分析042 MINOLTA AF 85mm F1.4

ミノルタ AF 85mm F1.4の性能分析・レビュー記事です。

特許情報や実写の作例から光学系の設計値を推測し、シミュレーションによりレンズ性能を分析します。

世界でこのブログでしか読む事のできない特殊情報をお楽しみください。

作例写真は準備中です。

レンズの概要

世界初の本格的なオートフォーカス一眼レフカメラを開発したのはご存じMINOLTAで、α(アルファ)と名付けられたカメラシリーズです。これを言い換えますとMINOLTAのレンズは「世界初の本格的オートフォーカス対応レンズ」とも言えます。

  (当然なんですが…)

本項で取り上げるAF 85mm F1.4はαシリーズ用「世界初のオートフォーカス対応の大口径中望遠レンズ」となります。

 (またも、当然なんですが…)

まず、MINOLTAの85mm F1.4仕様レンズの系譜をたどってみますと、マニュアルフォーカス時代のROKKORレンズにはF1.4の大口径レンズはありませんでした。F1.7が最大口径だったようです。

1987年にF1.4の大口径レンズがいきなりのオートフォーカス対応で誕生し、以降の経緯は以下となります。

  1. AF85mmF1.4(1987)6群7枚
  2. AF85mmF1.4G(1993)6群7枚
  3. AF85mmF1.4G(D)(2000)6群7枚
  4. AF85mmF1.4G(D)Limited(2001)6群7枚
  5. SONY  Planar T*  85mm F1.4 ZA (2006)6群8枚

1985年から始まるMINOLTAのオートフォーカスカメラシステムA(α)マウントですが、カメラの発売から2年後となる1987年に初代AF85mm F1.4(無印)が発売されます。

その後、1993年の2代目レンズは、初代と同じ光学系ですがAF周りの構造が改良され「Gグレード」へ昇進しました。

さらに、距離エンコーダが搭載された2000年の3代目G(D)にも初代と同じ光学系が採用されました。

そして、MINOLTAからSONYへカメラ事業が譲渡される頃まで生産されていたようですので、おそよ20年に渡り生産・販売が続いたご長寿レンズであったと推測されます。

なお、2001年の4代目Limitedは700本しか生産されなかった限定レンズですが、これに関しては次回取り上げます。

まずは世界初のオートフォーカス対応85mm F1.4レンズを分析してみましょう。

私的回顧録

少々、レンズのフォーカス機構(ピント合せ)について説明します。

マニュアルフォーカス時代のピント合わせは「全群繰り出し方式」が主流でした。簡単に説明するとレンズ全体を被写体側へ繰り出す方式です。

  注:一部のレンズを除く

しかし、オートフォーカスの時代になりますと、新たな課題が発生します。それは全群繰り出し方式ではフォーカスレンズ群が重すぎてモーターなどで動かすのが困難な光学系があったのです。そして光学系には軽量化という新たな課題が生まれました。

なにしろ、中望遠の大口径レンズの重量は400グラムぐらいは普通にあります。この重いレンズを瞬時かつ超高精度に移動させることが求められるため、少しでも軽量化することが必要となったわけです。

今回取り上げるMINOLTAの85mm F1.4は冒頭に説明した通り、世界初のオートフォーカス対応レンズでありますが、最も重いフォーカスレンズ群の光学系であるとも推測されます。

望遠レンズは重過ぎるため一部のレンズだけ動かす「部分フォーカス」と言われる方式が早くから発案されていましたが、中望遠より短い焦点距離の場合はマニュアルフォーカスならばあまり問題にならない重量だったのです。

いかにしてこの重量の課題を克服したのか、レンズを分析することで究明してみましょう。

文献調査

MINOLTA 85mm F1.4の発売より前の時期の特許を調査すると2件の文献が存在することがわかります。

内心、都市伝説ではないかと思っていたのですが、この2件うちの1つが700本しか生産されなかったと言うLimitedレンズへ繋がるものと推測しています。  

製品発売日や性能から昭62-244010が本項のAF 85mm F1.4(無印)と推測されます。なお再現データを作ってみると実施例1は誤記か?印字(スキャン)不良か?私の複写ミスか?性能が少々おかしいので実施例2を設計データとして再現してみます。

