分析018 NIKON AI AF NIKKOR 50mm f/1.4D

NIKKOR 50 1.4Dの性能分析・レビュー記事です。作例写真は準備中です。

レンズの概要

NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noctの特許資料発見の記念としてNIKKOR50mmの分析をシリーズ化して進めることにしました。要は勝手にNIKONレンズの歴史を楽しんでみようと言う企画となります。

まず現在(2020年)のところNIKONの50/58mmのレンズとしては以下の製品が販売されています。

   ※ f/1.2Sは在庫限り

8本ですよ…脅威的です。しかもそれぞれ光学系は異なるようです。モーターや駆動機構、電磁絞りなどが異なるならわかりますが、なぜ光学系までわざわざ変えるのか…ミラーレス黎明期と言う背景もありますが、どれだけNIKONは50mmが好きなのでしょうか?

今回はシリーズの第3回目、前回までは少し暗いレンズf/1.8Df/1.8Gを分析しましたが今回はf/1.4Dなので明るい仕様になります。

このf/1.4DのレンズはNew Nikkor 50mm F1.4S(1976年発売)から光学設計の変更は無いようです。f/1.8Dの光学系は、元々は1978年発売の製品から流用されているので、わずかにf/1.4Dの方が出自が古いようです。

個人的エピソード

一眼レフカメラのマニュアルフォーカス機時代末期となる1980年代には各社から50mmF1.4が販売されており、F1.4こそが「真の標準レンズ」の扱いであったと思います。私も初めての一眼レフカメラのレンズはF1.4でした。

しかしその後、オートフォーカス化と伴にレンズが大型化かつ高価になり、また販売上ズームレンズが標準の扱いとなりF1.4は影の薄い存在に…

ふと気付くと安く小さいF1.8が単焦点入門用としての標準レンズに位置づけられ、F1.4はますます影が薄くなっていきます。

さらにデジタル時代黎明期は、APSサイズのセンサが主流でしたから、微妙な存在であり続けましたが、フルサイズセンサが低価格化すると世界的なボケを愛でる文化の浸透と共に、50mmF1.4があらためて見直され再度開発されていると言うのが現在の状況でしょう。

ミラー有りの一眼レフにはガウスタイプがぴったりなわけですが、今後、全社完全ミラーレスの時代となると今度はショートバックに使われていたゾナータイプが再興するんでしょうかね?

文献調査

残念ですが、直接このレンズの設計値らしき特許は発見できませんでした。この辺りの年代は、特許文献が電子ファイル化の前後の時代なのでまだ電子化されていないのか、調査不足なのかわかりません。

ただし、構成がかなり近い文献がありましたので、特開昭57-161822が近い性能だろうとして分析してみます。この文献は製品の発売から5年ほど後に出願されていますから設計値ではないことは明らかです。しかし、ガウス変形タイプの光学系ならば変形部分の構成が同じであれば酷似した性能になるはずです。

見た目が良く似る実施例1を設計値と仮定し、設計データを以下に再現してみます。

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。

設計値の推測と分析

性能評価の内容について簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

リンク:光学性能評価

光路図

詳細分析の前に「ガウス、ガウスって言うけど一体何なんだ?」との疑問にお答えするために極簡単な説明記事を以下のリンク先へ準備しましたので気になる方はご参照ください。

リンク:ダブルガウスレンズ

上記のリンク先では初期の4群6枚構成の完全対称型ダブルガウスを説明しています。

NIKON NIKKOR 50mm f1.4D

6群7枚構成、対称型ガウスの撮像素子側に1枚凸レンズを追加しています。非球面レンズは非採用です。f/1.8Dの撮像素子側に1枚凸レンズを足したと表現するのが適切でしょうか。レンズの材料に特筆すべき物はありませんが、f/1.8Dは材料も対称配置で2種しか使っていませんが、この/f1.4Dでは5種類使われいます。Fnoが大口径化するとガウスタイプでも球面収差や色収差の補正が困難で対称構造は維持できなくなってきますが材料の配置にもそれが現れています。
冒頭で説明したようにこの製品の設計値と思われる特許文献はみつかりませんでした。この設計事例は、製品発売の数年後にNIKONが出願していた50mmf/1.4Dとよく似た構成のレンズです。レンズの微妙な形状や材料などは製品とは異なるものと思います。

