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【深層解説】 ニコン大口径超広角ズーム新旧の比較 NIKKOR 14-24mm f/2.8 後編 望遠端-分析035

ニコンの大口径F2.8超広角ズームレンズの「Fマウント用ニッコール 14-24 F2.8」と、「Zマウント用ニッコール Z 14-24 F2.8」の望遠端(24mm)での性能比較の記事です。

さて、写真やカメラが趣味の方でも、レンズの仕組みや性能の違いがよくわからないと感じませんか?

当ブログでは、光学エンジニアでいわゆるレンズのプロである私(高山仁)が、レンズの時代背景や特許情報から設計値を推定し、知られざる真の光学性能をやさしく紹介します。

当記事をお読みいただくと、あなたの人生におけるパートナーとなるような、究極の1本が見つかるかもしれません。

個別の分析記事については以下のリンク先をご参照ください。

レンズの概要

旧レンズFマウント用NIKKOR 14-24は「F 14-24 F2.8」、新レンズZマウント用NIKKOR 14-24は「Z 14-24 F2.8」と以下に記載いたします。

前回の分析記事では、

  新旧比較 NIKKOR 14-24mm f/2.8 【前編 広角端】

として広角端側の比較分析を行いました。今回は14-24 F2.8の望遠端の性能比較記事となります。

設計値の推測と分析

性能評価の内容などについて簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

上図の左側(青字)は旧レンズ F 14-24 F2.8、右側(赤字)は新レンズ Z14-24 F2.8の広角端での光路図になります。

新レンズ Z14-24 F2.8は広角端の記事で触れた通り、全体としては小型化されたものの、最も被写体側にある巨大でいびつな大口径非球面レンズが目を引きます。

部屋で眺める場合は、旧レンズF 14-24 F2.8の張り出した出目金形状の第1レンズの方がニヤニヤ度は高いでしょうから難しい問題です。

 ※注:正しい使い方ではありません。

早速ですが、収差を見ていきましょう。

縦収差

左側(青字)は旧レンズ F 14-24 F2.8、右側(赤字)は新レンズ Z14-24 F2.8

球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

球面収差は、どちらも十分に補正されているようです。

軸上色収差は、旧レンズ F 14-24ではg線(青)を大きく曲げて軸上色収差の影響を高次の収差で緩和させていますが、新レンズでは収差自体を減らすことで素直な直線的形状にしています。

像面湾曲

像面湾曲は新レンズ Z 14-24 F2.8では末端から先端までの変化も緩やかでg線(青)やc線(赤)などの色成分も穏やかで十分な改善感を伺えます。

歪曲収差

歪曲収差は広角側と異なり、プラス側(糸巻き形状)の収差が残っており、新レンズ Z 14-24 F2.8の方が数値が大きいようです。

大きいと言っても最大で2%ほどなので目に付く量ではありませんが、おそらくデジタル時代の恩恵である画像処理で補正されてしまうので解像度の向上や小型化を優先したのではないでしょうか?

倍率色収差

左側(青字)は旧レンズ F 14-24 F2.8、右側(赤字)は新レンズ Z14-24 F2.8

倍率色収差を見ると、新レンズ Z 14-24 F2.8は若干のうねりを残しながらもg線(青)は半減し、c線(赤)に至ってはほぼゼロ近傍まで補正されています。

横収差

左側(青字)は旧レンズ F 14-24 F2.8、右側(赤字)は新レンズ Z14-24 F2.8

左タンジェンシャル、右サジタル

横収差は、新レンズ Z14-24 F2.8のタンジェンシャル方向のコマ収差、色のハロ成分共に改善されているのがわかります。

スポットダイアグラム

スポットスケール±0.3(標準)

左側(青字)は旧レンズ F 14-24 F2.8、右側(赤字)は新レンズ Z14-24 F2.8

ここからは光学シミュレーション結果となりますが、最初にスポットダイアグラムから見てみましょう。

新レンズ Z14-24 F2.8は中央6mmで若干g線(青)が大きくなったようにも見えますが、全体的にはスポットサイズが半減レベルで改善している様子がわかります。

スポットスケール±0.1(詳細)

こちらはスケールを変更し、拡大表示したスポットの様子です。

MTF

左側(青字)は旧レンズ F 14-24 F2.8、右側(赤字)は新レンズ Z14-24 F2.8

開放絞りF2.8

最後にMTFによるシミュレーションの結果を確認してみましょう。

光路図と同様に上段は旧レンズ F 14-24 F2.8、下段は新レンズ Z14-24 F2.8のMTF開放F2.8を記載しました。

新レンズ Z14-24 F2.8は、中心から中間12mmほどまではほぼ理想値レベルの山の高さと一致度です。

周辺18mmから隅21mmでは横収差におけるハロ(傾き)が影響されて山の位置(ピント)ずれています。しかし、残っている山の高さ的には旧レンズと同程度ですから劣ると言う意味合いではありません。

小絞りF4.0

光路図と同様に上段は旧レンズ F 14-24 F2.8、下段は新レンズ Z14-24 F2.8のMTF開放F4.0を記載しました。

新レンズ Z14-24 F2.8は、全体としては元の性能が高すぎて改善度がわかりません。これは良いレンズに共通する贅沢な悩みです…

少々ですが性能低下の様子のわかった中間18mmあたりがほぼ理想値レベルまで改善しています。

総評

広角ズームレンズであるため望遠端はおざなりな雰囲気かと思いきや、しっかりとした改善の度合いが見て取れます。

さらに超小型化され重量も半減に近い進化を遂げています。

「伝統の光学ファインダーを捨てミラーレス化した真価」と言えるこのレンズは「使わざる得ない」としか言いようがありませんね。

この記事の前夜にちょうどNIKONから新カメラZ7IIZ6IIの二機種がまさかの同時発表されました。

セットで使うのが本当に楽しみです。

 

以上でこのレンズの分析を終わりますが、今回の分析結果が妥当であったのか?ご自身の手で実際に撮影し検証されてはいかがでしょうか?

それでは最後に、あなたの生涯における運命の1本に出会えますことをお祈り申し上げます。

LENS Review 高山仁

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作例・サンプルギャラリー

作例は個別分析ページをご覧ください。


当ブログで人気の「プロが教えるレンズクリーニング法」はこちらの記事です。

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製品仕様表

製品仕様一覧表 NIKKOR F 14-24 F2.8、Z 14-24 F2.8

  F 14-24 F2.8 Z 14-24 F2.8
画角 84度 84度
レンズ構成 11群14枚 11群16枚
最小絞り F22 F22
最短撮影距離 0.28m 0.28m
フィルタ径 ---- ----
全長 131.5mm 124.5mm
最大径 98mm 88.5mm
重量 970g 650g
発売 2007年 2020年

記録メディアは、事故防止のため信頼性の高い物を使いましょう。

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