分析005 OLYMPUS Zuiko 21mm F3.5

Zuiko 21 F3.5の性能分析・レビュー記事です。作例写真をお探しの方は、記事末尾にありますのでこのリンクで移動されると便利です。

レンズの概要

フィルム時代のオリンパスOMマウント用Zuikoレンズで、超広角側の小口径レンズです。Zuikoの小口径レンズは各所で絶賛されておりこちらもその1本です。

一眼レフカメラ用のレンズは広角レンズの性能が出しづらいと言う宿命があります。広角レンズとは焦点距離が示す通り「短いレンズ」であるわけですが、一眼レフ用レンズはファインダーへ光を導くためのミラーと干渉を避けるため「長いバックフォーカス」を確保しなければならないという物理的な矛盾が存在します。

そのためライカに代表されるレンジファインダー機に対して長らく性能が低く、これを克服することが一眼レフ用レンズの進化の歩みだったとも言えます。

いわゆるライカ用レンズと言われるレンジファインダーカメラの広角レンズの性能が高いのは、簡単に言えばミラーが不要なのでバックフォーカスを短く設計でき構造的な矛盾が無く、設計自由度が高いためです。

私的回顧録

超広角側のレンズでは大好きな焦点距離です。

フィルム時代には50mmと21mmを装備するのがいつものパターンでした。

焦点距離21mmになりますと、超広角の領域に入ります。このあたりから眼の画角を超えた誇張された映像の世界となります。

かと言って、18mmや16mmのように異常な広画界ではありませんから不自然さ無く広く撮れるのが21mmの特徴でしょう。

なお、近い仕様のレンズでZuiko18mmF3.5も捨てがたい選択なのですが、こちらは第1レンズが張り出した形状の「出目金」で扱いに少々気を使うのが難点です。

文献調査

特許文献を読み漁ると断面形状が酷似する特開昭54-34234が発見できました。なお、今回分析する21mm以外にも24mmや18mmなども発見したのですが、印刷か保管品質の悪さからか実施例の数値が読めない物があり、計算が上手くいかない物が多数あります。40年以上前の紙保存の資料ですからね…

断片的な情報を元に再設計するという事もできますが時間がかかるので、Zuikoレンズシリーズの分析はこのレンズで一旦終了し、他のレンズの分析に取り掛かろうと思います。

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。

設計値の推測と分析

性能評価の内容について簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 リンク:光学性能評価光路図を図解

光路図

Olympus Zuiko 21mm F3.5

上図がzuiko 21 F3.5の光路図です。

7群8枚構成、非球面レンズは非採用です。被写体側のレンズが相対的に大きいいかにもな広角レンズの構成です。

第1レンズを凸レンズとするのは像面湾曲と歪曲の低減のためで非球面レンズを非採用の古い光学系で良くある構造です。

全体の構成は、対称型に近い並びのため性能には期待できそうです。

なお、超広角レンズは各社ともこのような構成を基本とし、どこに非球面レンズを配置するかという開発競争が繰り広げられていました。

簡単に言うと第1レンズのような前側の大径レンズを非球面レンズにすれば性能は劇的な改善が可能ですが、レンズ径と値段が比例するため価格が高騰しますし、大き過ぎると加工自体が不可能な事も多くなりますから、値段と性能とその時代の技術のバランスが浮き出てくるわけです。

このレンズは非球面は採用しておりませんから球面レンズのみで地道収差を補正した努力が結晶化した物であるはずです。

このようなレンズを分析しておきながら改めて近代的なレンズを見ることでレンズ設計の発展の歴史を味わうことができるでしょう。

縦収差

球面収差、像面湾曲、歪曲収差のグラフ

Olympus Zuiko 21mm F3.5 縦収差

球面収差 軸上色収差

球面収差は良好に補正されていますが、軸上色収差は小口径の割に大きめと言うところですが、赤側の軸上色収差こそ大きめですが上端部分でd線等の各色と重なっているため開放側では目立ちづらい設計にしているようです。

