レンズ分析

【レンズ性能評価】RICOH GR3x vs SIGMA 45mm F2.8 DG DN -分析063

リコー GR3x と シグマ 45mm F2.8 DG DNのレンズ性能の比較分析記事です。

レンズの仕組みやその性能は一体どう違うのか、具体的な違いがほとんどよくわかりませんよね。

雑誌やネットで調べても似たような「口コミ程度のおススメ情報」そんな記事ばかりではないでしょうか?

当ブログでは、レンズの歴史やその時代背景を調べながら、特許情報や実写作例を元にレンズの設計性能を推定し、シミュレーションによりレンズ性能を技術的な観点から詳細に分析します。

一般的には見ることのできない光路図や収差などの光学特性を、プロレンズデザイナー高山仁が丁寧に紐解き、レンズの味や描写性能について、深く優しく解説します。

あなたにとって、良いレンズ、悪いレンズ、銘玉、クセ玉、迷玉が見つかるかもしれません。

それでは、世界でこのブログでしか読む事のできない特殊情報をお楽しみください。

レンズの概要

RICOH GR3xは、RICOHの伝統的コンパクトカメラシリーズの標準レンズモデルで、焦点距離はフルサイズ換算で40mm F2.8相当のレンズが搭載されています。

一方のSIGMA 45mm F2.8はContemporaryラインのレンズですが、実質的にSIGMAのLマウントカメラfpの専用レンズとして開発された小型レンズです。

偶然なのでしょうか?2020年前後は、焦点距離40mmブームが沸き起こっているかのようで、各社が40mm前後の商品を発売しています。

2020年前後に発売された焦点距離40mm台のレンズを挙げてみました。

  • 2019 SIGMA 45mm F2.8 DG DN
  • 2020 SONY FE 40mm F2.5 G (SEL40F25G)
  • 2021 NIKON NIKKOR Z 40mm F2.0
  • 2021 RICOH GR3x (40mm相当)

NIKKOR 40mm F2.0とRICOH GR3xは、2021年10月1日の発売まで奇遇にも一致しています。

今回の比較分析では、ブームの先駆けとなった交換レンズのSIGMA 45mm F2.8と、コンデジを代表してRICOH GR3xを比較分析することで焦点距離40mmを深く味わう企画となります。

もし、各レンズの分析記事を未読の方は以下の詳細分析記事をご参照ください。

 関連記事:SIGMA 45mm F2.8
 関連記事:RICOH GR3x

私的回顧録

当ブログをご覧になるようなマニアな皆様からは、焦点距離40mmのレンズとは不遇な存在で、傍から見るとなぜか主流になれない不思議なレンズ仕様に感じてしまうのではないでしょうか?

じつは不遇となったことにはしっかりとした理由があるのです。

1つ目の理由は「ライカの初採用レンズが焦点距離50mmであった」ことで、これは前回のRICOH GR3xの記事でも説明しました通りですが、さらに当時ライカをコピーした多く企業もこぞって50mmを開発したためデファクトスタンダード(事実上の標準)と成り上がったのです。

2つ目の理由は「一眼レフカメラの勃興」です。

一眼レフカメラは、撮影レンズから光学ファインダーへ光を導くためのミラーを撮像素子とレンズの間に配置する必要があり、レンズのバックフォーカスを長くしなければなりません。

この時に必要なバックフォーカス量は各社多少異なりますが40mm程度は必要なので、焦点距離40mmより長いレンズの方がバックフォーカスの確保が容易(=設計しやすい)のです。

「設計しやすい」とは、たとえば「高性能にできる」「小型にできる」「安くできる」など様々な恩恵があるということです。

設計しやすいために焦点距離40mmより少し長い50mmが一眼レフカメラでも好まれ、皮肉な事にライカを滅ぼしかけた一眼レフカメラの標準レンズにも焦点距離50mm台のレンズが採用されたのです。

また、一眼レフカメラの標準レンズに多く採用されたダブルガウス型レンズの特性的にも、バックフォーカスを長くするには焦点距離を50mmよりも長くすることが好適でした。

1970年代、一眼レフカメラの黎明期に58mmとか55mmなど、50mmより大きく半端な数値の焦点距離のレンズが多いのもこのような理由によるものです。

ところで「ダブルガウスレンズとはなんぞや?」と思われた方は以下の記事をご参照ください。

 関連記事:ダブルガウスレンズ-黎明期編

しかし、現代(2021年現在)における奇妙な焦点距離40mmムーブメントには何か訳があるのでしょうか?

