レンズ分析

【レンズ性能評価】NIKON Ai AF Zoom-Nikkor 35-70mm F2.8 -分析071

ニコン ズームニッコール 35-70mm F2.8Sの性能分析・レビュー記事です。

レンズの仕組みやその性能は一体どう違うのか、具体的な違いがほとんどよくわかりませんよね。

雑誌やネットで調べても似たような「口コミ程度のおススメ情報」そんな記事ばかりではないでしょうか?

当ブログでは、レンズの歴史やその時代背景を調べながら、特許情報や実写作例を元にレンズの設計性能を推定し、シミュレーションによりレンズ性能を技術的な観点から詳細に分析します。

一般的には見ることのできない光路図や収差などの光学特性を、プロレンズデザイナー高山仁が丁寧に紐解き、レンズの味や描写性能について、深く優しく解説します。

あなたにとって、良いレンズ、悪いレンズ、銘玉、クセ玉、迷玉が見つかるかもしれません。

それでは、世界でこのブログでしか読む事のできない特殊情報をお楽しみください。

作例写真は準備中です。

レンズの概要

当記事で紹介するNikkor 35-70mm F2.8は、FnoがF2.8の大口径標準ズームとしてNIKONで最初に発売されたレンズです。

NIKONにおけるズームレンズは、Zoom-NIKKOR Auto 43-86mm F3.5が国産初の標準ズームとして1963年に発売されています。

そして、高変倍化(高ズーム化)と大口径化が進められ、1987年にズーム全域でF2.8の大口径でありながら利便性の高い焦点距離35-70mmの仕様を達成した当記事のNikkor 37-70mm F2.8が発売となりました。

その後はご存じの通り、F2.8標準ズームレンズはプロ御用達とか王道レンズとまで言われる不動のエース的存在へと成長しました。

改めてNIKONにおけるF2.8標準ズームレンズの系譜を確認してみましょう。

 ※光学系を流用している製品は除きます。

なお、カメラ本体の方から見てみますと、当記事のNikkor 35-70mm F2.8の発売時期である1987年は、NIKON F3の時代でした。

名機NIKON F3は1980年の発売で、本レンズが発売となった翌年の1988年にNIKON F4が発売されています。

私的回顧録

『正か負か』

レンズとは、大雑把に分類すると2種しかありません。

それは「正レンズと負レンズ」です。

「正レンズ」とは、いわゆる凸レンズの事で、光を集光する作用を持ちます。

凸(正)レンズの光路図

身近な例としては虫眼鏡がその正レンズに相当します。

小学校時代に太陽光を集める実験をした方も多いのではないでしょうか?また、レンズ(虫眼鏡)を通して眺めると物が拡大されて見えることはどなたも体感的にご存じでしょう。

一方の「負レンズ」とは、いわゆる凹レンズの事で、光を拡散する作用を持っています。

凹(負)レンズの光路図

身近な例としては近視用の眼鏡がその負レンズに相当します。

負レンズは名前の通り、正レンズとは逆の作用を持つので、眼鏡かけている方の瞳を見ると縮小されて見えます。

世の男子に発生する珍妙な現象のひとつに「眼鏡を外した女子が急にかわいらしく見える」現象があることをご存じでしょうか?

この現象は、レンズ(眼鏡)を通して見ている女子の瞳(虚像)は、実際の瞳(実像)より小さく見えているため、眼鏡を外すことで通常時よりも相対的に女子の瞳が大きく見えるため、結果的に「眼鏡を外すと可愛い」と感じるのです。

物理的に正しい作用の結果ですね。ちなみに物理現象としては男子でも同様の効果を発揮しますが、同様の効能を聞いた記憶がありません…

また、この説明のようにレンズを通して見た世界を「虚像」と言ったり、あるいは「見かけの像」と表現すると業界人ぽい感じがするかもしれませんね。(あまり使い道が思いつきませんが)

しかしながら、女子の眼鏡姿を愛する方も多いらしいので「現実」とは難しいものです。

さて、正レンズを英語では「Positive Lens(ポジティブレンズ)」と表現し、負レンズを「Negative Lens(ネガティブレンズ)」と表現します。

そのため、光学設計者は「アイツは、負レンズ先行タイプばかり設計する陰湿(ネガティブ)な野郎だ」などと不気味な陰口を叩き合います。レンズの物理特性で人格を占う奇妙な人種と言えるでしょう。

