この記事では、シグマの一眼レフカメラ用の交換レンズである大口径広角レンズ 24mm F1.4 DG HSMの歴史と供に設計性能を徹底分析します。
さて、写真やカメラが趣味の方でも、レンズの仕組みや性能の違いがよくわからないと感じませんか?
当ブログでは、光学エンジニアでいわゆるレンズのプロである私(高山仁)が、レンズの時代背景や特許情報から設計値を推定し、知られざる真の光学性能をやさしく紹介します。
当記事をお読みいただくと、あなた人生のパートナーとなるような、究極の1本が見つかるかもしれません。
作例写真をお探しの方は、記事末尾にありますのでこのリンクで移動されると便利です。
レンズの概要
各社のマウントに対応した製品を販売する老舗レンズメーカーのひとつSIGMAは、2012年より「怒涛の超高性能Art」「超快速超望遠Sports」「小型万能なContemporary」と、わかりやすい3つのシリーズで製品を分類し構成しています。
その中でもArt(アート)シリーズは、超高性能を前提に金属部品を多用した高剛性、かつ端正なデザインの重厚長大なフラッグシップレンズです。
本項で紹介する24mm F1.4 DG HSM Artは大口径広角レンズでありながら極めて高い解像性能を誇るレンズです。
この24mm F1.4は、SIGMAが誇るArt大口径単焦点シリーズの中で初期に開発された広角側レンズです。
Artシリーズの単焦点は35mm→50mm→24mmの順で販売されているので、Art最初の本格広角レンズとも言えそうです。
近年のズームレンズは広角端が24mmの物が多くなりましたし、スマートフォンの光学系も広角化が進み24mmあたりが一般的となりました。
近代の標準レンズの焦点距離は、実は24mmなのではないか?そんな疑惑も生まれます。
それでは人類史上最も人気のある焦点距離と言っても過言では無い24mmの大口径レンズをしっかりと分析して参りましょう。
なおこのレンズは、各社マウントに対応した専用モデルがありますが、一眼レフカメラ用のマウントの製品はマウントアダプターを利用することで、ミラーレス一眼カメラにも使用できます。
文献調査
さて特許文献を調べると現代の製品なので関連すると思われる特許が簡単に見つかりました。特開2016-12034の複数の実施例が製品の形状と似ていますが実施例1を設計値と仮定し、設計データを以下に再現してみます。
この特許文献のほとんどの実施例は、フローティングフォーカスと言う複数のレンズ群でピント合わせを行うタイプでした。
製品のHPにはフローティングフォーカスとは記載されていませんでしたが、大多数の実施例がフローティングフォーカスなのでそちらを設計値としました。
!注意事項!
以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。
恥ずかしい話ですが、マンションの壁をカビさせたことがありますが、防湿庫のカメラは無事でした。
設計値の推測と分析
性能評価の内容について簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。
光路図
上図がSIGMA Art 24 F1.4の光路図です。
レンズの構成は11群15枚、非球面レンズは2枚採用、色収差を良好に補正するための特殊低分散材料を7枚配置しています。
Fno1.4の大口径広角ですから一般的な焦点距離24mmのレンズとしては構成枚数が多いですが、Artシリーズの初期品のためか後発の28mmと比べると枚数や非球面が少なく、サイズもArtにしては小振りな印象です。
まだ性能全振り的な方向に迷いのあった時期だったのでしょうか?
それでは、このレンズの光学性能をさらに詳しく分析して参りましょう。