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【深層解説】 ニコン大口径超広角ズーム新旧の比較 NIKKOR 14-24mm f/2.8 前編 広角端-分析034

ニコンの大口径F2.8超広角ズームレンズの「Fマウント用ニッコール 14-24 F2.8」と、「Zマウント用ニッコールZ 14-24 F2.8」の広角端(14mm)での性能比較の記事です。

さて、写真やカメラが趣味の方でも、レンズの仕組みや性能の違いがよくわからないと感じませんか?

当ブログでは、光学エンジニアでいわゆるレンズのプロである私(高山仁)が、レンズの時代背景や特許情報から設計値を推定し、知られざる真の光学性能をやさしく紹介します。

当記事をお読みいただくと、あなたの人生におけるパートナーとなるような、究極の1本が見つかるかもしれません。

個別の分析記事については以下のリンク先をご参照ください。

レンズの概要

まず、今回の分析対象であるFマウント用NIKKOR 14-24は「F 14-24 F2.8」、Zマウント用NIKKOR 14-24は「Z 14-24 F2.8」と以下に記載いたします。

2018年Zマウントシステムを立ち上げたNIKONは、そこから約2年の歳月を経て大三元ズームと呼ばれる3本の大口径ズーム(F2.8)を市場へ導入しました。

Zマウントにおいても、いわゆるプロ御用達レンズをそろえることで、実質的に一眼レフカメラの終焉、ミラーレスカメラ本流の時代を明言したといえるでしょう。

当記事では、この2つのレンズの広角端の比較検証を行います。

それぞれのレンズの個別詳細分析については各ページをご覧ください。

私的回顧録

広角ズームレンズは、技術的には「非球面レンズ開発そのもの」と言えます。

なぜなら広角レンズは、より大きな非球面レンズを製造し、製品へ投入できれば性能がその分だけ良くなります。

製造技術の高いメーカーほど「より広角な仕様へ設計変更する」とか、「小型化する」とか、「高性能化する」などが可能になります。

先代のFマウント版のレンズは2007年の発売、新型Zマウントは2020年の発売となりました。

およそ13年の期間にどれだけ非球面の製造技術が進歩したのか?新旧製品を比較分析することで検証できるはずです。

さらに、着目すべきはZマウントはミラーレスマウントである点です。

一眼レフはミラーの配置スペースを確保するためにレンズと撮像素子の間に広い空間を確保する必要があります。

しかし、広角レンズとは「焦点距離が短いレンズ」とも言います。

焦点距離が短いレンズですから「全長が短い方が自然」なわけですが、一眼レフ用レンズはミラー用の広い空間を確保しなければならない(=長いレンズ にしたい)そんな矛盾が発生します。

この矛盾から一眼レフの広角レンズは性能改善が難しかった経緯があります。そして超広角ズームほどミラー空間の影響は甚大なはずです。

ついにミラーレスマウントではその束縛から解き放たれ自由な光学設計が可能となっているはずですが、この14-24の超広角レンズを分析することで自由な光学設計の恩恵を堪能できると思われます。

