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【深層解説】 ニコン大口径広角レンズ NIKON NIKKOR Z 35mm F1.8 S-分析050

ニコン ニッコール 35mm F1.8の性能分析・レビュー記事です。

さて、写真やカメラが趣味の方でも、レンズの仕組みや性能の違いがよくわからないと感じませんか?

当ブログでは、光学エンジニアでいわゆるレンズのプロである私(高山仁)が、レンズの時代背景や特許情報から設計値を推定し、知られざる真の光学性能をやさしく紹介します。

当記事をお読みいただくと、あなたの人生におけるパートナーとなるような、究極の1本が見つかるかもしれません。

作例写真は準備中です。

レンズの概要

NIKON NIKKOR Z 35mm F1.8は、ニコン初のフルサイズミラーレスカメラZシリーズ専用レンズで、Zマウントカメラと同時に販売開始されました。

NIKONのFマウントレンズの中で、焦点距離35mmのレンズは数多くの種類がありますが、Fnoが同じF1.8の製品はたったひとつでFマウントレンズ後期に発売されたAF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED(初代35mmF1.8)のみとなっています。

前回の記事ではその初代35mm F1.8レンズの分析を行いました。

 関連記事:AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED

ちなみにAF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8Gと言うレンズがありますが、こちらも焦点距離35mmですが、DXサイズ(APSサイズ)用なので実際の画角はフルサイズ換算で焦点距離50mm程度となりますので混同されませんようご注意ください。

私的回顧録

思い返せば2018年の夏、ついに発売されたNIKONのフルサイズミラーレスカメラZシリーズ。

たしか、このNIKKOR Z 35mm F1.8はZシリーズと同時発売、標準レンズであるZ 50mm F1.8は同時発表でしたが数カ月遅れての発売開始になったと記憶しています。

当時は、35mmと50mmをF1.8でそろえて同時発売するとは「変わった方針だ」と思いましたが、その後のZマウントレンズの単焦点ラインナップはF1.8を主軸に拡充されており、シリーズ開発初期から構想されていたブレのない太い方針があったことが伺えます。

流石、世界的光学メーカーたるNIKON、実に骨太な信念をお持ちのようです。

なお、しばらく前の分析記事になりますが、過去にNIKKOR Z 50 F1.8した際の記憶では「これを上回る同仕様のレンズは今後出ないのではないか」と恐怖を抱くレベルの高性能レンズでした。

 関連記事:NIKKOR Z 50mm f/1.8 S

きっと、Z 35mm F1.8も衝撃の高性能に違いありません。早速、分析してみましょう。

文献調査

色々と調査しところ国際公開という形式でNIKKOR Z 35mm F1.8 の関連特許と思われる文献がありました。いつもの見た目判断で特開2019-090947から実施例4を製品化したと仮定し、設計データを以下に再現してみます。

 関連記事:特許の原文を参照する方法

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。

恥ずかしい話ですが、マンションの壁をカビさせたことがありますが、防湿庫のカメラは無事でした。

設計値の推測と分析

性能評価の内容などについて簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

上図がNIKON NIKKOR Z 35mm F1.8 Sの光路図になります。

9群11枚構成、第6レンズと第9レンズは色収差を補正するための特殊低分散材料(EDレンズ)を導入し、第7レンズ、第10レンズ、第11レンズには非球面レンズを採用しています。

ピント合わせのフォーカシングの際には二つの群を独立で移動・制御するマルチフォーカス構成(フローティングフォーカス)としているようで、特許文献によれば第8と9レンズを第1フォーカシング群、G10レンズを第2フォーカシング群として移動させているようです。

焦点距離35mm F1.8と言われると比較的庶民的な仕様と思い込みがちですが「2枚のEDレンズ」「3枚の非球面レンズ」「マルチフォーカス機構」を導入するとは「贅沢の極み」と言える構成です。

被写体側に強い凹レンズ成分を配置するレトロフォーカスタイプと言えないこともありませんが、構成が複雑でもはやタイプ名を当てるのが困難なレベルです。

不思議なのは焦点距離もFnoも異なるのですが、過去に分析したSONY FE 50mm F1.4ZE に面影が似ているのです。

 関連記事:SONY FE 50mm F1.4ZE

ミラーレスのレンズを突き詰めるとこのような構成となると言うことなのでしょうか?

縦収差

球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

球面収差を見てみると断面図の豪華さの通りほぼ直線です。

これは性能が良すぎるレンズですね。

軸上色収差は構成枚数から勘案するともう一声小さくもなりそうですが、単なる贅沢病と言うものかもしれません。

色収差は再現が難しい収差なので、私の再現精度に課題があるのかもしれませんが…

像面湾曲

像面湾曲は球面収差のごとく略直線です。

NIKON 35mmで味のあるレンズと言えばNIKKOR 35mm F2.0Dです。ぜひリンク先の収差図を確認していただき収差を吟味していただきたい。

 関連記事:NIKKOR 35mm F2.0D

歪曲収差

歪曲収差はわずかに樽形状ですが最大で1%程度ですから実用上はわからないレベルでしょう。

倍率色収差

倍率色収差はなんとも不気味なカーブを持って画面全域での平均値としては小さくまとめているようです。

横収差

左タンジェンシャル、右サジタル

横収差として見てみましょう。

大口径と言える領域のFnoですが、サジタルコマフレアが少ない…

かつてAF-S NIKKOR 58mm f/1.4G発売時に「3次元的ハイファイにまとめることが重要」とか言ってたのは何だったのか、改めて問い正したいレベルに小さくまとまっています。

なお、AF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gと「3次元的にハイファイ」の分析は以下をご参照ください。

 関連記事:AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G

スポットダイアグラム

スポットスケール±0.3(標準)

ここからは光学シミュレーション結果となりますが、最初にスポットダイアグラムから見てみましょう。

標準のスケールでは、全域でほぼ点ですね。

スポットスケール±0.1(詳細)

MTF

開放絞りF1.8

最後にMTFによるシミュレーションの結果を確認してみましょう。

グラフのどの山が画面中心の特性なのか見誤るレベルで画面全域が均質に高い。

小絞りF4.0

総評

予想はしておりましたが、素晴らしい性能であることが良くわかりました。

多少高価であるものの「2枚のEDレンズ」「3枚の非球面レンズ」「マルチフォーカス機構」と言う実に価格に見合った技術が投入されたNIKONミラーレスレンズを代表するためのレンズであることは疑いようがありません。

後日となりますが、初代35mm F1.8と比較検証なども予定しておりますのでお楽しみにしてください。

以上でこのレンズの分析を終わりますが、今回の分析結果が妥当であったのか?ご自身の手で実際に撮影し検証されてはいかがでしょうか?

それでは最後に、あなたの生涯における運命の1本に出会えますことをお祈り申し上げます。

LENS Review 高山仁

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作例・サンプルギャラリー

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当ブログで人気の「プロが教えるレンズクリーニング法」はこちらの記事です。

製品仕様表

製品仕様一覧表 NIKON NIKKOR Z 35mm F1.8 S

画角63度
レンズ構成9群11枚
最小絞りF16
最短撮影距離0.25m
フィルタ径62mm
全長86mm
最大径73mm
重量370g
発売日2018年9月28日

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