像面湾曲

像面湾曲はグラフの上端にあたる画面の最周辺部では変動が大きく非点収差がかなりの量出ています。ただし、この時代の広角レンズとしてはバランスは良好な方でしょう。フィルム時代はフィルムとプリント用紙の縦横比が異なるためフィルムの全域がプリントされることはほとんどありません。そのため一般の人は最周辺部を見ることは無かったのです。

現代では撮影画面の隅までモニターで等倍鑑賞するのが当たり前なので厳しい時代になったわけです。

歪曲収差

歪曲収差は十分に小さく、最大部でも2%ほどの樽型です。

超広角の範囲ですからもう少し残っていても良いのでは?と思いますがそのあたりはオリンパスのこだわりなんでしょう。

倍率色収差

Olympus Zuiko 21mm F3.5 倍率色収差

像高特性による変動は大きいものの広角でこの枚数やサイズ感を考えれば良くまとまっていると思います。上端の画面周辺部で青側の収差が大ではありますが像面湾曲と同様に当時の感覚では重視されない領域です。

横収差

Olympus Zuiko 21mm F3.5 横収差

縦収差はこのクラスのレンズとしては良くまとまっていると思いますが横収差で見ると像高6mmから12mmでのタンジェンシャル方向のコマ収差成分が大きく、影響が懸念されます。

スポットダイアグラム

Olympus Zuiko 21mm F3.5 スポットダイアグラム

散らばりは大きいものの広角でFnoが暗いので集光が弱く実写では気にならないでしょう。小口径が絶賛される理由が見えてきます。

MTF

開放絞りF3.5

Olympus Zuiko 21mm F3.5 MTF F3.5

中心は開放からかなりの高さです。球面収差が抑制されている効果でしょう。一方で像高12mmを超えると極端に暴れ出します。

横収差で見れるコマ収差成分の影響です。超広角なので写真的にはあまり気にならないはずです。

小絞りF5.6

Olympus Zuiko 21mm F3.5 MTF F5.6

中間像高まではコマ成分での落ちだったので絞ればしっかりと改善します。このあたりが絶賛される箇所なんでしょうか。

画面周辺部は像面湾曲で低下しているので改善しないものの実用上は問題無いでしょう。

総評

この時代の一眼レフ用の超広角レンズだけあって周辺部の性能はかなりの収差を残しているものの、非球面レンズも使わずに実用性十分な性能にまとめてあり設計者のセンスの高さにうなります。

超広角レンズですからF8.0ぐらいに絞ってもさほど深度感は変わりませんので、少し絞って使えば超広角パンケーキレンズとしても扱えます。実際に作例作成時にやってみますとピントもパンフォーカス状態で合わせる必要がありませんし、画質は上等、気楽なお散歩撮影には最高でした。

現代のフルサイズデジタル一眼ならISO感度は上げ放題ですからFnoを暗くしても実用上は気になりませんから時代が変わって新しい使い方が見えた気がします。

なお焦点距離の近い近代的レンズ設計の代表例として、SIGMA Art シリーズからSIGMA 20mm F1.4を分析しておりますので以下のリンク先を参考にご覧ください。

 リンク:SIGMA 20mm F1.4

作例

Zuiko 21 F3.5の作例集となります。以下のサムネイル画像をクリックしますと拡大表示可能です。

OLYMPUS製品で作例のある物はこちらのリンクにまとめてありますのでご参照ください。

リンク:作例ギャラリーOLYMPUS

製品仕様表

製品仕様一覧表

画角92度
レンズ構成7群7枚
最小絞りF16
最短撮影距離0.2m
フィルタ径49mm
全長31mm
最大径59mm
重量180g

他の製品分析記事をお探しの方は以下の目次ページをご参照ください。

リンク:レンズ分析目次

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