レンズ分析

【レンズのプロが解説】 ニコン大口径標準レンズ NIKON AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G-分析019

ニコン ニッコール 50 1.4Gの性能分析・レビュー記事です。

さて、写真やカメラが趣味の方でも、レンズの仕組みや性能などの具体的な違いがよくわからないと感じませんか?

雑誌やネットで調べても、似たような「口コミ程度のおススメ情報」そんな情報ばかりではないでしょうか?

当ブログでは、レンズの歴史やその時代背景を調べながら、特許情報や実写作例を元にレンズの設計性能を推定し、シミュレーションによりレンズ性能を技術的な観点から詳細に分析しています。

一般的には見ることのできない光路図や収差などの光学特性を、プロレンズデザイナー高山仁が丁寧に紐解き、レンズの味や描写性能について、深く優しく解説します。

あなたにとって、良いレンズ、悪いレンズ、銘玉、クセ玉、迷玉が見つかるかもしれません。

それでは、世界でこのブログでしか読む事のできない特殊情報をお楽しみください。

作例写真をお探しの方は、記事末尾にありますのでこのリンクで移動されると便利です。

レンズの概要

NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noctの特許資料発見の記念としてNIKKOR50mmの分析をシリーズ化して進めることにしました。

要は勝手にNIKONレンズの歴史を楽しんでみようと言う企画となります。

まず現在(2020年)のところNIKONの50/58mmのレンズとしては以下の製品が販売されています。

8本ですよ…脅威的です。しかもそれぞれ光学系は異なるようです。モーターや駆動機構、電磁絞りなどが異なるならわかりますが、なぜ光学系までわざわざ変えるのか…ミラーレス黎明期と言う背景もありますが、どれだけNIKONは50mmが好きなのでしょうか?

今回はシリーズの第4回目、前回は40年以上前の1978年に発売された光学系が流用された先代の50mm f/1.4Dを分析しました。

そこから30年かけてリニューアルされた2008年発売のf/1.4Gを今回分析します。

このレンズは、一眼レフカメラ用ですがマウントアダプターを利用することで、ミラーレス一眼カメラにも使用できます。

私的回顧録

このレンズが発売された2008年、時代的にはコンデジブームの頂点、一眼レフはAPSサイズのブーム到来、Fullサイズ一眼レフカメラが本格スタートした時期であり、まさにデジカメバブルの時代です。

2007年の末にNIKONでは初のFullサイズ(FXフォーマット)の一眼レフNIKON D3が販売開始となり、このNIKKOR 50mm f/1.4Gはデジタル時代におけるFullサイズカメラ復刻の狼煙のような製品だったのではないか、などと勝手に思っています。

文献調査

残念ですが、直接このレンズの設計値らしき特許は発見できませんでした。

ただし、このレンズの発売からしばらくして出願された物ですが、NIKONの出願している特開2015-41003に構成の良く似る光学系が記載されていることがわかりました。

50mmレンズのようなガウス変形タイプの光学系ならば変形部分の構成が似ていれば酷似した性能になるはずです。そのため見た目が良く似る実施例1を設計値と仮定し、設計データを以下に再現してみます。

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。

 

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設計値の推測と分析

性能評価の内容について簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

詳細分析の前に「ガウス、ガウスって言うけど一体何なんだ?」との疑問にお答えするために極簡単な説明記事を以下のリンク先へ準備しましたので気になる方はご参照ください。

