ニコン ニッコール 35mm F2の性能分析・レビュー記事です。
レンズの仕組みやその性能は一体どう違うのか、具体的な違いがほとんどよくわかりませんよね。
雑誌やネットで調べても似たような「口コミ程度のおススメ情報」そんな記事ばかりではないでしょうか?
当ブログでは、レンズの歴史やその時代背景を調べながら、特許情報や実写作例を元にレンズの設計性能を推定し、シミュレーションによりレンズ性能を技術的な観点から詳細に分析します。
一般的には見ることのできない光路図や収差などの光学特性を、プロレンズデザイナー高山仁が丁寧に紐解き、レンズの味や描写性能について、深く優しく解説します。
世界でこのブログでしか読む事のできない特殊情報をお楽しみください。
作例写真をお探しの方は、記事末尾にありますのでこのリンクで移動されると便利です。
レンズの概要
NIKON 35 F2Dは1995年から販売されているロングセラー商品です。このレンズの光学系を探るため、まず始めに過去のNIKONの35mm F2仕様のレンズの系譜を見てみますと以下ようになっているようです。
35mm F2発売年月とレンズ構成枚数
- New Nikkor 35mm F2(1975)6群8枚
- Ai Nikkor 35mm F2(1977)6群8枚
- Ai Nikkor 35mm F2S(1981)6群8枚
- Ai AF Nikkor 35mm F2S(1989)5群6枚
- Ai AF Nikkor 35mm F2D(1995)5群6枚
F2Sがオートフォーカス化(AiAF)された際に6群8枚構成から5群6枚構成へ光学系が変更されているようです。単にF2Sと表現すると、このレンズはオートフォーカスの有無の違いで2種となり、それぞれに光学系が異なるようです。これは紛らわしいですね。ネットで調べると様々に勘違いしている記事が多数あります。
今回取り上げるレンズは、現在でも販売される35mm F2D ですが、光学系としてはオートフォーカス化されたAi AFのF2Sと同じ5群6枚構成で1989年から採用されているものです。
当ブログではフィルム時代に設計された光学系はオールドレンズの扱いのため、これは現代でも販売される続けるオールドレンズとなります。
外観的にはプラスチック感が強く安っぽい(事実安いですが)のですが、近年のSIGMAのArtレンズなどの金属・重厚・高級感の強い製品を見慣れると、この製品の方が80年代のラジカセとかに通じるレトロな近未来感があり、逆にかっこよく見えるのが不思議です。
私的回顧録
フィルム時代は35mmと言えばF2.8が標準で、F2.0は一段上の高級感を感じる仕様でしたが、フィルム末期にはF1.4仕様のレンズも増え始め相対的に手頃感ある存在になりました。
さらにここ最近の感覚では35mm F2.0仕様のレンズは、単焦点の中ではだいたい2~3番目に安い商品なので「なんとなくついでに買ってしまう」物になってはいないでしょうか?
もしこの感覚に共感したあなたは「レンズ沼に首まで漬かっています」
余談はさておき、フィルム時代の撮影は実質ISO感度固定ですからFnoの明るさは撮影自由度をほぼ決定するためF2.0でも高い優位性がありました。
さらに35mmと言う画角は手振れが目立ちづらくなる広角領域で、撮影時のシャッタースピードが遅めでもなんとかなります。
夕刻や屋内撮影する場合にズームレンズとこのコンパクトな35 F2レンズを持っておけば荷物も増えずに良い保険になりました。
そのため私的には35mm F2とは「なんとなく買っておいたレンズを、なんとなくカメラバックに入れておく」的な扱い方をしていました。
時は流れデジタルの時代に突入すると庶民用一眼レフはAPSサイズの撮像素子から始まったので、往年のガウス50mm F1.8を標準として使おうにもフルサイズ換算75mm相当の中望遠となり使い勝手が変わってしまいました。
そこで「なんとなく持っている35mm F2」を使うとフルサイズ換算で約50mm相当になり使い勝手が大変良く、しかも昔からあるレンズなので安い!とデジタル化のためにあるような仕様に勝手に昇格したのです。
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文献調査
さて当初、F2Dの発売日1995年近傍の特許を捜索していたのでこのレンズの特許を発見できずあきらめていたのですが、改めてレンズ構成を確認するとAF F2Sの時に光学系が更新されていることに気が付きました。そこでAF F2S発売日1989年近傍で捜索したところ特開平2-51115をついに発見しました。実施例1を設計値と見て再現してみます。
!注意事項!