設計値の推測と分析

性能評価の内容などについて簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

上図の左側(青字)は旧レンズ F 14-24 F2.8、右側(赤字)は新レンズ Z14-24 F2.8の広角端での光路図になります。

通常の分析記事での光路図は枠いっぱいにレンズを描画していますが、今回は比較のため同スケール比で描画しています。

一目してわかるのは仕様的には同じレンズながら、新レンズであるNIKKOR Z 14-24 F2.8は圧倒的にサイズが小さいことがわかります。

また、新レンズZ 14-24 F2.8はミラーレス用のレンズであるため、旧レンズよりも撮像素子に近くなっていることがわかります。

赤色に着色している非球面レンズの配置を確認してみると、新レンズZ 14-24 F2.8では第1レンズに両面共に非球面のレンズを配置しています。

口径も巨大であり、かつ形状もかなりいびつなレンズでありますから、おそらく相当に加工も難しいのでしょう。

そんな非球面レンズを市場に流通させたわけですから、ここ十数年で確立した高い製造技術の賜物と想像されます。

なお、レンズのできるだけ被写体側に非球面レンズを配置すると像面湾曲と歪曲収差の補正に効果的です。

どちらの収差も広角レンズほど補正が困難な種類の収差です。

では、どのような補正効果があったのか以下に収差図を見てみます。

縦収差

左側(青字)は旧レンズ F 14-24 F2.8、右側(赤字)は新レンズ Z14-24 F2.8

球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

球面収差は新レンズZ 14-24 F2.8は旧レンズのおよそ半分ほどにまで補正されています。

軸上色収差も同様のレベルに補正されています。

像面湾曲

像面湾曲もおよそ半減といったレベルで改善されています。

歪曲収差

歪曲収差は意外なことに同レベルです。小型化を優先したのでしょうか?デジタル製品では歪曲収差は画像処理で修正しやすい収差ですから画像処理にまかせてあえて犠牲にしたのかもしれません。

これは個人的な趣味ですが、広角レンズは歪曲収差が残っている方が写真に広角レンズらしい雰囲気が出るため歪曲収差は少し残るのが好きでもあります。

倍率色収差

左側(青字)は旧レンズ F 14-24 F2.8、右側(赤字)は新レンズ Z14-24 F2.8

倍率色収差図を見ると、新レンズZ 14-24 F2.8はおよそ半減といったレベルで改善しています。

横収差

左側(青字)は旧レンズ F 14-24 F2.8、右側(赤字)は新レンズ Z14-24 F2.8

左タンジェンシャル、右サジタル

横収差として見てみましょう。

縦収差と同様に新レンズZ 14-24 F2.8は横収差も全域で改善していることがわかります。


最新フィルムカメラもどうでしょうか?

スポットダイアグラム

左側(青字)は旧レンズ F 14-24 F2.8、右側(赤字)は新レンズ Z14-24 F2.8

スポットスケール±0.3(標準)

ここからは光学シミュレーション結果となりますが、最初にスポットダイアグラムから見てみましょう。

双方供に標準スケールでは甲乙つけがたいレベルのスポットサイズの小ささです。

どちらが画面の中心側なのか、一瞬わからなくなりますね。

スポットスケール±0.1(詳細)

こちらはスケールを変更し拡大したスポットダイアグラムです。

旧レンズF 14-24 F2.8の方がスポットサイズ的にはわずかに小さく見えますが、色味的に視感度の高いC線(赤)は、新レンズの方が小さくまとまり改善しおり、新レンズZ 14-24 F2.8のg線(青)は一見すると大きくなったように見えますが、適度に拡散させてているので通常の実写では視感度の低いg線(青)を犠牲にし、C線(赤)が優位な方が解像度も向上し好ましいでしょう。

MTF

左側(青字)は旧レンズ F 14-24 F2.8、右側(赤字)は新レンズ Z14-24 F2.8

開放絞りF2.8

最後にMTFによるシミュレーションの結果を確認してみましょう。

右側の新レンズZ 14-24 F2.8は、超広角ズームレンズであることが信じ難いレベルで高い性能にまとまっています。

小絞りF4.0

新レンズZ 14-24 F2.8は開放から性能が高すぎて高いレベルの意味で小絞りでも性能が変わりませんね。

総評

新レンズZ 14-24 F2.8はかなりの小型化を達成しつつさらに一段の高性能化を実現する恐ろしいレンズであることがわかりました。

ミラーレスシステムの良い点を全て引き出しつつ、高次元の非球面レンズ製造技術によって達成できていることが伺えます。

実写が大変楽しみな1本です。

 

以上でこのレンズの分析を終わりますが、今回の分析結果が妥当であったのか?ご自身の手で実際に撮影し検証されてはいかがでしょうか?

それでは最後に、あなたの生涯における運命の1本に出会えますことをお祈り申し上げます。

LENS Review 高山仁

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Fマウントレンズもマウントアダプターを利用することで最新のミラーレス一眼カメラで使用することができます。

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作例・サンプルギャラリー

14-24 F2.8の作例は個別分析ページをご参照ください。


当ブログで人気の「プロが教えるレンズクリーニング法」はこちらの記事です。

製品仕様表

製品仕様一覧表 NIKKOR F 14-24 F2.8、Z 14-24 F2.8

F 14-24 F2.8Z 14-24 F2.8
画角114度114度
レンズ構成11群14枚11群16枚
最小絞りF22F22
最短撮影距離0.28m0.28m
フィルタ径--------
全長131.5mm124.5mm
最大径98mm88.5mm
重量970g650g
発売2007年2020年

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