分析022 NIKON NIKKOR Z 58mm f/0.95 S

NIKKOR Z 58 0.95 Sの性能分析・レビュー記事です。作例写真は残念ですが準備の予定はありません。

レンズの概要

NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noctの特許資料発見の記念としてNIKKOR50mmの分析をシリーズ化して進めることにしました。要は勝手にNIKONレンズの歴史を楽しんでみようと言う企画となります。

まず現在(2020年)のところNIKONの50/58mmのレンズとしては以下の製品が販売されています。

8本ですよ…脅威的です。しかもそれぞれ光学系は異なるようです。モーターや駆動機構、電磁絞りなどが異なるならわかりますが、なぜ光学系までわざわざ変えるのか…ミラーレス黎明期と言う背景もありますが、どれだけNIKONは50mmが好きなのでしょうか?

今回はシリーズの第7回目、前回はNIKON初のフルサイズミラーレス用標準レンズZ 50mm f/1.8Sを分析し極めて高い光学性能に感動しましたが、今回は同じくミラーレス用の超大口径58mmf/0.95を分析し、ついにシリーズ最終回となります。

この製品の特長であるFno(Fナンバー)の0.95と言う数値の凄みについて記しておきます。Fnoとは光学系の明るさを示すもので、√2(≒1.4)のべき乗で表されるのが通例です。焦点距離が同じ時、Fnoが1段小さいと言うのはレンズを前から見た絞りの面積が2倍直径なら1.4倍大きくなることを示しています。

レンズの特性について収差と言うパラメータで表現しますが、簡単に言えば光を極小の1点に集める能力の事ですからレンズの径が太くなると言うことはそれだけ光を1点に集めるのが困難になる、と説明すれば感覚的にFnoと性能の関係が理解できるでしょう。

一般的なFno表記は、暗い順に1段刻みで記載すると

 Fno32 22 16 11 8.0 5.6 4.0 2.8 2.0 1.4 1.0

となり、Fno1.4とFno1.0は差で0.4とわずかな量に感じますが、面積としては2倍異なります。

いかにF1.0のレンズが大きくなり収差補正が困難か、おわかりいただけるのではないかと思います。

個人的エピソード

このレンズは2018年にNIKONのフルサイズミラーレス参入と同時に開発発表され、当初からその存在をにおわせていたレンズですが、およそ1年後の2019年10月に衝撃のサイズ感と価格で発売されました。

希望小売価格は126万5千円、受注生産、オートフォーカスはできません。マニュアル専用です。

重量に至っては2Kg、もうネタとしか思えませんが、私が予測するにNIKONとしてはついに新規となったZマウントとフルサイズミラーレスの新システムの存在意義を示すためにこのようなレンズが必要だと考えたのでしょう。

なにしろついこの前までは不変のFマウントとか言ってたわけですから、今更引っ込めるわけにもいきません。ここはとんでもない物をだしてごまかそうという作戦ですよ。(たぶん)

しかし、ただ事ではないこのサイズ感と価格ですから衝撃の性能であることは間違いありません。私の財力からすると一生、実物を手に取る事は無いように思いますが、このようなレンズでモデル撮影でもしてみたいものです。

文献調査

この製品の特許は出願されないのではないかと思っていました。特許を出願する意味は他社に真似されない事が第一の目的です。この製品を真似しませんよね…普通。このような仕様のレンズを開発・販売したら普通の会社は倒産します。世界のNIKONだからできる所業でしょう。

そんなわけで特許の発掘は諦めていたある日、期待していなかったところに唐突に発見してしまいました。WO2019/229849です。実施例1、2ともに差はあまり無いようなので1を設計値として早速再現してみましょう。

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。

設計値の推測と分析

性能評価の内容について簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

リンク:光学性能評価

光路図

詳細分析の前に「ガウス、ガウスって言うけど一体何なんだ?」との疑問にお答えするために極簡単な説明記事を以下のリンク先へ準備しましたので気になる方はご参照ください。

リンク:ダブルガウスレンズ

上記のリンク先では初期の4群6枚構成の完全対称型ダブルガウスを説明しています。そして下図が、今回の設計値となります。

NIKON NIKKOR Z 58mm F0.95S 断面図 光路図

Z58 0.95のレンズの構成を見てみますと10群17枚構成、非球面レンズを3枚も採用しています。色収差を補正するための特殊低分散材料EDレンズも4枚投入と現代の最新技術は全て入っているのでしょう。

