レンズ分析

【徹底解明】写ルンです 望遠 光学編 - 分析081

フジカラー「写ルンです望遠」のレンズ性能分析・レビュー記事です。

レンズの仕組みやその性能は一体どう違うのか、具体的な違いがほとんどよくわかりませんよね。

雑誌やネットで調べても似たような「口コミ程度のおススメ情報」そんな記事ばかりではないでしょうか?

当ブログでは、レンズの歴史やその時代背景を調べながら、特許情報や実写作例を元にレンズの設計性能を推定し、シミュレーションによりレンズ性能を技術的な観点から詳細に分析します。

一般的には見ることのできない光路図や収差などの光学特性を、プロレンズデザイナー高山仁が丁寧に紐解き、レンズの味や描写性能について、深く優しく解説します。

あなたにとって、良いレンズ、悪いレンズ、銘玉、クセ玉、迷玉が見つかるかもしれません。

それでは、世界でこのブログでしか読む事のできない特殊情報をお楽しみください。

今回の記事は、2部構成の後半となる「写ルンです望遠-光学編」となります。

前半記事となる構造編はこちらをご覧ください。

 関連記事:写ルンです望遠-構造編

作例写真をお探しの方は、記事末尾にありますのでこのリンクで移動されると便利です。

レンズの概要

フジカラー「写ルンです」とは、富士フィルムが販売する「レンズ付きフィルム」の商標です。

「レンズ付きフィルム」とは、簡易的なカメラにフィルムや電池を製造時に装填した状態にして販売されている商品で、購入した瞬間から撮影が可能であり、撮影後にはそのままカメラ店へ持ち込めば写真がプリントされ、またカメラ部分は回収されリサイクルし再販売されるシステムとなっています。

よく「使い捨てカメラ」と呼ぶ方がいますが、リサイクルを前提としたエコなシステムであり、写真・カメラ好きを自称される方は正規名称である「レンズ付きフィルム」と呼んでいただきたいものです。

「写ルンです」には多くの種類の製品が発売されおりますが、今回の分析記事では「望遠モデル」の光学編としてレンズ部分を詳細に分析リポートします。

また、過去には「写ルンです標準モデル」を詳しく分析したシリーズ記事を作成しておりますので合わせてご覧ください。

  1. 写ルンです標準:基礎編
  2. 写ルンです標準:構造編
  3. 写ルンです標準:光学編
  4. 写ルンです標準:実写編

私的回顧録

さて、今回のこの欄では前回の構造編のおさらいをしましょう。

写ルンです30周年記念モデルのおまけの冊子から「写ルンです望遠」には初代(望遠)、2代目(new望遠)の2種が存在することがわかりました。

正確な販売時期はわかりませんが、ネットで確認したパッケージ写真に印字された使用期限から、初代は1992年には販売されており、2代目は2002年には販売されていたようです。

少なくとも10年ほどは販売されていたわけですから、なかなか息の長い製品だったようですね。

今回の記事では2代目となるnew望遠を分析します。

また「写ルンです望遠」のレンズ仕様は、パッケージの情報から焦点距離100mmであることはわかります。

そして、前回の構造編では本体を分解し内部構造を調査しました。

そこから得られた情報をまとめると、下の模式図のような構造であることがわかりました。

写ルンです望遠の光学系は、驚異の「2枚レンズ構成+2枚反射鏡」で光路を折りたたみ、あの小さな筐体に収めていることがわかります。

では、以上の情報を元にレンズの詳細調査を行いましょう。

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文献調査

上記の調査結果から「写ルンです望遠」の初代は90年代初頭あたりに、また2代目は00年代初頭あたりには市場に流通していたことがわかりました。

その構造は、わずか2枚のレンズで構成され、さらに反射鏡が2枚入っています。

この情報を元に80年代後半ぐらいからの富士フィルムのレンズに関連する特許文献を総当たりで読みますと、関連性の強い特許が発見できました。

特開平7-287359では「写ルンです望遠」の内部構造が説明されています。

この特許文献より挿絵をお借りしました。

「写ルンです標準モデル」とは異なり、「望遠」には光量調整機能の付いた特殊なファインダーや絞り機構があるため、信じ難いレベルの複雑な構造です。

これが売価1000円ちょっとの商品の中身かと思うと、狂気に近い物を感じますね。

また、この構成図にも書かれていますが、驚いた事にビスがわずか1本しか使われていません。

リサイクルを意識し、解体性などにも深い配慮をした結果なのでしょう。

色々な関連文献を網羅的に読んだのですが、残念ながら直接のレンズ設計値に近いと思われる特許は発見できませんでした。

しかし、特開2001-337266には「写ルンです望遠」の改良型と思わしき設計例が記載されておりました。

「写ルンです望遠」のレンズ仕様は焦点距離100mmですが、この特許の実施例では改良した135mmのレンズが記載されています。

プラスチックレンズ2枚だけの設計ですから、少々のサイズは違えど光学性能としては同程度であると推定されますので、少々仕様は異なるものの実施例1を設計値として分析してみます。