なお、当ブログでは基本的には正レンズや負レンズとは表現しません。初見の方にわかりやすいように凸レンズ/凹レンズと表現するようにしております。

今回の「正か負か」はくだらない雑談のようですが、次回以降へ続く布石となっています。

さて、本題のレンズ分析へまいりましょう。

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文献調査

当記事で分析するNikkor 35-70mm F2.8はそこそこに古い製品ですが、NIKON自身が過去のレンズを回顧する「ニッコール千夜一夜物語」でも特集され、設計者のお名前まで公開されておりますので無事に特許文献を発見できました。

さて懸案の特開昭63-241511の実施例をつぶさに観察しますと実施例3が最も近い形状をしております、これを製品化したと仮定し、設計データを以下に再現してみます。

 関連記事:特許の原文を参照する方法

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。


当記事を読み終えますとレンズを購入したくなる恐れがございますので、事前に防湿庫の増設を検討されることをおススメいたします。

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設計値の推測と分析

性能評価の内容などについて簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

NIKON Ai AF Zoom-Nikkor 35-70mm F2.8 光路図 構成図

上図がNIKON Zoom-Nikkor 35-70mm F2.8の光路図になります。

本レンズは、ズームレンズのため各種特性を広角端と望遠端で左右に並べ表記しております。

左図(青字Wide)は広角端で焦点距離35mmの状態、右図(赤字Tele)は望遠端で焦点距離70mmの状態です。

英語では広角レンズを「Wide angle lens」と表記するため、当ブログの図ではズームの広角端をWide(ワイド)と表記しています。

一方の望遠レンズは「Telephoto lens」と表記するため、ズームの望遠端をTele(テレ)と表記します。

レンズの構成は12群15枚、非球面レンズなどは採用されていません。

レンズの中央部の第5,6,7レンズによる3枚貼合わせレンズが非常に力強い印象を与えますね。

続いて、ズームに関する構成を確認するために、縦に並べて補助線を記載しました。

上図では広角端(Wide)を上段に、望遠端(Tele)を下段に記載し、ズーム時のレンズの移動の様子を破線の矢印で示しています。

ズーム構成を確認しますと、レンズは4ユニット(UNIT)構成となっています。

第1ユニットは、広角端では物体側へ飛び出していますが、望遠端へズームさせると撮像素子側へ移動しますからレンズ鏡筒としては引っ込むようになります。

第1ユニット全体として凹(負)の焦点距離(拡散レンズ)の構成となっていますが、これを凹(負)群先行型など表現します。

この凹(負)群先行型は、一眼レフの標準ズームレンズや広角ズームレンズに多い構成です。

第2ユニットと第4ユニットは、広角端から望遠端へズームのさいにそれぞれ同じ移動量分だけ被写体側へ移動しています。この2つのユニットは内部では連結されて一体で動作するのかもしれませんね。

第3ユニットは、広角端から望遠端へズームのさい位置が変わらず固定となっています。絞りも一体のようです。

縦収差

左から、球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

左図(青字Wide)は広角端で焦点距離35mmの状態、右図(赤字Tele)は望遠端で焦点距離70mmの状態

NIKON Ai AF Zoom-Nikkor 35-70mm F2.8 縦収差

球面収差 軸上色収差

球面収差から見てみましょう、広角端も望遠端も球面収差としては十分に補正されているようです。

軸上色収差は、望遠端では少々苦しい状態です。色収差に効果的なEDレンズなどを採用していないためでしょうか。だいぶ年代を感じますが、80年代のF2.8ズームとしては特に悪いレベルではありません。

