レンズ分析

【レンズ性能評価】NIKON Ai AF Zoom-Nikkor 28-70mm F2.8D IF -分析072

ニコン ズーム ニッコール 28-70mm F2.8の性能分析・レビュー記事です。

レンズの仕組みやその性能は一体どう違うのか、具体的な違いがほとんどよくわかりませんよね。

雑誌やネットで調べても似たような「口コミ程度のおススメ情報」そんな記事ばかりではないでしょうか?

当ブログでは、レンズの歴史やその時代背景を調べながら、特許情報や実写作例を元にレンズの設計性能を推定し、シミュレーションによりレンズ性能を技術的な観点から詳細に分析します。

一般的には見ることのできない光路図や収差などの光学特性を、プロレンズデザイナー高山仁が丁寧に紐解き、レンズの味や描写性能について、深く優しく解説します。

世界でこのブログでしか読む事のできない特殊情報をお楽しみください。

作例写真は準備中です。

レンズの概要

当記事で紹介するNikkor 28-70mm F2.8は、FnoがF2.8の大口径標準ズームの2代目として発売されたレンズです。

NIKONにおけるF2.8標準ズームレンズは、1987年に初代である35-70mm F2.8が発売され前回の記事でご紹介しました。

 関連記事:Ai AF Zoom-Nikkor 35-70mm F2.8

まずは、NIKONにおけるF2.8標準ズームレンズの系譜を確認してみましょう。

 ※光学系を流用している製品は除きます。

今回紹介する2代目F2.8標準は初代の発売から10年以上経過した1999年に発売されました。

この際、光学系の仕様は焦点距離域が35-70mmから28-70mmと広角側の仕様が拡張されました。

この広角側の焦点距離の変化は「わずか7mm」と言えばそれまでですが、「レンズとしては1本分広い仕様」とも言い換えられます。

その焦点距離28-70mmの仕様は、現代でも同仕様のレンズが多いため使い勝手の良さは皆様がよく知るところの仕様でしょう。

入れ替わりの激しい標準ズームレンズですが、リニューアルまでに10年以上もの時が必要であった理由はどのようなものだったのでしょうか、では分析したいと思います。

私的回顧録

『正か負か その2』

前回記事のこの欄で、凸レンズ(正レンズ)と凹レンズ(負レンズ)の紹介をしました。

また、当記事でも紹介する一般的なズームレンズは、レンズの内部をいくつかに分割(ユニット化)し、間隔を変えることで焦点距離を変化させます。これをズームと称します。

この時、数枚のレンズで構成されている各ユニットごとに「凸レンズユニット(正群)」となるもの「凹レンズユニット(負群)」となる物に分類されます。

前回分析したZoom-Nikkor 35-70mm F2.8のズーム構成図を元に見て見ましょう。

このレンズは4つのユニット(UNIT)で構成されており各ユニットは
 第1ユニット:凹レンズ(拡散)
 第2ユニット:凸レンズ(集光)
 第3ユニット:凹レンズ(拡散)
 第4ユニット:凸レンズ(集光)
となっています。

ズームレンズを大別しますと、第1ユニットが”凹”となる物を負群先行型と言い一般に「広角ズームレンズ」に利用されます。

一方で、第1ユニットが凸となる物は正群先行型と言い一般に「望遠ズームレンズ」に利用されます。

では、広角と望遠の中間である「標準ズーム」の第1レンズ群は凹なのか?凸なのか?さて、どちらになるのでしょうか?

正解ですが、標準ズームは「第1ユニットを凹とした負先行型が多い」となります。

まず、第1ユニットを凸とした正先行型は、全長を短くするのに効果的ですが、一般的に部品構成が多くなります。上図の例のさらに被写体側に凸レンズユニットが増えるような構成となるためです。

一方、第1ユニットを凹とした負先行型は、凹レンズ(=拡散効果)から始まるためレンズの全長が長くなります。

ミラーの有る一眼レフカメラは、ファインダーへ光を導くミラーを配置するための長いバックフォーカスが必要ですが、負先行型の「長さ」がこれに好適となるためです。

ただし、各社様々な構造としていますから「比率的として標準ズームは負先行型が多い」とご記憶していただきたいと思います。

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文献調査

製品の発売は1999年ですから文献の調査は楽な部類です。特許文献の検索結果より特開2000-221399を製品化したと仮定し、設計データを以下に再現してみます。

 関連記事:特許の原文を参照する方法

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。

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設計値の推測と分析

性能評価の内容などについて簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

上図がNIKON Ai AF Zoom-Nikkor 28-70mm F2.8の光路図になります。

本レンズは、ズームレンズのため各種特性を広角端と望遠端で左右に並べ表記しております。

左図(青字Wide)は広角端で焦点距離28mmの状態、右図(赤字Tele)は望遠端で焦点距離70mmの状態です。

英語では広角レンズを「Wide angle lens」と表記するため、当ブログの図ではズームの広角端をWide(ワイド)と表記しています。

一方の望遠レンズは「Telephoto lens」と表記するため、ズームの望遠端をTele(テレ)と表記します。

レンズの構成は11群15枚、第1レンズは像面湾曲に効果的な非球面レンズであり、色収差の補正に好適なEDガラスを第13レンズと第14レンズの2枚採用しているようです。

