レンズ分析

【レンズのプロが解説】 シグマ大口径広角レンズ SIGMA Art 28mm F1.4 DG HSM-分析012

シグマ Art 28 F1.4の性能分析・レビュー記事です。

さて、写真やカメラを趣味とされている方でも、レンズの仕組みや性能などの具体的な違いがよくわかりませんよね。

雑誌やネットで調べても、似たような「口コミ程度のおススメ情報」そんな情報ばかりではないでしょうか?

当ブログでは、レンズの歴史やその時代背景を調べながら、特許情報や実写作例を元にレンズの設計性能を推定し、シミュレーションによりレンズ性能を技術的な観点から詳細に分析しています。

一般的には見ることのできない光路図や収差などの光学特性を、プロレンズデザイナー高山仁が丁寧に紐解き、レンズの味や描写性能について、深く優しく解説します。

あなたにとって、良いレンズ、悪いレンズ、銘玉、クセ玉、迷玉が見つかるかもしれません。

それでは、世界でこのブログでしか読む事のできない特殊情報をお楽しみください。

作例写真は準備中です。

レンズの概要

SIGMAのArtレンズシリーズは、金属部品を多用した高品位な外観と、高い解像性能を兼ね備えるフラッグシップモデルです。

本項で紹介する24mm F1.4 DG HSM Artは大口径広角レンズでありながら極めて高い解像性能を誇るレンズです。

SIGMAが誇るArt大口径単焦点シリーズの現時点では広角側の最新レンズです。(2020年執筆現在)

このレンズは、SIGMAのHPにて「クラシカルな焦点距離」と表現されています。

確かに近年は焦点距離28mmの仕様を耳にする機会が少ない気がしますが、クラシカルとはいかがな真意なのでしょうか?

私が思うに近年ズームレンズの広角端は24mmからの製品が多くなったせいか28mmと言う数値を見かける機会が減っており、そのためクラシカルな印象を持たれるのではないかと思います。

また近年はボケ至上主義的な考え方が幅を利かせていますから焦点距離的にあまりボケるわけでも無いし、超広角レンズというほどでも無い、そのため特徴も出しづらく出番がめっきりと減っている事も影響しているかもしれません。

さて憶測はさておき、広角側のレンズとしては最後発のこのレンズの性能には期待がふくらみますね。

なおこのレンズは、各社マウントに対応した専用モデルがありますが、一眼レフカメラ用のマウントの製品はマウントアダプターを利用することで、ミラーレス一眼カメラにも使用できます。

私的回顧録

写真を始めた10代の頃に広角レンズの入り口として大変お世話になった焦点距離です。しばらくして私が初めて購入したズームも広角端は28mmだったと記憶しています。

そのせいか正直今でも24mmは難しく感じておりまして、昨今のズームレンズの広角端も28mmで良いのになぁ…といつも思う次第です。

さて、今回も「SIGMA 35mm F1.4 Art」の記事から引き続きArtシリーズの単焦点を分析します。

これは現代的な光学設計値の基準作り(ベンチマーク)を行うための取り組みの一環になります。SIGMAのArt単焦点レンズは「性能重視、大きさ度外視」という非常にわかりやすいコンセプトで設計されておりベンチマークの基準として扱いやすいというのが理由です。

望遠側の解析は前回の記事で135mmまでが完了しまして、ここから広角側へ移ります。

文献調査

さて特許文献を調べると現代の製品なので関連すると思われる特許が簡単に見つかりました。

詳細に見ますとHP記載の形状と異なるものの、特開2019-219472実施例4が形状的には最も近いようですので、これを設計値と仮定し、設計データを以下に再現してみます。

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。

 

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設計値の推測と分析

性能評価の内容について簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

上図がSIGMA Art 28 F1.4の光路図です。

12群17枚、非球面レンズは3枚も採用し、色収差を良好に補正するための特殊低分散材料も3枚配置しています。

非球面レンズを3枚も採用する単焦点レンズはなかなかありません。また、これまでこのブログで取り上げたレンズの中で最大枚数になります。

非球面も多くて、入力が面倒だった…しかも私が使用しているOPTALIXという解析ソフトの問題でしょうがて、謎の計算エラーでかなりの時間を費やしました。疲れた…

縦収差

球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

Artシリーズ自体、高性能を売りにしていますが、その中でも後発だけあって球面収差軸上色収差は十分に抑制されています。もはやコメントの必要性がありません。

像面湾曲 歪曲収差

もはや「気持ち悪い」と言われるレベルで歪曲収差が少ない…

この設計担当者は歪曲収差に何かトラウマがあったのでしょうか?

私なら歪曲収差をここまで補正するぐらいなら像面湾曲をもっと補正したいですが、像面湾曲も大きいと言われるほどの補正残りでもありませんから感性の違い程度の事です。

倍率色収差

倍率色収差も良好に補正されています。

歪曲収差の光の波長分のズレが倍率色収差とも言えますから歪曲収差を極めて良好にすることで倍率色収差を抑えたのかもしれませんね。

横収差

横収差として見てみましょう。

一般的に広角レンズほど像高ごとの特性変化が大きくなるので横収差は、”はしたない”感じになるのですが、極めて良好に補正されています。

非球面レンズを3枚も採用する意味がここにあるようです。


フィルムの供給も厳しい現代、フィルムスキャナーを安く買える時代も最後かもしれませんね。

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スポットダイアグラム

スポットスケール±0.3(標準)

ここからは光学シミュレーション結果となりますが、最初にスポットダイアグラムから見てみましょう。

横収差で見ての通り、サジタル・タンジェンシャル供にバランスよく補正されているようで、大口径レンズにありがちなサジタルフレアによるV字状のスポット形状にはならないようです。

スポットスケール±0.1(詳細)

こちらの図はより拡大した様子です。高性能だけに拡大してようやく特性がわかります。

画面の周辺部の像高18mmからより外側では少しC線(赤)のズレがあります。

MTF

開放絞りF1.4

最後にMTFによるシミュレーションの結果を確認してみましょう。

これまで解析したArtの望遠側レンズ同様に開放Fnoから高いMTFです。最周辺の像高21mmでは像面湾曲の影響がありますが、画面の隅での話ですから撮影で気になることはないでしょう。

小絞りF4.0

Fno4.0に絞ったMTFです。像面湾曲は改善しませんが、山の高さが上がるので写真自体の解像性能はさらに改善します。

総評

さすが、Art広角側の最新レンズだけあり極めて高性能でありました。

性能を追い求め「腰と膝」の許可があればこのレンズで決まりでしょう。

郷愁の28mm画角に最高性能が組み合わさるとどのような写真が取れるのか作例制作が楽しみです。

逆に設計の古い味のある焦点距離28mmとして過去にNIKONの下記のレンズを分析しておりますので比較してお楽しみください。

 関連記事:NIKON Ai AF Nikkor 28mm f/2.8D

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価格調査

SIGMA Art 28mm F1.4 の価格については、以下の有名通販サイトで最新情報をご確認ください。

マウントアダプターを利用することで最新のミラーレス一眼カメラでも使用できます。

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作例

SIGMA Art 28 1.4の作例は準備中となります。


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製品仕様表

SIGMA Art 28 1.4製品仕様一覧表(Lマウント用)

画角75.4度
レンズ構成12群17枚
最小絞りF16
最短撮影距離0.28m
フィルタ径77mm
全長131.7mm
最大径82.8mm
重量960g

その他のレンズ分析記事をお探しの方は、分析リストページをご参照ください。

以下の分析リストでは、記事索引が簡単です。

レンズ分析リスト

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