レンズ分析

【レンズ性能評価】SIGMA Art 85mm F1.4 DG HSM-分析009

シグマ 85 F1.4 DG HSMの性能分析・レビュー記事です。

レンズの仕組みやその性能は一体どう違うのか、具体的な違いがほとんどよくわかりませんよね。

雑誌やネットで調べても似たような「口コミ程度のおススメ情報」そんな記事ばかりではないでしょうか?

当ブログでは、レンズの歴史やその時代背景を調べながら、特許情報や実写作例を元にレンズの設計性能を推定し、シミュレーションによりレンズ性能を技術的な観点から詳細に分析します。

一般的には見ることのできない光路図や収差などの光学特性を、プロレンズデザイナー高山仁が丁寧に紐解き、レンズの味や描写性能について、深く優しく解説します。

あなたにとって、良いレンズ、悪いレンズ、銘玉、クセ玉、迷玉が見つかるかもしれません。

それでは、世界でこのブログでしか読む事のできない特殊情報をお楽しみください。

作例写真をお探しの方は、記事末尾にありますのでこのリンクで移動されると便利です。

レンズの概要

SIGMAのArtレンズシリーズは、金属部品を多用した高品位な外観と、高い解像性能を兼ね備えるフラッグシップモデルです。

本項で紹介する85mm F1.4 DG HSM Artは大口径中望遠レンズでありながら極めて高い解像性能を誇るレンズです。

85mm F1.4 DG HSMは、Artシリーズ開始時期からだいぶこなれた2016年に発売の製品となりますので、Artシリーズのコンセプトに対して完全にブレが無くなり、純粋に性能だけを追求するという真の狙いが具現化されたかのような重厚な質感と高い解像性能を備えたレンズです。

焦点距離85mmと言えば、当然ポートレート用レンズと思いますが、メーカー公式HPには「究極のポートレートレンズ」と自ら書き切っているあたりに性能に対する強い自負を感じます。

このレンズは新しいのでこちらに情報があります。

外部リンク:SIGMA 公式HP 85mm F1.4 DG HSM Art

<2022追記>

ミレーレス専用の後継機が発売となり、本レンズは廃盤となったようです。

後継機に関しても分析記事を用意してありますのでご参照ください。

 関連記事:SIGMA Art 85mm F1.4 DG DN(ミラーレス用の後継機)

私的回顧録

ポートレートは、孫ムスメしか撮らないため公開可能な写真が少なく作例ページをどうしたものかと悩んでいます…

今回も「SIGMA 35mm F1.4 Art」の記事から引き続きArtシリーズ単焦点レンズを分析します。

これは現代的な光学設計値の基準作り(ベンチマーク)を行うための取り組みの一環になります。

SIGMAのArt単焦点レンズは「性能重視、大きさ度外視」という非常にわかりやすいコンセプトで設計されておりベンチマークの基準として扱いやすいというのが理由です。

ここで少々問題が起きております。ここ連続でArtシリーズの設計値ばかり見ており、高すぎるのではないかと思えるArtシリーズの性能に自分の感覚がすっかりおかしくなりました。

その一例ですが、Artレンズで撮影した写真をモニターで”等倍鑑賞”するとあまりの解像度の高さに「気持ち良さ」を感じているのです。

近年の高画素カメラで、写真を等倍鑑賞する事にあまり意味が無い事は重々承知しているのですが、その解像度の高さばかりを見入ってしまいます。

常々、解像力だけが写真レンズの魅力では無いとは思っていますが、「レンズの解像度に快感を覚える」に至るとはかなり重い症状の病気ですよね…

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文献調査

さて特許文献を調べると現代の製品なので関連すると思われる特許が簡単に見つかりました。断面図の雰囲気から特開2018-5099実施例4が製品に見た目で近いので設計値と仮定し、設計データを以下に再現してみます。

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。


当記事を読み終えますとレンズを購入したくなる恐れがございますので、事前に防湿庫の増設を検討されることをおススメいたします。

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設計値の推測と分析

性能評価の内容について簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

上図がSIGMA Art 85 F1.4の光路図です。

12群14枚、最も撮像素子に近い最終レンズに非球面を配置し球面収差と像面湾曲を同時に補正し、色収差を良好に補正するための特殊低分散材料も2枚配置しています。

昔の半導体露光装置の光学系のような恐ろしい見た目です…

被写体側のレンズ群もダブルガウス的な形状をしており、撮像素子側の絞り備える後側レンズ群もダブルガウス的な形状をしています。

前後の2組のダブルガウス構造と言うことはダブルダブルガウス?クワッドガウス?と呼ぶべきなのでしょうか?