先代のNikkor 35-70mm F2.8より、広角端側を28mmまで拡張しておりますが、レンズの枚数増加は、わずか2枚に留まり、新たに非球面レンズやEDガラスを採用することで収差を良好に補正しているようです。

続いてズーム構成について以下に図示しました。

上図では広角端(Wide)を上段に、望遠端(Tele)を下段に記載し、ズーム時のレンズの移動の様子を破線の矢印で示しています。

ズーム構成を確認しますと、レンズは4ユニット(UNIT)構成となっています。

第1ユニットは、広角端では物体側へ飛び出していますが、望遠端へズームさせると撮像素子側へ移動しますからレンズ鏡筒としては引っ込むようになります。

第1ユニット全体として凹(負)の焦点距離(拡散レンズ)の構成となっていますが、これを凹(負)群先行型と表現します。

この凹(負)群先行型は、一眼レフの標準ズームレンズや広角ズームレンズに多い構成です。

第2ユニットから第4ユニットは、広角端から望遠端へズームのさいに各々が被写体側へ移動しています。

先代の35-70mm F2.8では第3ユニットは固定、第2及び第3ユニットは同量の移動としていたのに比較するとより複雑な移動構成となっており、仕様の向上分を補助していることを伺えます。

縦収差

左図(青字Wide)は広角端で焦点距離35mmの状態、右図(赤字Tele)は望遠端で焦点距離70mmの状態

左から、球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

球面収差から見てみましょう、先代レンズと同じく綺麗に補正されており、広角端と望遠端の差も少ないようです。

軸上色収差はEDガラスを採用の効果で、先代35-70 F2.8と比較すると半減程度まで改善していますが、g線(青)の上端側を見るとプラス側に大き目に倒れているので現代的なレンズに比較すると一段劣るようです。

像面湾曲

像面湾曲は、広角端の仕様を広げながら収差量は先代35-70mm程度に維持し、望遠端でのマイナス側の倒れが抑制されており非球面レンズの効果を感じます。

歪曲収差

歪曲収差も像面湾曲と同様の傾向で、広角端の仕様を広げながら収差量は先代35-70mm程度に維持し、望遠端はプラス側の糸巻き型をより低減させているようです。

倍率色収差

左図(青字Wide)は広角端で焦点距離35mmの状態、右図(赤字Tele)は望遠端で焦点距離70mmの状態

倍率色収差は、先代の望遠端が良すぎたこともあり、本レンズでは広角端側はわずかに改善し望遠端とのバランスが取れているように見えます。

横収差

左図(青字Wide)は広角端で焦点距離35mmの状態、右図(赤字Tele)は望遠端で焦点距離70mmの状態

タンジェンシャル、右サジタル

横収差として見てみましょう。

広角端のタンジェンシャル方向のコマ収差は先代に劣らず優秀ですが、望遠端の大き目に残っていたタンジェンシャル方向のハロは少々改善させてきています。

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スポットダイアグラム

左図(青字Wide)は広角端で焦点距離35mmの状態、右図(赤字Tele)は望遠端で焦点距離70mmの状態

スポットスケール±0.3(標準)

ここからは光学シミュレーション結果となりますが、最初にスポットダイアグラムから見てみましょう。

広角端は先代との大きな差は無さそうですが、望遠端はEDガラスを採用した効果でしょう、g線(青)の散らばりが激減していますね。

スポットスケール±0.1(詳細)

こちらは同じスポットをさらに拡大して観察可能にしています。

MTF

左図(青字Wide)は広角端で焦点距離35mmの状態、右図(赤字Tele)は望遠端で焦点距離70mmの状態

開放絞りF2.8

最後にMTFによるシミュレーションの結果を確認してみましょう。

広角端側は、画面の周辺の像高18mm以上でのサジタル方向とタンジェンシャル方向の差分(アス)が減少しているのが好印象です。

望遠端でも画面の周辺部の山の高さが向上しています。

小絞りF4.0

総評

先代35-70mm F2.8から10年ほどの歳月をかけ、28-70mmへと仕様を向上させつつも非球面レンズやEDガラスの導入によって性能も向上した2代目F2.8標準レンズはいかがでしたでしょうか?

発売当時の1999年は、コンデジは市民権を得ていたもののデジタル一眼は庶民には未知のシステムであり、フィルム一眼こそ至上の時代でしたから、本レンズでも十分な性能でした。今となっては良い時代です。

本レンズの後継となる24-70mm F2.8の時代ともなりますと、デジタル一眼がいよいよ庶民にも手の届く激動の時代に突入しますので、今後の記事の更新も是非ご期待ください。

作例・サンプルギャラリー

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製品仕様表

製品仕様一覧表 NIKON Ai AF Zoom-Nikkor 28-70mm F2.8

画角74-34.2度
レンズ構成11群15枚
最小絞りF22
最短撮影距離0.7m
フィルタ径77mm
全長121.5mm
最大径88.5mm
重量935g
発売日1999年

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