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【深層解説】 シグマ大口径広角レンズ SIGMA Art 20mm F1.4 DG HSM-分析014

シグマ Art 20 F1.4の性能分析・レビュー記事です。

さて、写真やカメラが趣味の方でも、レンズの仕組みや性能の違いがよくわからないと感じませんか?

当ブログでは、光学エンジニアでいわゆるレンズのプロである私(高山仁)が、レンズの時代背景や特許情報から設計値を推定し、知られざる真の光学性能をやさしく紹介します。

当記事をお読みいただくと、あなたの人生におけるパートナーとなるような、究極の1本が見つかるかもしれません。

作例写真は準備中です。

レンズの概要

SIGMAのArtレンズシリーズは、金属部品を多用した高品位な外観と、高い解像性能を兼ね備えるフラッグシップモデルです。

本項で紹介する20mm F1.4 DG HSM Artは大口径広角レンズでありながら極めて高い解像性能を誇るレンズです。

Artシリーズの単焦点としては比較的早めの2015年に発売されましたが、当時の焦点距離20mmで Fno1.4の仕様は世界初だそうです。※SIGMA HPより

現在のところArtシリーズの単焦点は最広角14mmと最望遠135mmだけがFno1.8で、他はFno1.4で一貫しています。

重量は略1Kg(950g)だそうで、持つ者を選ぶ伝説の武器のような重量感ですが、仕様から見れば価格はむしろ手頃です。

一般的に光学系の重量と画質は比例しますから性能についてはきっと期待を裏切らないでしょう。

このレンズは、各社マウントに対応した専用モデルがありますが、一眼レフカメラ用のマウントの製品はマウントアダプターを利用することで、ミラーレス一眼カメラにも使用できます。

私的回顧録

さてだいぶ長らく続けてきたSIGMA Artレンズ分析シリーズも一旦完結します。執筆時現在でも14mmと40mmが発売済ですが、特殊仕様なのでベンチマークとして分析しておく必要性が薄いと考えております。また別の機会に分析は行います。

さて、今回も「SIGMA 35mm F1.4 Art」の記事から引き続きArtシリーズの単焦点を分析します。

これは現代的な光学設計値の基準作り(ベンチマーク)を行うための取り組みの一環になります。SIGMAのArt単焦点レンズは「性能重視、大きさ度外視」という非常にわかりやすいコンセプトで設計されておりベンチマークの基準として扱いやすいというのが理由です。

ここで一旦完結となりますが、思えばArtシリーズの分析は本当に苦行でした…構成枚数が多いので再現データ作成に手間がかかるわりに性能が良いのでそもそもコメントするほどの事も無いので辛かったわけです。

文献調査

さて特許文献を調べると現代の製品なので関連すると思われる特許が簡単に見つかりました。見た目に製品形状に近い特開2019-117419の実施例1を設計値と仮定し、設計データを以下に再現してみます。

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。

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設計値の推測と分析

性能評価の内容について簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

上図がSIGMA Art 20 F1.4の光路図です。

11群15枚、非球面レンズは2枚採用、色収差を良好に補正するための異常分散材料を7枚配置しています。

撮像素子側にガウスタイプのレンズ系を配置し、被写体側に広角コンバーターを配置したような典型的な広角レンズの配置の発展型です。第2レンズの非球面レンズは両面を非球面としておりますがΦ60mmに近い口径です。このサイズの非球面レンズはなかなか所有できないと思います。

前回分析した焦点距離24mmのレンズと比較すると大きさは全体に1.5倍という感じでしょうか、前玉が所謂「出目金」形状で飛び出しており一般的なねじ込み式のフィルターは装着できません。私は基本的にプロテクトフィルターを装着するので少々悩みますね…ただし、フードが一体化されているので前玉を不用意にさわってしまうなどの恐れは多少は回避できます。

縦収差

球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

広角になるほど球面収差軸上色収差は補正が容易なこともありますが、十分に補正されているようです。

像面湾曲

逆に広角ほど厳しいのが像面湾曲です。広い画角を写すということはそれだけレンズに入射する光の角度がきつくなるので補正が難しくなるわけです。光路図からも読み取れると思います。画面中心に近いところから若干変動あるようですが絶対値は小さい範囲内です。

歪曲収差

歪曲収差は若干の補正残りで樽型の歪曲となりますが、さすがに焦点距離20mmともなると3%程度に抑えるのがやっとのようです。高倍ズームレンズなどでは歪曲を5%まで出しているものも多いのでこのレンズは少なくともズームよりは良好なはずです。

倍率色収差

倍率色収差は、十分補正されているようですが、広角だけに補正の苦しさを感じます。像面湾曲とも似た雰囲気のズレは出ていますが実用上悪いと言われるようなレベルではありません。

横収差

横収差として見てみましょう。

前回解析した28mmF1.4と同程度にサジタル方向のフレアが大きいです。サジタルフレアは絞ると改善する収差なので個人的にはこの程度なら気にはしませんが、星などを撮る人は気になるでしょうね。

スポットダイアグラム

スポットスケール±0.3(標準)

ここからは光学シミュレーション結果となりますが、最初にスポットダイアグラムから見てみましょう。

横収差でもわかりましたが、高い像高のサジタルフレアが影響しスポットが横方向に広がっています。星を撮る方は二段ほど絞る方が良さそうです。

スポットスケール±0.1(詳細)

MTF

開放絞りF1.4

最後にMTFによるシミュレーションの結果を確認してみましょう。

像面湾曲の変動の通りで、画面周辺に向かってMTFがそこそこ低下しつつ像面湾曲の影響も出てくるようです。Artレンズ同士で比較しなければわからないレベルの高性能ではあります。

小絞りF4.0

Fno4.0に絞ったMTFです。像面湾曲は改善しませんが、山の高さが上がるので写真自体の解像性能は理想値レベルに改善します。

総評

作例制作後に記載いたします。

以上でこのレンズの分析を終わりますが、今回の分析結果が妥当であったのか?ご自身の手で実際に撮影し検証されてはいかがでしょうか?

それでは最後に、あなたの生涯における運命の1本に出会えますことをお祈り申し上げます。

LENS Review 高山仁

マウントアダプターを利用することで最新のミラーレス一眼カメラでも使用できます。

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作例

SIGMA Art 20 1.4の作例集は準備中です。


当ブログで人気の「プロが教えるレンズクリーニング法」はこちらの記事です。

製品仕様表

SIGMA Art 20 1.4製品仕様一覧表(Lマウント用)

画角94.5度
レンズ構成11群15枚
最小絞りF16
最短撮影距離0.276m
フィルタ径取付不可
全長153.7mm
最大径90.7mm
重量1035g

記録メディアは、事故防止のため信頼性の高い物を使いましょう。

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以下の分析リストでは、記事索引が簡単です。

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