分析052 写ルンです -2- 構造編

フジカラー「写ルンです」は、富士フィルムが販売する「レンズ付きフィルム」の商標です。

「レンズ付きフィルム」とは、簡易的なカメラにフィルムや電池を装填した状態で販売されている商品で、購入した瞬間から撮影が可能であり、撮影後にはそのままカメラ店へ持ち込めば写真がプリントされ、またカメラ部分は回収されリサイクルし再販売されるシステムとなっています。

前回の記事では「写ルンです-1-基礎編」として簡単な歴史や使い方を紹介しましたが、今回は「構造編」として内部構造を詳しく見てみたいと思います。

関係する「写ルンです」シリーズ記事は以下をご参照ください。

  1. 基礎編
  2. 構造編(本記事)
  3. 光学編
  4. 実写編

構造上の特徴

はじめに「写ルンです」の有名な特徴をいくつかご紹介しましょう。

  1. レンズはプラスチック製の1枚
  2. 絞り固定(F10)
  3. シャッタースピード固定
  4. フィルムを曲げてある

「写ルンです」は、写真の撮影が可能な「カメラ」なのですが、上のリスト1~3にあるようにレンズがたったの1枚で構造も極めて簡易であるために「カメラ」の呼称をあえて使用せず「レンズ付きフィルム」と命名しています。

日本企業らしいなんとも奥ゆかしい配慮ですね。

しかし、あの小さな筐体でありながら、フィルム巻き上げ、シャッターなどの稼働部分を持ちつつ、レンズや絞りと言った光学系を高精度に保持するという驚異的な内部構造は一体どうなっているのでしょうか、興味は尽きない所です。

続いて、「4.フィルムを曲げてある」こちらは公式ホームページなどに記載は無いものの、有名な逸話です。どこで知ったか記憶が定かではありませんが、私も数十年前から知っています。

この「フィルムを曲げてある」の理由についてですが、概略を説明します。

「写ルンです」の光学系はたった1枚のプラスチック製レンズで構成されています。

しかし、1枚のレンズでは本質的に収差が補正しきれないので、歪曲収差や像面湾曲の補正のためにレンズを増やすのではなく、フィルムを曲げると言う補正手法を採用したのです。

現代のデジタルカメラのような固体撮像素子(CMOS)には真似できない荒業(あらわざ)と言えます。

文献調査

まずは、「写ルンです」に関する特許文献を調査してみました。

「写ルンです」の販売開始された1986年前後に出願された特許を確認してみますと、基本特許と思われる文献がいくつか存在することがわかります。

こちらの特許文献 昭63-199351に記載されている挿絵に興味深い物がありますので以下に引用させていただきます。

こちらは「写ルンです」の概略図を示したもので、図中の”15″で示される部分は撮影時にフィルムを押し付ける場所で、一般的なカメラで「ガイドレール」(レール面)と呼ばれる場所になります。

ガイドレールを見ると、あきらかにカーブ(湾曲)しています。当然ですが、一般のカメラのガイドレールは平面になっています。

また、図中の”30″で示される裏蓋側のフィルム押し付け部分「圧板」と呼ばれる場所もなかりカーブしています。

下記に一般的な例としてフィルム一眼レフのOLYMPUS OM-1Nのガイドレール部分の写真を準備しましたのでご覧ください。

ちなみにガイドレール(レール面)は、フィルムを押し当てる部分でカメラ内部において位置の基準となる重要な場所です。レール面を基準に各部品やレンズの取り付け寸法が定義されているはずです。

その全部品の基準たるレール面を曲げてしまうなんて、一般的なカメラメーカーの技術者が見たら頭痛を起こしそうですね。

さらに同じ特許文献 昭63-199351の第2図は、カメラを上から眺めた断面図になっています。

第2図のを見ますと図中の”4”に示されるレンズはどうやら1枚だけ、図中の”20″や”23″などの左右の円筒状の部分はフィルムの巻取り部とパトローネで、フィルムを抑えるガイドレール部分である図中の”26″を見るとかなりきついカーブ形状(湾曲形状)となっており、「フィルムを曲げている」のは初期「写ルンです」から明確に意図して行っているようです。

むしろ隠し立てするつもりも無いようで、清々しいくらい思いっきり曲げてますね。

収差補正と言う意味で湾曲させるならば本来は「球形状」にすべきですが、短辺方向にも曲げるとフィルムがしわになったり、ちぎれてしまうので長辺方向にだけカーブさせているように見えます。

さらにこの特許では1枚レンズの設計値が公開されており、背景として「110フィルム⇒135フィルムへ変えるため~」のような当時の様子まで書かれています。

レンズに関する詳細分析は次回「光学編」で詳細を検証するとして、今回は主に「機械的な構造」についてさらに分析したいと思います。

分解「写ルンです」

先にご紹介の通り、特許文献の挿絵では、はっきりと「フィルムをカーブさせている」ように見えます。

また、本文中にもカーブさせている旨の記載はあります。

しかし文献の中には、明確なカーブ量は記載されていません。

そこでちょっと疑問に思うのは「こんなにはっきり見えるほど曲がっているのか?」と言う点です。

特許文献中の挿絵は、意味が伝われば良いので誇張して書かれることも多く「本当は見てわかるほど大きく曲げていないのではないか?」とも推測されます。

そこで検証のために、実際に分解して確認してみました

「写ルンです」の分解動画

以下の動画では「写ルンです」を分解し、ガイドレールがどの程度曲がっているか自分の目で確認しました。

 動画関連記事:「写ルンです」分解してみた。

真実は動画の最後に紹介されております。

以上で構造編を終わります。

次回はお待ちかねの光学編となります。

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 関連記事:2022年賀状印刷のススメ



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関係する「写ルンです」シリーズ記事は以下をご参照ください。

  1. 基礎編
  2. 構造編(本記事)
  3. 光学編
  4. 実写編

その他のレンズ分析記事をお探しの方は以下の目次ページをご参照ください。

 関連記事:レンズ分析リスト

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