 関連記事:特許の原文を参照する方法

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。

設計値の推測と分析

性能評価の内容などについて簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

上図がMINOLTA AF 85mm F1.4の光路図になります。

6群7枚構成、特殊レンズや非球面レンズの採用はありません。

オーソドックスな対称型ガウスタイプの撮像素子側へ一枚追加した構成のようです。

以前に紹介したマニュアルフォーカスのNIKON Ai 85mm F1.4Sは物体側(前)へレンズを追加していましたが、物体側にレンズを追加すると口径が大きいため重量が増してしまいます。

そのため口径が小さくて済む撮像素子側へレンズを追加し重量増加を抑制しつつ性能改善を試みているようです。

また、特許文献では第1レンズから第6レンズをフォーカス時に移動させると記載されており、最も撮像素子側の1枚はフォーカス時には固定にしているようです。

おそらくフォーカスレンズの重量を削減するための施策だったのでしょう。涙ぐましい努力が垣間見えます。

ちなみに、この重量の課題を根本的に打ち破る新しいフォーカス方式の中望遠として後年(1992年)発明されたのが伝説の名設計者が生み出したPENTAX FA ★85mm F1.4です。

縦収差

球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

球面収差は構成枚数の少なさに比例し、大きくマイナス側へふくらむフルコレクション型で軸上色収差も若干大きめです。

像面湾曲

像面湾曲は思ったよりも絶対値も小さく、タンジェンシャル方向とサジタル方向で差(アス)が少なく、平坦性の高そうな好印象を受けます。

歪曲収差

歪曲収差は若干マイナス側(樽形状)へ残しているものの撮影して気になるレベルではなさそうです。

倍率色収差

倍率色収差は構成枚数や時代性を考えても少々大きめです。開放で使う分には気にならないとは思いますが、小絞りにするとやや目立ちそうです。

このレンズを使う方は小絞りで使うなどと言う無粋な使い方はしないでしょうが…

横収差

左タンジェンシャル、右サジタル

球面収差の補正具合からサジタルコマフレアが甚大なのかと思いましたが、タンジェンシャル方向とバランスをそろえるように適度に抑えているようです。

タンジェンシャル方向のコマ収差(非対称)もかなり抑えられており、ピントの前後方向のどちらも自然なボケ味になるものと予想されます。またハロ(傾き)が均質なのでピント面の平坦性が高くなることもわかります。

正直な所、この横収差図を見るまでは「なんとかオートフォーカスさせるために無理やり小さな金枠へ押し込んだような設計」だろうと思い込んでいましたが、認識を改めさせられました。

このレンズを銘玉認定される方が多い理由を垣間見ました。

スポットダイアグラム

スポットスケール±0.3(標準)

少々スポットは大きいですが、d線(黄色)のまとまりは悪く無いようです。

スポットスケール±0.1(詳細)

ピントのはずれた部分のスポットを見ると、基準状態(ピント面位置)から収差が若干大きいこともありますが、ピントズレ領域でのスポットがかなり大きくなっており、ボケが大きく豊かになることがわかります。

MTF

開放絞りF1.4

開放FnoでのMTFを見てみますと、やはり山の高さはさほど無いものの、頂点の一致度は良好でピント面の平坦性が高いことがわかります。

小絞りF4.0

絞り込むと山の高さは十分上がるものの、周辺部はマイナス側へシフトするようです。

このレンズを使うような「粋を楽しむ方」が、こんなに絞り込むとは思えませんが。

総評

MINOLTA AF 85mm F1.4レンズは単に世界初のオートフォーカス対応だけでなく「画面全域のピントの平坦性」と「ボケ味」の双方にバランス点を見出そうという革新的レンズを目指していた事がわかりました。

長きに渡り市場で愛されるレンズには相応の理由があったわけですね。

冒頭から示唆しておりますLimitedについては、また後日分析記事を公開します。

作例・サンプルギャラリー

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製品仕様表

製品仕様一覧表MINOLTA AF 85mm F1.4

画角28.3度
レンズ構成6群7枚
最小絞りF22
最短撮影距離0.85m
フィルタ径72mm
全長134mm G(D)モデル
最大径84mm G(D)モデル
重量560g G(D)モデル
発売日1987年

他の製品分析記事をお探しの方は以下の目次ページをご参照ください。

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