ペンタックス Qマウント用の交換レンズより、大口径標準レンズ 01 スタンダード プライムの性能分析・レビュー記事です。
さて、写真やカメラが趣味の方でも、レンズの仕組みや性能の違いがよくわからないと感じませんか?
当ブログでは、光学エンジニアでいわゆるレンズのプロである私(高山仁)が、レンズの時代背景や特許情報から設計値を推定し、知られざる真の光学性能をやさしく紹介します。
当記事をお読みいただくと、あなたの人生におけるパートナーとなるような、究極の1本が見つかるかもしれません。
作例写真は準備中です。
レンズの概要
PENTAX Qとは、2011年から発売されたQマウントを備えるレンズ交換式ミラーレスカメラシステムです。
まずは、カメラ本体のラインナップから紹介します。
カメララインナップ
PENTAX Qシリーズは、大きく分けると撮像素子の異なる2系統のモデルが存在します。
PENTAX Q系
2011年から発売された最初のシリーズで1/2.3インチ型の撮像素子を備えたカメラです。
様々なカラーバリエーションのモデルやコラボモデルなどが存在し、後継機にQ10があります。
PENTAX Q7系
2013年から発売、1/1.7インチ型の撮像素子へサイズアップした上位モデル。
オーダーカラーという選択式のカラーバリエーションサービスが存在し、パーツごとに好きな配色を選択でき、その組み合わせは120種にも至るそうです。
後にはQシリーズとしては最終モデルであるQ-S1を2014年に発売しました。
撮像素子(CMOSセンサー)
Qシリーズの撮像素子は、1/2.3インチ型と1/1.7インチ型の2種類で展開されていました。
このサイズの撮像素子は、当時の多くのコンパクトデジタルカメラに利用されていたものです。
撮像素子のサイズをフルサイズ(35mm版)と比較しました。

このような小型な電子撮像素子の名称は逆数表記なため、1/1.7型の方が撮像素子サイズとしては大きいことにご注意ください。
どちらもフルサイズに比較するとだいぶ小さいセンサーで、現在(2022年)ではスマートフォンのカメラ用に採用されている事が多いサイズです。
レンズラインナップ
全8本のレンズが存在しますが、ユニークレンズシリーズと高性能レンズシリーズの2系統に分かれています。
ユニークレンズシリーズ
| 製品名 | 焦点距離 | Fno | フルサイズ換算焦点距離 |
| 03 FISH EYE | 3.2mm | F5.6 | 15mm |
| 04 TOY LENS WIDE | 6.3mm | F7.1 | 29mm |
| 05 TOY LENS TELE | 18mm | F8.0 | 83mm |
| 07 MOUNT SHIELD LENS | 11.5mm | F9.0 | 53mm |
ユニークレンズとはFISH EYE(魚眼)やトイカメラ風など、遊び心のあるレンズをラインナップしています。
フルサイズ換算焦点距離はQ7系カメラの場合を記載しております。
高性能レンズシリーズ
| 製品名 | 焦点距離 | Fno | フルサイズ換算焦点距離 |
| 01 STANDARD PRIME当記事 | 8.5mm | F1.9 | 39mm |
| 02 STANDARD ZOOM | 5-15mm | F2.8-4.5 | 23-69mm |
| 06 TELEPHOTO ZOOM | 15-45mm | F2.8 | 69-206mm |
| 08 WIDE ZOOM | 3.8-5.9mm | F3.7-7.0 | 17-27mm |
高性能レンズシリーズとは、一般の安価なセット販売レンズよりも一段上の明るいFno仕様で、かつ高性能なレンズです。
今回の記事では、高性能レンズシリーズの中でも最大口径となる01 STANDARD PRIMEを分析します。
私的回顧録
『デジカメ黄金期』
デジタルカメラの販売台数の黄金期はコンパクトカメラが絶頂を極めた2008年ごろから踊り場に達し、2010年以降は衰退を始めます。
今回の記事で取り上げるPENTAX Qシリーズの生まれた2011年ごろは、カメラの売上は減少が見え始めたとはいえ、まだ膨大な台数が販売されておりました。
当時のカメラ市場としては、台数減あるもののコンパクト型からデジタル一眼レフへのシフトとも受け止められたので、まだ深刻さや悲壮感は無かったと思います。