 関連記事:特許の原文を参照する方法

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。


当記事を読み終えますとレンズを購入したくなる恐れがございますので、事前に防湿庫の増設を検討されることをおススメいたします。

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設計値の推測と分析

性能評価の内容などについて簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

上図が「写ルンです望遠」に近いレンズの光路図になります。

2群2枚のレンズで、製品としては撮像素子側で2枚の反射鏡によって折りたたまれた形になっていますが、見やすくまっすぐに展開して表示しています。

次にこのレンズを反射鏡で折りたたまれた実際の製品に近い形状はこちらとなります。

製品を側面から見た状態に相当する断面形状です。

この2枚だけのレンズは、構造編の記事での分解確認した時の外観形状から、プラスチック系の材料で、射出成型により加工されたものとわかります。

射出成型とは、金型に材料を入れ高温高圧でプレスして加工する手法です。今川焼みたいな物と思っていただくと良いかと思います。

特許文献に記載されている材料データから推測するに被写体側となる左側の第1レンズはアクリル系、第2レンズはポリカーボネート系の材料のようです。

さらに、第1レンズの被写体側面は非球面形状となっています。

また、撮像素子(フィルム)に相当する画面右側の結像面が大きく湾曲している様子がおわかりでしょうか、写ルンです特有のフィルムをカーブさせて収差を抑える構造です。

このフィルムのカーブは、厳密には画面水平方向へのみカーブしていますが、分析上は面倒なので球体状になっているとしています。

縦収差

左から、球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

球面収差から見てみましょう、焦点距離の長さもあってだいぶ球面収差がマイナス側に倒れ補正残りとなっています。

しかし、あまり球面収差を抑えすぎると深度が狭くなりピンボケ写真を増産してしまう恐れがあります。

ピント合わせの機構の無い「写ルンです」ではこの程度にわざと球面収差を残すことでピント深度を稼いでいるのでしょう。

軸上色収差は、2枚のレンズを使っているためg線(青)のズレは目立つものの、C線(赤)やF線(水色)は適度に補正されており、実写ではそれほど目立たないものと予想されます。

像面湾曲

像面湾曲はフィルムをカーブさせて補正していることもあり、枚数の少なさの割にはきれいに抑えられています。

歪曲収差

歪曲収差は焦点距離が長いためあまり大きくなりませんが、フィルムをカーブさせる効果もあって、ほとんどゼロと言えるレベルに補正されています。

倍率色収差

倍率色収差は、2枚構成の苦しさが少々にじみ出ているようです。グラフとしては上端側である画面周辺部に向かって収差が大きくなる特性です。

横収差

タンジェンシャル、右サジタル

FnoがF9と暗いこともあり、適度な特性値に抑えらており、実写はなかなか期待できそうです。


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スポットダイアグラム

スポットスケール±0.3(標準)

標準スケールで見る限り、FnoがF9と暗いため十分スポットは小さくなっています。

スポットスケール±0.1(詳細)

詳細スケールに拡大しますと、下側図となる画面周辺部では倍率色収差が大きい影響で、スポットが色ごとに分離している様子がわかります。

MTF

開放絞りF9

MTFはそこそこに高い値となっていますが、他の分析記事のMTFのように山の形になっていません。

これは、FnoがF9と暗いためピント深度が深いことを示しています。

横軸スケール縮小

今回は小絞りではなく、横軸スケールを縮小し、特性全体が見えるようにしました。

いつものMTFグラフは横軸±0.1mmですが、今回は横軸±0.5mmと5倍の広さで描画しています。

通常の分析記事のようにMTFの山の形がわかるようになりました。

画面中心から画面中間の像高12mmあたりまではMTFがしっかりと高く、かなり高解像度が期待できます。

総評

手のひらに収まるほどの小さい筐体に信じ難いほどの複雑な仕掛けを詰め込み、たったのビス1本で組み上げる脅威の構造、さらに折り畳み光学系によって高画質と小型化を実現した「写ルンです望遠」には富士フィルムの執念を感じる製品でした。

日本が技術大国と言われたのも、いつの頃か昔の話のようになってしまった雰囲気がありますが、そんな当時の残り香を感じる素晴らしい製品でしたね。

執筆現在(2022年)は「写ルンです」が再評価されていますが、今後も末永く写真文化の一端として続いて欲しいものです。

その他の色々な種類の「写ルンです」も紹介しております。

 関連記事:いろんな写ルンです開封してみた


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作例・サンプルギャラリー

カメラのみなみやで現像とスキャンしていただいたものを特に画像処理せずそのまま掲載しております。

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この作例の撮影に使用した「写ルンです望遠」は、使用期限が2004年で撮影は2022年に行っています。

期限切れも甚だしいですが、あまり違和感無く写っていますね。


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関連する「写ルンです」のスタンダードな機種の分析記事はこちらです。

  1. 写ルンです標準:基礎編
  2. 写ルンです標準:構造編
  3. 写ルンです標準:光学編
  4. 写ルンです標準:実写編

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