像面湾曲

像面湾曲は広角端ではかなり健闘しているようですが、望遠端では大きくマイナス側へ倒れています。横収差でのハロ(傾き)とバランスを取っているためでしょう。

歪曲収差

歪曲収差は広角端ではマイナス側へ最大約3%これは写真としては樽型、望遠端ではプラス側へ最大約3%これは写真としては糸巻き型になります。

一般的な単焦点レンズからすると少々大き目ですが、ズームレンズとしては標準的なレベルでしょう。

倍率色収差

左図(青字Wide)は広角端で焦点距離35mmの状態、右図(赤字Tele)は望遠端で焦点距離70mmの状態

NIKON Ai AF Zoom-Nikkor 35-70mm F2.8 倍率色収差

倍率色収差は広角端では変動が大きくなっていますが、画面隅の像高21mmあたりのg線(青)を犠牲にし大きく飛ばすことで、画面中心から周辺の像高18mmまではなんとか実用性のあるレベルに抑えています。

望遠端は驚くほど小さくまとまっていますね。

横収差

左図(青字Wide)は広角端で焦点距離35mmの状態、右図(赤字Tele)は望遠端で焦点距離70mmの状態

タンジェンシャル、右サジタル

NIKON Ai AF Zoom-Nikkor 35-70mm F2.8 横収差

横収差として見てみましょう。

広角端は倍率色収差の影響でタンジェンシャル方向の色のズレがあるもののコマ収差やハロは少なく好印象です。

望遠端はタンジェンシャル方向のコマ収差が画面中央部の像高6mm程度から発生しており、かなり味のある描写であることが伺えます。


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スポットダイアグラム

左図(青字Wide)は広角端で焦点距離35mmの状態、右図(赤字Tele)は望遠端で焦点距離70mmの状態

スポットスケール±0.3(標準)

NIKON Ai AF Zoom-Nikkor 35-70mm F2.8 スポットダイアグラム 標準スケール

ここからは光学シミュレーション結果となりますが、最初にスポットダイアグラムから見てみましょう。

広角端は開放Fnoの状態では、思ったほどの色のズレ感がありませんね。しかし、小絞りにするとかなり目立ってきそうな雰囲気です。

望遠端は、点が広く散らばっている様子が確認できます。

スポットスケール±0.1(詳細)

NIKON Ai AF Zoom-Nikkor 35-70mm F2.8 スポットダイアグラム 拡大スケール

こちらの拡大スケールによる表示は現代的な超高性能レンズ向けに用意しているので、この時代のレンズには少々厳しいシミュレーション条件でした。

MTF

左図(青字Wide)は広角端で焦点距離35mmの状態、右図(赤字Tele)は望遠端で焦点距離70mmの状態

開放絞りF2.8

NIKON Ai AF Zoom-Nikkor 35-70mm F2.8 MTF 開放絞りF2.8

最後にMTFによるシミュレーションの結果を確認してみましょう。

広角端は画面中心から周辺の像高18mmあたりまでは十分現代のレンズとの比較が可能なレベルです。

望遠端は周辺部はコマ収差の影響で山の低下はありますが、山の位置の一致度が高く、結果として実用上十分な性能はありそうです。

望遠端に関してはポートレートで使用すると、周辺部の収差の影響でボケがより一層柔らかになり現代のF2.8レンズとは一風違った描写を楽しめるのではないでしょうか?

小絞りF4.0

NIKON Ai AF Zoom-Nikkor 35-70mm F2.8 MTF 小絞りF4.0

総評

80年代に登場したNIKON最初のF2.8標準ズーム「Ai AF Zoom-Nikkor 35-70mm F2.8」の分析はお楽しみいただけたでしょうか。

現代の視点で見ますと少々大味な感もありますが、時代性を考慮するとさすがはプロ向けとして開発されたレンズであり実用性という観点では十分な性能があることに驚きますね。

入れ替わりの激しい標準ズームですが、このレンズの後継機が10年間も発売されなかったことからも仕上がりの良さを感じさせます。

さて、この古典的ズームレンズを元に様々なズームレンズの分析にも乗り出してみたいと思います。


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作例・サンプルギャラリー

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製品仕様表

製品仕様一覧表 AF Zoom-Nikkor 35-70mm F2.8

画角62-34.2度
レンズ構成12群15枚
最小絞りF22
最短撮影距離0.6m
フィルタ径62mm
全長94.5mm
最大径71.5mm
重量---
発売日1987年12月

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