ただし、各社ともにコンパクトカメラ依存からの脱却を図ろうとしたのか、実に様々な機種が生まれ淘汰された時期でもあり、思い起こせばカメラファンには楽しい時代でもありました。
PENTAX Qもそんなカメラのひとつでありましたが、時を同じく2011年あたりから始まった各社の代表的な製品を思い出してみましょう。
SONY Eマウント α NEXシリーズ
2010年、SONY Eマウントを初搭載したNEX-3が発売されています。この規格は当初APS-Cサイズの撮像素子用と思われましたが、後に機能を拡張しフルサイズ対応を果たしました。
NEXの名は廃止されてしましたが、Eマウント自体は存続し現在のSONYフルサイズミラーレス α7シリーズへ繋がります。
2022年現在の視点で見ると、最も成功した事例でしょうか。
NIKON 1シリーズ
2011年、NIKON初のミラーレスカメラ 1(ワン)シリーズの初代NIKON 1Vが発売されています。
マイクロフォーサーズよりもわずかに小さい特殊なサイズの撮像素子を採用し、像面位相差オートフォーカスを一早く採用することで当時のミラーレスカメラとしては高速なオートフォーカスを実現したカメラシステムでした。
本格的な交換レンズも10種類以上の販売されていましたが、その後に発売されたNIKONミラーレスZシリーズの誕生した2018年にひっそりとホームページから消えたそうです。
SAMSUNG NXシリーズ
2010年、韓国SAMSUNGからAPS-Cサイズの撮像素子を採用したミラーレスカメラが初めて発売されています。
ご存じない方が多いと思いますが、この時代のコンパクトカメラ世界市場を見ると、SAMSUNGのカメラは日系メーカーと比肩する規模で売れていました。
日本国内では国産品が安く、また性能的にも高いため、SAMSUNG製品はほとんど販売されていませんでしたから意外に思う方も多いでしょう。
しかし、海外の販売店の売り場を見ると、日系メーカーと遜色ない販売面積を占有していましたし、売り上げ的にも日系メーカーと並ぶ規模でした。
そして、SAMSUNGは、本格的なミラーレスカメラ市場での地位の確立に打って出たのですが、市場に受け入れられなかったようで2016年ごろにはカメラ事業から撤退したようです。
なお、2010年ごろのSAMSUNGはまさに「飛ぶ鳥を落とす勢い」で、日本にも大規模なカメラ関連の研究開発拠点を設立し、大量にヘッドハンティングを行い、私も何度かメールなどを受け取りました。
その後、数年で事業撤退しているわけですから「目先の金に釣られて行かなくて本当に良かった」と、時折ふと思い出します。
さて、そろそろ本題のPENTAX Q 01 STANDARD PRIMEの分析へ移りましょう。
文献調査
Wikipediaに記載されている情報によれば、Qシリーズのいくつかのレンズは日本電産コパルのOEMとも書かれています。
実際に当時のPENTAXの特許を調べると、01 STANDARD PRIMEと02 STANDARD ZOOMらしき文献は発見できました。
一方で、その他のレンズは発見に至らなかったので、後日コパルなどの調査も行いたいと思います。
さて、発見した特開2012-26248見るとこれは明らかに実施例1は01 STANDARD PRIMEと同じ構成を示しておりますので実施例1を製品化したと仮定し、設計データを以下に再現してみます。
関連記事:特許の原文を参照する方法
!注意事項!
以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。
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設計値の推測と分析
性能評価の内容などについて簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。
このレンズは、フルサイズに比較すると小さな撮像素子ですが、性能評価グラフのスケールをフルサイズと比較可能なように変更してあります。
もしも「フルサイズで同じ設計をしたらこうなる」という見方ができるようにしてあります。
Qシリーズのレンズは撮像素子の異なる2種類のカメラがあるため両方のカメラでの性能を確認できるようデータを作成しました。
以下の図では左側が1/2.3インチ型(Q系カメラ)、右側が1/1.7インチ型(Q7系カメラ)となります。
光路図

上図がPENTAX Q 01 STANDARD PRIMEの光路図になります。