縦収差

球面収差、像面湾曲、歪曲収差のグラフ

NIKON NIKKOR 50mm f1.4D 縦収差

球面収差 軸上色収差

40年ほど前のF1.4大口径レンズですから球面収差、軸上色収差ともかなり甚大な量かと思いましたが、適度には収まっています。

像面湾曲がそこそこに小さく補正されており、合わせて球面収差も中間部が0に近くなる補正をしているので開放でふんわり感を楽しめ、絞り込むとキリキリと性能が上がるタイプです。

本ブログでは現代レンズのリファレンスとしてSIGMAのArtシリーズを分析しており、ちょうど50mm F1.4は同じ仕様のレンズがありますが、SIGMAのレンズ収差量のおよそ3倍ほどの量でしょうか。

当然、SIGMAレンズは構成枚数も多く重量やお値段も立派な物です。

像面湾曲

中間部まではサジタルとタンジェンシャルの差は少なく、画面の端では差が開くガウスタイプらしい特徴ですが、絶対値は大きなものではありません。

歪曲収差

わずかに樽型になりますが、対称型のガウスタイプの特徴で絶対値的には小さな範囲です。

倍率色収差

NIKON NIKKOR 50mm f1.4D 倍率色収差

倍率色収差も同様にガウスタイプのため絶対値的には小さいです。f/1.8Dのグラフと顔つきが変わるのは対称構造からずらしたためでしょう。

横収差

NIKON NIKKOR 50mm f1.4D 横収差

先端部と中間部の差で見るとボケ具合がわかりますが、画面中心部(一番下のグラフ)だけ見てもf/1.8Dの、1.5倍はあるでしょうか。開放はだいぶふんわりとしているでしょう。

スポットダイアグラム

NIKON NIKKOR 50mm f1.4D スポットダイアグラム

やはり、画面中心(一番上のグラフ)からすでにスケール一杯のフレア感です。c線(赤)のスポットは小さく補正されており、g線(青)のフレアとなるので見栄えは良いと思います。

MTF

開放絞りF1.4

NIKON NIKKOR 50mm f1.4D MTF F1.4

f/1.8Dに比較して中心から像高18mmぐらいの中間領域までは20ポイント程低下しています。

小絞りF1.8

NIKON NIKKOR 50mm f1.4D MTF F1.8

今回はf/1.8Dやf/1.8Gとの比較でF1.8まで絞った状態のMTFを算出しました。かなりの改善量で、画面中心近傍はf/1.8Dは超えf/1.8Gに近いレベルになります。

小絞りF4.0

NIKON NIKKOR 50mm f1.4D MTF F4.0

 十分高いもののf/1.8Dなどとさほど変わりません。ガウスタイプのレンズは球面収差がフルコレクション形状になること、倍率色収差が異常に小さいこと、が基本的な特徴となっており、結果として絞るとMTFが異常に改善する特徴を発揮します。そのため開放Fnoが少し無理をして明るいレンズであっても小絞りではMTFが改善し、キリキリと解像するようになります。

総評

ガウスタイプの基本的な性能の高さもあって、少ないレンズ枚数でF1.4を達成した美しいレンズです。開放はかなりふんわりとした様子で低解像度ですが、F1.8まで絞ればf/1.8Gに近い性能になり、F4では現代的なレンズとも差がありません。1本で両得とも言えそうです。このように古いレンズであっても特徴を抑えておくと色々な楽しみ方が出るのがレンズ遊びの奥が深いところでしょうか。

作例

Nikkor 50 1.4Dの作例は準備中です。

NIKON製品で作例のある物はこちらのリンクにまとめてありますのでご参照ください。

リンク:作例ギャラリーNIKON

価格調査

最新の価格は以下のリンク先にてご確認ください。

製品仕様表

製品仕様一覧表

画角46度
レンズ構成6群7枚
最小絞りF16
最短撮影距離0.45m
フィルタ径52mm
全長42.5mm
最大径64.5mm
重量230g

他の製品分析記事をお探しの方は以下の目次ページをご参照ください。

リンク:レンズ分析目次

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