レンズ分析

【レンズ性能評価】NIKON Ai Nikkor 50mm F1.2 -分析078

ニコン Ai ニッコール 50mm F1.2の性能分析・レビュー記事です。

レンズの仕組みやその性能は一体どう違うのか、具体的な違いがほとんどよくわかりませんよね。

雑誌やネットで調べても似たような「口コミ程度のおススメ情報」そんな記事ばかりではないでしょうか?

当ブログでは、レンズの歴史やその時代背景を調べながら、特許情報や実写作例を元にレンズの設計性能を推定し、シミュレーションによりレンズ性能を技術的な観点から詳細に分析します。

一般的には見ることのできない光路図や収差などの光学特性を、プロレンズデザイナー高山仁が丁寧に紐解き、レンズの味や描写性能について、深く優しく解説します。

あなたにとって、良いレンズ、悪いレンズ、銘玉、クセ玉、迷玉が見つかるかもしれません。

それでは、世界でこのブログでしか読む事のできない特殊情報をお楽しみください。

作例写真は準備中です。

レンズの概要

本レンズは、NIKON Nikkor Fマウントシリーズにおいて2000年代でも販売されるレンズでは最大口径比であるF1.2の超大口径レンズです。

まずは、Nikkor レンズの中でFnoがF1.2仕様の超大口径製品の系譜を確認してみましょう。

  • NIKKOR-S Auto 55mm F1.2 (1965)5群7枚
  • New Nikkor 55mm F1.2 (1975)5群7枚
  • Ai Noct Nikkor 58mm F1.2 (1977) 6群7枚
  • Ai Nikkor 50mm F1.2 (1978)6群7枚★当記事
  • NIKKOR Z 50mm F1.2 S (2020)15群17枚

 ※光学系が流用と思われる物は除いています。

マニュアルフォーカス時代、FnoがF1.2仕様のレンズが何度もリニューアルしながら発売されていました。

その後、オートフォーカスの時代となるとFマウントの構造的な問題からかF1.2のレンズ一時的に途絶えます。

時を経ること約40年後にZマウントでF1.2レンズが蘇ります。

当記事で紹介するAi Nikkor 50mm F1.2は1978年に開発されたものですが、Ai Nikkor 50mm F1.2Sにも流用され2019年ごろまで販売の続いた40年に渡る超ロングセラー製品です。


【PR】本レンズの関連製品も記載されているNIKON公式のレンズ解説本もご参照ください。

私的回顧録

当ブログは、2019年の末からテスト運用を開始し、本ドメインへ移行したのが2020年6月ごろでした。

2020年はコロナウィルス問題の発端の時期で、戦後初めての緊急事態宣言の発令と自粛生活の要請があった年です。

私も2020年に迎えた人生初の自粛生活を始めるにあたり、自己研鑽型の自粛を始めようと決心しました。

そこで始めたのが、Nikkorレンズのなかでも多くの種類がある焦点距離50mmレンズをまとめて分析するという大胆な企画です。

ちなみにNIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noctの特許資料発見の記念も兼ねておりました。

そして、当時の調査活動で分析することができたレンズは以下でした。

毎日のように続くダブルガウスタイプ光学系の分析に曜日の感覚も薄れ、精神を病む寸前となった記憶が蘇ります。

しかし、当時の分析時にはAi Nikkor 50mm F1.2の資料発見には至らず、分析対象として挙げていながら断念する結果となっていました。

この忸怩たる思いは消えず、その後も地味に調査を続けておりましたところ、関連文献を米国特許から発見し、今回分析の運びとなりました。

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文献調査

1970年代以前の日本の特許文献は一部しか電子化されていないこともあり、本レンズは1978年発売のため調査の難しい時期のレンズにあたります。

そこで米国の関連サイトを調査すると気になる資料を発見しました。

NIKONが権利化したUS3738736の米国特許です。
 ※Googleで検索すると本文が見られます。

その米国文献の書誌情報に記載された日本の出願番号を辿ることで、不思議とNIKONが日本で出願した特許の本文昭54-43386の情報を抽出することに成功しました。

ただし、悩むのはこの特許の出願時期は1970年と、本レンズの発売は1978年ですから少々時期が異なります。もしかすると開発が難航し、設計値のまとめ方を途中で変更したかもしれません。

しかしながら、7枚構成のダブルガウスタイプですから大きくは性能については大きく変わらないでしょう。

特許文献にはいくつかの設計値のバリエーションが実施例として記載されていますが、このなかで私の好みで軸上色収差が少なく、中心域の性能が良好な実施例3を製品化したと仮定し、設計データを以下に再現してみます。

