レンズ分析

【レンズのプロが解説】 シグマ大口径広角レンズ SIGMA Art 24mm F1.4 DG HSM-分析013

シグマ Art 24 F1.4の性能分析・レビュー記事です。

さて、写真やカメラが趣味の方でも、レンズの仕組みや性能などの具体的な違いがよくわからないと感じませんか?

雑誌やネットで調べても、似たような「口コミ程度のおススメ情報」そんな情報ばかりではないでしょうか?

当ブログでは、レンズの歴史やその時代背景を調べながら、特許情報や実写作例を元にレンズの設計性能を推定し、シミュレーションによりレンズ性能を技術的な観点から詳細に分析しています。

一般的には見ることのできない光路図や収差などの光学特性を、プロレンズデザイナー高山仁が丁寧に紐解き、レンズの味や描写性能について、深く優しく解説します。

あなたにとって、良いレンズ、悪いレンズ、銘玉、クセ玉、迷玉が見つかるかもしれません。

それでは、世界でこのブログでしか読む事のできない特殊情報をお楽しみください。

作例写真をお探しの方は、記事末尾にありますのでこのリンクで移動されると便利です。

レンズの概要

SIGMAのArtレンズシリーズは、金属部品を多用した高品位な外観と、高い解像性能を兼ね備えるフラッグシップモデルです。

本項で紹介する24mm F1.4 DG HSM Artは大口径広角レンズでありながら極めて高い解像性能を誇るレンズです。

この24mm F1.4は、SIGMAが誇るArt大口径単焦点シリーズの中で初期に開発された広角側レンズです。

Artシリーズの単焦点としては35mm→50mm→24mmの順で販売されているのでArt最初の広角レンズとも言えそうです。近年のズームレンズは広角端が24mmの物が多くなりましたが24mmと言う焦点距離はそれだけユーザーの人気があるということなのでしょうか?広角レンズとしては最初に商品化されている理由にもなりそうです。

なおこのレンズは、各社マウントに対応した専用モデルがありますが、一眼レフカメラ用のマウントの製品はマウントアダプターを利用することで、ミラーレス一眼カメラにも使用できます。

私的回顧録

焦点距離24mmと言うのは個人的には少々苦手ですが…

さて、今回も「SIGMA 35mm F1.4 Art」の記事から引き続きArtシリーズの単焦点を分析します。

これは現代的な光学設計値の基準作り(ベンチマーク)を行うための取り組みの一環になります。SIGMAのArt単焦点レンズは「性能重視、大きさ度外視」という非常にわかりやすいコンセプトで設計されておりベンチマークの基準として扱いやすいというのが理由です。

Artシリーズとしてはまだ分析していないレンズもありますが、次に20mmを分析して一度完了とし次のシリーズへ進みたいと考えています。

文献調査

さて特許文献を調べると現代の製品なので関連すると思われる特許が簡単に見つかりました。特開2016-12034の複数の実施例が製品の形状と似ていますが実施例1を設計値と仮定し、設計データを以下に再現してみます。

この特許文献のほとんどの実施例は、フローティングフォーカスと言う複数のレンズ群でピント合わせを行うタイプでした。製品のHPにはフローティングフォーカスとは記載されていませんでしたが、大多数の実施例がフローティングフォーカスなのでそちらを設計値としました。

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。

 

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設計値の推測と分析

性能評価の内容について簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

上図がSIGMA Art 24 F1.4の光路図です。

11群15枚、非球面レンズは2枚採用、色収差を良好に補正するための特殊低分散材料を7枚配置しています。

Fno1.4の大口径広角ですから一般的な焦点距離24mmのレンズとしては構成枚数が多いですが、Artシリーズの初期品のためか後発の28mmと比べると枚数や非球面が少なく、サイズもArtにしては小振りな印象です。

まだ性能全振り的な方向に迷いのあった時期だったのでしょうか?

縦収差

球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

Artレンズの初期品とは言え球面収差軸上色収差は十分に補正されているようです。

像面湾曲

像面湾曲は若干変動が大きいようです。やはりArtといえど広角レンズの像面湾曲を抑えるのには苦労している様子が滲みます。

歪曲収差

歪曲収差は若干のマイナス側の補正残りで樽型の歪曲となりますが、個人的には2.5%以下であれば気になることはありません。

倍率色収差

倍率色収差は、十分補正されているようですが、前回解析した28mmに比較すると像高の高い領域で変動が大きくなっています。

横収差

横収差として見てみましょう。

 一般的な広角大口径に比較すればだいぶ補正されてはいますがサジタル方向のフレアが大きいです。サジタルフレアは絞ると改善する収差なので個人的にはこの程度なら気にはしませんが、星などを撮る人は気になるでしょうね。


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スポットダイアグラム

スポットスケール±0.3(標準)

ここからは光学シミュレーション結果となりますが、最初にスポットダイアグラムから見てみましょう。

横収差でもわかりましたが、高い像高のサジタルフレアが影響しスポットが横方向に広がっています。

スポットスケール±0.1(詳細)

こちらはスケールを変更し拡大した様子です。

Artレンズと言えどさすがに広角レンズの最周辺部には若干の甘さが残るようですね。

重箱の隅の話ですが。

MTF

開放絞りF1.4

最後にMTFによるシミュレーションの結果を確認してみましょう。

像面湾曲の変動の通りで、画面周辺に向かってMTFが低下していくようです。Artレンズ同士で比較しなければわからないレベルの高性能ではあります。

小絞りF4.0

Fno4.0に絞ったMTFです。像面湾曲は改善しませんが、山の高さが上がるので写真自体の解像性能は理想値レベルに改善します。

総評

Artレンズでは初期シリーズの製品とは言え、実用上の差は感じられない極めて高い解像感のレンズです。発売から少し時間も経ちましたから値段もだいぶこなれています。

しかし、あまりに高い解像度に目が痛くなりそうなレベルで、一度使うともう標準ズームレンズの広角端では満足できないカラダにされてしまうかもしれません。要注意のうえご利用ください。

他の類似仕様のレンズ分析記事はこちらです。

 関連記事:SONY FE 24mm F1.4 GM

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価格調査

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作例・サンプルギャラリー

SIGMA Art 24mm F1.4の作例集となります。以下のサムネイル画像をクリックしますと拡大表示可能です。署名の下に撮影条件を記載しております。


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製品仕様表

SIGMA Art 20 1.4製品仕様一覧表(Lマウント用)

画角84.1度
レンズ構成11群15枚
最小絞りF16
最短撮影距離0.25m
フィルタ径77mm
全長114.2mm
最大径85.4mm
重量755g

その他のレンズ分析記事をお探しの方は、分析リストページをご参照ください。

以下の分析リストでは、記事索引が簡単です。

レンズ分析リスト

レンズ分析記事の製品別の目次リンク集です。
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