関連記事:ダブルガウスレンズ

上記のリンク先では初期の4群6枚構成の完全対称型ダブルガウスを説明しています。

そして下図が、今回の設計値となります。

上図がNIKKOR 50 f/1.4Gの光路図です。

7群8枚構成、対称型ガウス(6枚構成)の撮像素子側に2枚凸レンズを追加しています。

被写体側の第2レンズと第3レンズを貼り合わせにせず分離するのは、コマ収差を抑えるための構造です。

前回分析した先代のf/1.4Dの撮像素子側にレンズにさらに凸レンズを足したと表現するのが適切でしょうか。

レンズの材料に特筆すべき物はありませんが、現代らしい高屈折率の材料が投入されています。

縦収差

球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

球面収差の様子を見ると30年ぶりのリニューアルなので驚くような変化があると思いましたが、意外なことに球面収差は先代のf/1.4Dと大きな違いはありません。 

軸上色収差も同様です。

像面湾曲

像面湾曲についても f/1.4D程度です。

歪曲収差

歪曲収差はわずかに樽型になりますが、対称型のガウスタイプの特徴で絶対値的には小さな範囲です。

倍率色収差

倍率色収差も同様に先代f/1.4Dとほぼ変わりません。ガウスタイプの特長で絶対値としては小さくまとまっています。

横収差

タンジェンシャル方向、サジタル方向

横収差として見てみましょう。

左側のタンジェンシャル方向から見ると、先代のf/1.4Dと比較すると画面中央の像高6mmでのコマ収差(非対称形状)がだいぶ低減しています。

右側のサジタル方向も画面の周辺の像高18mmあたりで見ると顕著に低減している様子がわかります。

ガラス材料の変更と枚数の1枚追加の効果を感じますが、現代的な大型な標準レンズと比較するとだいぶ懐かしい描写になりそうです。


記事の途中ですが、防湿庫を購入すると不思議と収納上限までレンズが生えてしまうというそんな恐ろしい都市伝説があるらしいですよ。

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スポットダイアグラム

スポットスケール±0.3(標準)

ここからは光学シミュレーション結果となりますが、最初にスポットダイアグラムから見てみましょう。

画面の中心から、中間の像高12mmあたりを見ると、先代のf/1.4Dに比較してスポットサイズが小さくなり、まとまり感が増しているのがわかりますね。

スポットスケール±0.1(詳細)

スポットの方もf/1.4Dとさほど変わりません。

MTF

開放絞りF1.4

最後にMTFによるシミュレーションの結果を確認してみましょう。

開放のMTFで見ると若干顔つきが変わりました。画面中心はさほど変わりませんが周辺部の山の高さがわずかに改善しているようには見えますが大きな差ではなさそうです。

小絞りF1.8

NIKKOR 50mm f/1.8Gとの比較用に当レンズをF1.8に絞った状態のMTFも準備しました。

画面中心(青)は同程度ですが、中間像高のグラフの山の高さは改善しているようです。

小絞りF4.0

F4まで絞ると、やはりf/1.4Dとの差は小さいですが、山の位置バランス的にはこちらの方が好ましいようです。

総評

f/1.4Dとの違いとして見ると、中央から中間像高での解像度の改善程度で意外に差が少ないのが結論のようです。

私が思うに、ガウスタイプの伝統たる「収差の味わい」と「小型で軽量」なる特色を安価な形で残したのが、このNIKKOR 50mm f/1.4Gなのでしょう。

オールドレンズ的な価値観を、この時期に製品として形にした、ある意味で先見性のある製品とも言えます。

得体のしれない不審なオールドレンズを購入するくらいならば、こちらのレンズを購入する方が、よほど収差と向き合う良い体験ができのではないでしょうか?

なお、冒頭で説明の通り、この特許データは製品とは少々異なる事が分かっていますので参考程度としてください。

類似仕様のレンズ分析記事はこちらです。

 関連記事:SIGMA Art 50mm F1.4 DG HSM
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 関連記事:SONY Planar T* FE 50mm F1.4 ZA

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価格調査

NIKON NIKKOR 50mm F1.4G の価格については、以下の有名通販サイトで最新情報をご確認ください。

マウントアダプタを利用することで最新のミラーレス一眼カメラでも使うことができます。

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作例・サンプルギャラリー

NIKKOR 50 1.4Gの作例集となります。以下のサムネイル画像をクリックしますと拡大表示可能です。特に注釈の無い限り開放Fnoの写真です。


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製品仕様表

製品仕様一覧表

画角46度
レンズ構成7群8枚
最小絞りF16
最短撮影距離0.45m
フィルタ径58mm
全長73.5mm
最大径54mm
重量280g

その他のレンズ分析記事をお探しの方は、分析リストページをご参照ください。

以下の分析リストでは、記事索引が簡単です。

レンズ分析リスト

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