なお、ガウス!ガウス!と連呼してしまいましたが、何の事かと思われた方は以下のリンクにまとめてありますのでご参照いただきたいと思います。

関連記事:ダブルガウスレンズ 黎明期編

縦収差

球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

球面収差は解説する意味も無いほどに、d線(黄色)は略直線の特性図です。

わずかにF線(水色)の軸上色収差が大きくも感じますが、これは私の再現データに問題があるのかもしれません。

光学系の特許に記載される実施例データは材料名が開示されていないので屈折率と分散の情報から推定していますが、ガラスメーカーごとに微妙に特性が異なるので真の材料はわかりませんし、一般公開されていない特注材料を使っていることもありえます。

特注材料まで使用されると完全に設計値を再現するのは難しくなります。

データの再現性が問題になったとき、色収差が最もずれやすくなります。

像面湾曲

像面湾曲もここまで小さければ、ほぼ完全に収差が抑えられていると言えるレベルです。

歪曲収差

歪曲収差は焦点距離的に歪曲収差は少ない仕様ですからほぼゼロです。

倍率色収差

倍率色収差は、巧みなバランスで各色が全て平均的の小さくまとまるように補正されています。

横収差

左がタンジェンシャル方向、右がサジタル方向

横収差として見てみましょう。

サジタル方向のハロはFno1.4の仕様を考えれば極小さく抑えられています。タンジェンシャル方向では中間の6mm像高ではわずかにハロ・コマ感はありますが、実用上十分なレベルで補正されているようです。


レンズが増えるとケースも必要ですよね。Amazonの格安ケースが手軽でおススメです。

スポットダイアグラム

スポットスケール±0.3(標準)

ここからは光学シミュレーション結果となりますが、最初にスポットダイアグラムから見てみましょう。

スポット形状は、中心から中間の像高12mm程度まではほぼ点で周辺の像高18mmを超えるとわずかにサジタルコマフレアの影響でV字感ありますので、夜景や星を撮影するなら半段程度絞る方が良いでしょう。

スポットスケール±0.1(詳細)

MTF

開放絞りF1.4

最後にMTFによるシミュレーションの結果を確認してみましょう。

MTFは、開放Fno1.4の状態ですでに画面全域で十分に高い特性です。

さすがに像高21mmあたりでは少し像面湾曲がありますが、ほとんどの撮影用で問題無い領域です。

小絞りF4.0

Fno4.0まで絞れば無収差と感じられる性能になります。

総評

かなりの重量ですが、そのデメリットを感じさせない超高性能レンズです。実写した画像を見ると開放Fnoから気持ち良い高い解像感にまさに感心します。

ポートレートレンズにはボケ味を重視する方も多いと思いますが、大口径特有の浅い被写界深度の中に高解像度な被写体が浮かぶように現れる様は新たな絶景とも言えるかもしれませんね。

さすがは公式サイトで「究極の」と書き切る性能、収差を楽しむこのブログとしては良すぎて書くことが無いのがやや辛いところです。

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作例・サンプルギャラリー

SIGMA 85 1.4の作例集となります。以下のサムネイル画像をクリックしますと拡大表示可能です。


当ブログの作例製作時に参考にさせていただいてます、絶景を撮るための撮影ガイド本をまとめました。

様々な撮影テクニックや、多彩なロケーション情報が満載の本ばかりです。まずは達人のマネが、上達への近道ではないでしょうか?

【絶景を撮る】撮影ガイド本 おすすめ 10選

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価格調査

SIGMA Art 85mm F1.4 DG HSM はすでに廃盤となっているためミラーレス専用の後継機の情報を以下に記載します。

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製品仕様表

SIGMA Art 85 1.4製品仕様一覧表(Lマウント用)

画角28.6度
レンズ構成12群14枚
最小絞りF16
最短撮影距離0.85m
フィルタ径86mm
全長150.2mm
最大径94.7mm
重量1215g
発売日2016年11月17日

その他のレンズ分析記事をお探しの方は、分析リストページをご参照ください。

以下の分析リストでは、記事索引が簡単です。

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