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【深層解説】 シグマ大口径中望遠レンズ SIGMA Art 85mm F1.4 DG HSM-分析009

この記事では、シグマの一眼レフカメラ用の交換レンズである大口径中望遠レンズ 85mm F1.4 DG HSMの歴史と供に設計性能を徹底分析します。

さて、写真やカメラが趣味の方でも、レンズの仕組みや性能の違いがよくわからないと感じませんか?

当ブログでは、光学エンジニアでいわゆるレンズのプロである私(高山仁)が、レンズの時代背景や特許情報から設計値を推定し、知られざる真の光学性能をやさしく紹介します。

当記事をお読みいただくと、あなたの人生におけるパートナーとなるような、究極の1本が見つかるかもしれません。

作例写真をお探しの方は、記事末尾にありますのでこのリンクで移動されると便利です。

レンズの概要

各社のマウントに対応した製品を販売する老舗レンズメーカーのひとつSIGMAは、2012年より「怒涛の超高性能Art」「超快速超望遠Sports」「小型万能なContemporary」と、わかりやすい3つのシリーズで製品を分類し構成しています。

その中でもArt(アート)シリーズは、超高性能を前提に金属部品を多用した高剛性、かつ端正なデザインの重厚長大なフラッグシップレンズです。

本項で紹介するSIGMA Art 85mm F1.4 DG HSMは、Artシリーズ開始時期しばらく経過した2016年に発売の製品となりますので、Artシリーズのコンセプトに対して完全にブレが無くなり、純粋に性能だけを追求するという真の狙いが具現化されたかのような、重厚な質感と高い解像性能を備えたレンズです。

焦点距離85mmの用途と言えば、当然ポートレート用レンズと察しますが、メーカー公式HPでのこのレンズの説明には「究極のポートレートレンズ」と自ら書き切っており、まさに高性能に対する強い自負を感じますね。

なおこのレンズは、各社マウントに対応した専用モデルがありますが、一眼レフカメラ用のマウントの製品はマウントアダプターを利用することで、ミラーレス一眼カメラにも使用できます。

文献調査

さて特許文献を調べると現代の製品なので関連すると思われる特許が簡単に見つかりました。断面図の雰囲気から特開2018-5099実施例4が製品に見た目で近いので設計値と仮定し、設計データを以下に再現してみます。

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。

設計値の推測と分析

性能評価の内容について簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

上図がSIGMA Art 85 F1.4の光路図です。

レンズの構成は12群14枚、最も撮像素子に近い最終レンズに非球面を配置することで球面収差と像面湾曲を同時に補正し、色収差を良好に補正するための特殊低分散材料も2枚配置しています。

まるで少し昔の半導体露光装置の光学系(ステッパー)のような恐ろしい見た目です…

空間の広く空いた部分で光学系を前後に分けて見ると、被写体側(左)にもダブルガウス型のような光学系があり、撮像素子側(右)にもダブルガウス型のような光学系が見てとれる形状をしています。

前後の2組のダブルガウス構造と言うことはダブルダブルガウス?クワッドガウス?と呼ぶべきなのでしょうか?

なお、ガウス!ガウス!と連呼してしまいましたが、何の事かと思われた方は以下のリンクにまとめてありますので、ぜひご参照いただきたいと思います。

関連記事:ダブルガウスレンズ 黎明期編

縦収差

球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

画面中心の解像度、ボケ味の指標である球面収差は、解説する意味も無いほどに、d線(黄色)は略直線の特性図です。

わずかにF線(水色)の軸上色収差が大きくも感じますが、もしかするとこれは私の再現データに問題があるのかもしれません。

光学系の特許に記載される実施例データは材料名が開示されていないので屈折率と分散の情報から推定していますが、ガラスメーカーごとに微妙に特性が異なるので真の材料はわかりませんし、一般公開されていない特注材料を使っていることもありえます。

特注材料まで使用されると完全に設計値を再現するのは難しくなります。

データの再現性が問題になったとき、色収差が最もずれやすくなります。

像面湾曲

画面全域の平坦度の指標の像面湾曲も、ここまで小さければ、ほぼ完全に収差が抑えられていると言えるレベルです。

歪曲収差

画面全域の歪みの指標の歪曲収差は、焦点距離的に歪曲収差は少ない仕様ですからほぼゼロです。

倍率色収差

画面全域の色にじみの指標の倍率色収差は、巧みなバランスで各色が全て平均的の小さくまとまるように補正されています。

横収差

左がタンジェンシャル方向、右がサジタル方向

画面内の代表ポイントでの光線の収束具合の指標の横収差を見てみましょう。

サジタル方向のハロはFno1.4の仕様を考えれば極小さく抑えられています。タンジェンシャル方向では中間の6mm像高ではわずかにハロ・コマ感はありますが、実用上十分なレベルで補正されているようです。

おススメの記事レンズのプロが教えるクリーニング方法

スポットダイアグラム

スポットスケール±0.3(標準)

ここからは光学シミュレーション結果となりますが、画面内の代表ポイントでの光線の実際の振る舞いを示すスポットダイアグラムから見てみましょう。

スポット形状は、中心から中間の像高12mm程度まではほぼ点で周辺の像高18mmを超えるとわずかにサジタルコマフレアの影響でV字感ありますので、夜景や星を撮影するなら半段程度絞る方が良いでしょう。

スポットスケール±0.1(詳細)

さらにスケールを変更し、拡大表示したスポットダイアグラムです。

MTF

開放絞りF1.4

最後に、画面内の代表ポイントでの解像性能を点数化したMTFによるシミュレーションの結果を確認してみましょう。

MTFは、開放Fno1.4の状態ですでに画面全域で十分に高い特性です。

さすがに像高21mmあたりでは少し像面湾曲がありますが、ほとんどの撮影用で問題無い領域です。

小絞りF4.0

FnoをF4まで絞り込んだ小絞りの状態でのMTFを確認しましょう。一般的には、絞り込むことで収差がカットされ解像度は改善します。

Fno4.0まで絞れば無収差と感じられる性能になります。

総評

かなりの重量ですが、そのデメリットを感じさせない超高性能レンズです。実写した画像を見ると開放Fnoから気持ち良い高い解像感にまさに感心します。

ポートレートレンズにはボケ味を重視する方も多いと思いますが、大口径特有の浅い被写界深度の中に高解像度な被写体が浮かぶように現れる様は新たな絶景とも言えるかもしれませんね。

さすがは公式サイトで「究極の」と書き切る性能、収差を楽しむこのブログとしては良すぎて書くことが無いのがやや辛いところです。

 

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以上でこのレンズの分析を終わりますが、今回の分析結果が妥当であったのか?ご自身の手で実際に撮影し検証されてはいかがでしょうか?

それでは最後に、あなたの生涯における運命の1本に出会えますことをお祈り申し上げます。

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作例・サンプルギャラリー

SIGMA 85 1.4の作例集となります。以下のサムネイル画像をクリックしますと拡大表示可能です。


当ブログで人気の「プロが教えるレンズクリーニング法」はこちらの記事です。

製品仕様表

SIGMA Art 85 1.4製品仕様一覧表(Lマウント用)

画角28.6度
レンズ構成12群14枚
最小絞りF16
最短撮影距離0.85m
フィルタ径86mm
全長150.2mm
最大径94.7mm
重量1215g
発売日2016年11月17日

その他のレンズ分析記事をお探しの方は、分析リストページをご参照ください。

以下の分析リストでは、記事索引が簡単です。

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