以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。
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設計値の推測と分析
性能評価の内容について簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。
光路図
上図がNIKKOR 35mm F2.0 Dの光路図です。
5群6枚構成、被写体側の第1レンズには凹レンズ、少し離れて撮像素子側にはガウスレンズの変形のようなレンズ群が配置されています。
このように被写体側に凹レンズ又は強い負の焦点距離のレンズ群を配置する構成をレトロフォーカスタイプと呼び、一眼レフ用の広角レンズの基本的な配置とされています。
焦点距離とは1枚のレンズで言えばレンズから撮像素子までの長さで、広角レンズとは「焦点距離の短いレンズ=全長が短い」なのですが、一眼レフ用のレンズは、ミラーを配置するスペースを確保するために撮像素子側に広いスペースを設ける必要があり全長を長くしなければなりません。
そのための工夫として被写体側に強い凹レンズを配置することでバックフォーカスを伸ばしているのですが、単純な物理法則の観点からすると不自然な光学系であり、結果として「収差補正に難しさ」がでてきます。
そのため、50mmほどFnoを明るくできなかったり、レンズの構成枚数が増え重く大きくなりがちなのが35mmより広角のレンズで課題となってきます。
ちなみにライカに代表されるレンジファインダーカメラ用の光学系はバックフォーカスが短くても良いので、さらに撮像素子側にも凹レンズを配置した対称型光学系が採用できるので設計自由度高まります。
わかりやすい例ですとビオゴンでしょうか。レンジファインダー用のレンズはまた別の記事で深く触れてみたいと思います。
縦収差
球面収差 軸上色収差
球面収差はフルコレクション型でほんのりとマイナス側へふくらみを持つものの強烈な印象はありません。さすがに平成期の製品ですからレンズ枚数が少ないわりに良く設計されています。
過去の記事でZuiko 35mm F2を分析していますが、こちらの方がさらに20年程度古いため球面収差は倍ほどはあるでしょうか。
一方で現代的レンズとしてはFnoが異なりますがSIGMA Art 35mm F1.4を参考にしていただくと性能の程度差がわかるかと思います。
像面湾曲
像面湾曲は画面の最周辺ではサジタルとタンジェンシャルの差が大きいようですが、中間部まではバランスされています。
歪曲収差
歪曲収差は、若干補正残りとなりますが、安価な高倍率ズームレンズと比較すれば半分以下です。
倍率色収差
倍率色収差は、レンズ構成枚数の少なさからするときれいにまとまっています。絞り込むとMTFの改善効果も高いでしょう。
横収差
タンジェンシャル方向、サジタル方向
サジタル方向(右列)のフレアがかなり甚大です。ここが味なわけですが、1段も絞るとカットされ解像力がキリキリと上がることを楽しめるでしょう。
タンジェンシャル方向(左列)はc線(赤)のハロ成分が中間部から大きく少々気がかりです。
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スポットダイアグラム
c線(赤)のハロの影響を気にしていたものの収差自体が大きすぎて拡散されるようで実写では赤の滲みは気にならないでしょう。絞り込むとカットされるのでさらに目立ちません。素晴らしい収差補正です。
MTF
開放絞りF2.0
像面湾曲の特性の通り、中間部までは山の頂点が一致しています。
最周辺部はズレが大きいですが、ほんの四隅なので星などを撮るのでなければ気にならないでしょう。
小絞りF4.0
かなりのMTF改善具合で実写で比較すると楽しいでしょう。
当然ですが、この時代のレンズは、一段ぐらい絞ったあたりで性能が最も高くなるように配慮して設計されているので狙ってやっています。
総評
作例データをアップ後に記載します。
作例
NIKON NIKKOR 35 F2作例は準備中です。
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製品仕様表
製品仕様一覧表 NIKON NIKKOR 35 F2
画角 | 62度 |
レンズ構成 | 5群6枚 |
最小絞り | F22 |
最短撮影距離 | 0.25m |
フィルタ径 | 52mm |
全長 | 43.5mm |
最大径 | 64.5mm |
重量 | 205g |
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