レンズ性能をつぶさに観察することでその謎に迫ることができるのかもしれません、さっそく分析に取り掛かりましょう。

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以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。


当記事を読み終えますとレンズを購入したくなる恐れがございますので、事前に防湿庫の増設を検討されることをおススメいたします。

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設計値の推測と分析

「GR3xのレンズはAPS-Cサイズのレンズ」、「SIGMA 45mm F2.8はフルサイズ」ですから撮像素子のサイズが異なります。

当ブログでは、レンズ性能としての比較を容易にするためグラフ類のスケールをフルサイズレンズと並べて比較できるように調整しています。

もう少し、イメージ的にこれを表現すると、APS-C用レンズを「もしもフルサイズセンサ用に拡大したらこうなる」になるようグラフの尺度を変更してあり、光学系としては並べて評価が可能となります。

注意事項としては、レンズ的(光学的)にはこの評価で特に問題はありませんが、実際の写真としてはセンサの小さいカメラはノイズや画素数の点でより大型のセンサには劣ります、そこは加味しておりませんのご注意ください。

性能評価の内容などについて簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

左はRICOH GR3x、右はSIGMA 45mm F2.8

上図の左はRICOH GR3x、右はSIGMA 45mm F2.8の光路図になります。

同スケールで比較しておりますので実際のサイズ比と同じ関係になっています。

左のRICOH GR3xはAPS-Cサイズの撮像素子、右のSIGMA 45mm F2.8はフルサイズであるため撮像素子のサイズ比としては約1.5倍ほど異なります。

2つのレンズともに非球面レンズは2枚づつ採用しているのが共通していますね。

だいぶ、構成や枚数は異なるもののやはり何か親近感ある形状をしています。

 

左はRICOH GR3x(1.5倍)、右はSIGMA 45mm F2.8

続いて、上図は「撮像素子サイズが同じになるように」本来はAPS-CサイズのRICOH GR3xを1.5倍に拡大しています。

要は、「もしもRICOH GR3xがフルサイズカメラだったらこんなサイズ感」のイメージ図です。

これで両者を同じスケールで比較することができます。

ここで注目したいのは「RICOH GR3xのレンズは一回り小さい」と言う衝撃の事実です。

縦収差

左はRICOH GR3x、右はSIGMA 45mm F2.8

左から、球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

球面収差から見てみましょう、RICOH GR3xはほぼ直線のクセの無いまとめ方です。一方のSIGMA 45mm F2.8は中間部分がプラス側へ少しふくらむ逆フルコレクション型で、SIGMAのレンズではよく見られるまとめ方です。

軸上色収差はわずかにRICOH GR3xの方が大きいですが、両者ともに良くまとまっているレベルです。

像面湾曲

像面湾曲はグラフの上端でのまとまり方が異なりますが、横収差的にどうまとまっているかが重要なポイントですからMTFで最終確認いたしましょう。

歪曲収差

歪曲収差、RICOH GR3xは最大でも+1%程度と小さくまとめています。一方のSIGMA 45mm F2.8は最大で+3%ほどと単焦点レンズにしては少し大き目で、ズームレンズなら標準的なレベルです。

歪曲収差は画像処理で補正が容易なのでそちらへ任せているのかもしれませんね。

倍率色収差

左はRICOH GR3x、右はSIGMA 45mm F2.8

倍率色収差は、RICOH GR3xはほぼ直線的にグラフの上端である画面隅に向かって純増するクセの無いまとめ方です。一方のSIGMA 45mm F2.8は中間部分で変局する形状で画面全体で平均的に収差を抑える趣向です。

横収差

左はRICOH GR3x、右はSIGMA 45mm F2.8

タンジェンシャル、右サジタル

横収差として見てみましょう。

タンジェンシャル方向(左)の横収差ではRICOH GR3xの方が色収差が少ないようです。

サジタル方向(右)ではSIGMA 45mm F2.8の方が小さくまとまっています。


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スポットダイアグラム

左はRICOH GR3x、右はSIGMA 45mm F2.8

スポットスケール±0.3(標準)

ここからは光学シミュレーション結果となりますが、最初にスポットダイアグラムから見てみましょう。

横収差で見た通りタンジェンシャル方向(縦方向)にはRICOH GR3xの方がまとまりが良く、サジタル方向(横)にはSIGMA 45mm F2.8の方がまとまっているようで、なかなか甲乙つけがたいようですね。

スポットスケール±0.1(詳細)

MTF

左はRICOH GR3x、右はSIGMA 45mm F2.8

開放絞りF2.8

最後にMTFによるシミュレーションの結果を確認してみましょう。

かなりの接戦ですが、RICOH GR3xの方が高く、位置のそろいも良好そうですね。

小絞りF4.0

小絞りにしますとRICOH GR3xの方が明らかにバランスが良いようです。

総評

驚くべき事にRICOH GR3xの光学系は極めてコンパクトでありながら、SIGMA 45mm F2.8に匹敵する性能を有していると言えるのは間違い無いようです。

APS-Cサイズのレンズとフルサイズのレンズを比較するのは、現実問題としては色々と無理があり、ここでの結果が必ずしも写真に現れるかは少々別問題となります。

RICOH GR3xはAPS-Cサイズの撮像素子ですから事実レンズが小さいため、たとえばフォーカシングレンズの構成自由度が高い、などフルサイズよりも設計上の優位性も多いでしょうから、必ずしもSIGMA 45mm F2.8が劣るというわけではありませんのでご注意ください。


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作例・サンプルギャラリー

RICOH GR3xとSIGMA 45mm F2.8の作例集は各詳細分析ページをご参照ください。


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