体的にスポットサイズが大きいようです。

MTF

開放絞りF2.0

Olympus Zuiko 35mm F2.0 MTF F2.0

画面中央はそこそこな高さがありますが画面中間から周辺部はのっぺりとしたグラフになります。ピント位置は画面全体でズレは無いようです。

小絞りF4.0

Olympus Zuiko 35mm F2.0 MTF F4.0

絞るとMTF値の高さは十分に改善しますが、中央と周辺でピント位置がズレるようで、平面的な被写体で撮り比べるとずれが目立つかもしれません。

収差を楽しむ目的で使うので絞りませんが…

総評

巷の噂通りのクセ玉です。実写してみますと解像しているのか、ピントを外したのか、手振れなのか、と悩むような不思議な写真が撮れていることが多々あります。特に背景のボケが収差が大きいゆえに独特なボケ方になりピントの合った位置が分かりづらくなる錯視的な効果を発するようです。しかし、現代的な高性能レンズばかり使っていると時折このZuiko 35 F2を使いたくもなるのですから、そこも不思議なところです。

レンズに味を求める方には是非使っていただきたい逸品です。

なお焦点距離の近い近代的レンズ設計の代表例として、SIGMA Art シリーズからSIGMA 35mm F1.4を分析しておりますので以下のリンク先を参考にご覧ください。

 リンク:SIGMA 35mm F1.4

作例

Zuiko 35 F2.0の作例集となります。以下のサムネイル画像をクリックしますと拡大表示可能です。特に注釈の無い限り開放Fnoの写真です。

OLYMPUS製品で作例のある物はこちらのリンクにまとめてありますのでご参照ください。

 リンク:作例ギャラリーOLYMPUS

製品仕様表

製品仕様一覧表 Olympus Zuiko 35mm F2.0

画角63度
レンズ構成6群7枚
最小絞りF16
最短撮影距離0.3m
フィルタ径49mm
全長33mm
最大径59mm
重量175g

他の製品分析記事をお探しの方は以下の目次ページをご参照ください。

リンク:レンズ分析目次

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