 関連記事:特許の原文を参照する方法

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。


当記事を読み終えますとレンズを購入したくなる恐れがございますので、事前に防湿庫の増設を検討されることをおススメいたします。

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設計値の推測と分析

性能評価の内容などについて簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

上図がAi Nikkor 50mm F1.2Sの光路図になります。

構成は6群7枚、非球面レンズやEDガラスと言った現代では定番となった特殊な部品は採用されていません。

絞りを中心としてきついカーブをなした凹レンズが対称で配置され、その外側に凸レンズが並ぶ、対称型ダブルガウスタイプの撮像素子側へ1枚凸レンズを追加したタイプです。

画像左側となる被写体の第2レンズと第3レンズを貼り合わせていませんが、このようにわずかに間隔をあけた構造にすると、バックフォーカス長く確保しながらコマ収差を十分補正することができます。

この見た目は、1970年代以降のダブルガウスタイプに多く見られる「ガウスの終着点」と言える構成です。

縦収差

左から、球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

球面収差から見てみましょう、たった7枚のレンズで設計されたF1.2の超大口径レンズとは思えないレベルに補正されています。

わずかにマイナス側にふくらみを持ち、像面湾曲とのバランスも確保しています。

軸上色収差は、この時代のフィルムカメラ用途としては十分に補正されています。現代でも低価格なズームレンズでは同程度の収差量の物があるはずです。

像面湾曲

像面湾曲は中間部の像高12mm程度までは十分に補正されています。さすがに周辺の像高18mm以上ともなるとタンジェンシャル方向(破線)のズレが大きくなっています。

歪曲収差

歪曲収差は、対称型光学系の最大の恩恵で最大でも2%程度と現代のレンズとも引けを取らない数値です。

倍率色収差

倍率色収差はこの実施例は少々中心びいきだったこともあり、軸上色収差は良好ですが、対称型のわりには倍率色収差は多めです。

実施例1は逆で、軸上色収差が大きめで、逆に倍率色収差は小さめでした。

このような同じ設計条件でも収差のまとめ方が異なる様子も、今後改めて紹介したいとも思います。

横収差

タンジェンシャル、右サジタル

横収差として見てみましょう。

さすがは1970年代の超大口径だけあり、タンジェンシャル方向のハロ、サジタルコマフレアが盛大に量発生しています。

そもそも当時の人々もF1.2のレンズに解像度を期待したわけではなく、大口径レンズとはシャッタースピードをより速く切るためのレンズでした。

デジタルカメラの台頭と供にISO感度を自由に選べる現代、この大口径レンズの収差を味として楽しむのが現代の粋と言うものですね。


レンズが増えるとケースも必要ですよね。Amazonの格安ケースが手軽でおススメです。

スポットダイアグラム

スポットスケール±0.3(標準)

ここからは光学シミュレーション結果となりますが、最初にスポットダイアグラムから見てみましょう。

スポットダイアグラムではやはり画面中心は現代的レンズともあまりひけを取らない性能ですが、周辺部では形状がV字になっています。

サジタルコマフレアが大きいとこのようになるのですが、実際に星のような点光源を撮影するとこの形が写ります。ご注意ください。

スポットスケール±0.1(詳細)

さらにスケールを拡大した様子です。このスケールは、NIKONで言えばZマウントレンズのような現代的レンズの時、性能が高すぎて標準スケールでは差がわからないため準備しているものです。

この時代のレンズには厳しすぎる評価尺度ですね。

MTF

開放絞りF1.2

最後にMTFによるシミュレーションの結果を確認してみましょう。

MTFは画面の中心(青線)から中間(黄色)の像高12mmほどまではそれなりの山の形をしていますから、それなりの解像度は確保されています。

小絞りF4.0

F4まで絞り込みますとMTFが跳ね上がる様子がおわかりでしょうか?

このように絞りによる画質のコントロールを味わうためにこのようなレンズを使うわけですね。

総評

久しぶりのガウスレンズの分析はいかがだったでしょうか?

超大口径ダブルガウスレンズらしい、不思議な収差のまとまりに改めて関心させられますね。

執筆時現在(2022年)も流通量の多く、いわば新品も買えるオールドレンズです。

オールドレンズ遊びの手始めには最適な1本ではないでしょうか?

さて、次回の記事は、NIKON Zマウントレンズでミラーレス専用に新生されたZ 50mm F1.2の分析となります。

また、近い時代の同仕様レンズも過去に分析しておりますので、以下もご参照してはいかがでしょうか。

 関連記事:OLYMPUS Zuiko 50mm F1.2


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作例・サンプルギャラリー

Ai Nikkor 50mm F1.2Sの作例集は準備中です。


当ブログの作例製作時に参考にさせていただいてます、絶景を撮るための撮影ガイド本をまとめました。

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価格調査

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製品仕様表

製品仕様一覧表 NIKON Ai Nikkor 50mm F1.2S

画角46度
レンズ構成6群7枚
最小絞りF16
最短撮影距離0.5m
フィルタ径52mm
全長47.5mm
最大径68.5mm
重量360g
発売日1982年

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