ですが…

やはりガウスの呪いは解けないのか、絞り前後にはカーブの強い凹の面が向かい合いガウスらしい構成を残しています。

絞り前後のガウス的構成部の被写体側には負の焦点距離のレンズ群を配置し、ガウス構成部よりも撮像素子側には正のレンズを配置した構成となっています。前回、Z50mmf/1.8を分析しましたが、それともと異なるガウス変形パターンです。SIGMAのArt50mmF1.4の方が雰囲気は近いでしょうか。

縦収差

球面収差、像面湾曲、歪曲収差のグラフ

NIKON NIKKOR Z 50mm F1.8S 縦収差

球面収差 軸上色収差

F0.95と言うFnoが信じ難いほどに球面収差が補正されています。

120万円は伊達では無い、と言うことでしょう。販売価格を無視して設計してもここまでの設計解にたどり着けるのか疑問なほどの性能です。

像面湾曲

球面収差に合わせて極良好に補正されています。

歪曲収差

ガウスの対称構造を変更しているので歪曲収差の形が単純な樽形状ではなくなりましたが、絶対値は極小に補正されています。

倍率色収差

NIKON NIKKOR Z 50mm F1.8S 倍率色収差

こちらも高い像高での変化も少なく良好に補正されています。

横収差

NIKON NIKKOR Z 50mm F1.8S 横収差

サジタルハロも極小です。F0.95と言うのが信じ難い…

若干、g線(青)のフレアが残るものの視感度が低いので実写上問題は無いでしょう。もしかするとこのクラスの製品ともなれば特注の特性のガラスを使っている可能性もあり、本当はもっと色収差が少ない可能性もあります。特許データだけではそこまでは開示されていません。実写して確認したいところですが予算の都合上実現はできないでしょう。

スポットダイアグラム

NIKON NIKKOR Z 50mm F1.8S スポットダイアグラム

横収差の通り、g線(青)が若干ありますが、それ以外は小さくまとまっています。

MTF

開放絞りF0.95

NIKON NIKKOR Z 50mm F1.8S MTF F0.95

Z58 0.95のMTFを再現してみます。

開放Fnoからとてつもなく高い…
Z50mmf/1.8も良レンズだと思いましたが遜色ありませんね。

小絞りF1.4

NIKON NIKKOR Z 50mm F1.8S MTF F1.4

開放から高すぎるので1段絞ったはずのF1.4で逆に変化が少ない…本来は感動すべき高性能でしょうが感覚が完全に麻痺しています。

小絞りF1.8

NIKON NIKKOR Z 50mm F1.8S MTF F1.8

最周辺までシャキッとして無収差の領域です。F1.8で無収差に近い状態です。これ以上絞っても良い意味で差が無いでしょう。

小絞りF4.0

NIKON NIKKOR Z 50mm F1.8S MTF F4.0

このレンズをF4.0で使うなんてアラブの石油王ぐらいの贅沢者しかできない行為でしょう。

総評

昔のFnoが明るい大口径製品では絞っても、安い開放Fnoの暗い小口径レンズに性能が負けるパターンをよく見かけますが、このレンズは超大口径で開放から超高性能です。

Z50mm F/1.8も衝撃の高性能でしたが、それに引けを取らない性能をF0.95で実現したNIKON。フルサイズミラーレスの存在意義を見せつけるためとは言え一般庶民はため息しか出ませんよ…やりすぎ。

さて、NIKONの50mmレンズを全て分析するシリーズ記事はこれにて一旦終了です。

なお、50mmf/1.2は残念ながら特許が発見できませんでした、時代的に特許の電子化対象に該当しなかったのではないかと思います。構成的にはZuiko 50 F1.2に見た目は似ておりますから似たような性能だろうとは思います。

個別分析は一旦終了ですが比較分析する記事を引き続き作成する予定です。

作例ページは作られることは無いと思います。

作例

NIKKOR Z 58 0.95 Sの作例は準備の予定はありません。残念な事です。

NIKON製品で作例のある物はこちらのリンクにまとめてありますのでご参照ください。

リンク:作例ギャラリーNIKON

製品仕様表

NIKKOR Z 58 0.95 S製品仕様一覧表

画角40.5度
レンズ構成10群17枚
最小絞りF16
最短撮影距離0.5m
フィルタ径82mm
全長153mm
最大径102mm
重量2000g

他の製品分析記事をお探しの方は以下の目次ページをご参照ください。

リンク:レンズ分析目次

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