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僕とコダクローム -前編

コダック社とは、フィルム製造を主体としたカメラ周辺機器メーカーで世界的な大手企業でした。

コダクロームとは、かつてコダック社から販売されていたフィルムの名称です。

さて「レンズ」を主題に展開する当ブログですが、当記事では少し脱線しカメラや写真にまつわる思い出を綴ります。

破綻した巨人

いきなりですが、写真業界の巨人「コダック」は2012年に経営破綻してしまいます。

破綻当時を思い出すと、写真フィルムの大手だったコダックはデジタル時代に乗り遅れており、外部から見てもどうやって会社を維持しているのか良く分からない状態でした。

破綻は不思議ではなかったものの、コダックと言えば世界的な大企業でしたから衝撃的なニュースでした。

まだ2012年当時のカメラ業界は、デジタル化によるバブルの続いた時期であり、今にして思えばこの世の春を謳歌していたメーカーも多くあるなかの経営破綻だったのです。

黄金時代

フィルムカメラの黄金期とはいつの事だったでしょうか?

コダック社にとっては、1970年代が黄金期だったのかもしれません。

1970年代と言えばカメラでは一眼レフが本格的に普及し始め、合わせてフィルムの流通量も急激な拡大期でした。

当時の代表的なカメラを挙げると、NIKONならF2、PENTAXはKシリーズの始まり時期、まさに一眼レフカメラが開花した時代でした。※1

この頃はまだマニュアルカメラが主流ですから、自分でしっかりピントと露出を合わせなければならず、まともな写真を撮ることだけでも「技術」と言われた時代です。

全自動で写真が撮れる現代の若者には想像しがたい世界でしょう。

Kodachrome

コダックのフィルムと言ってもいくつものシリーズがありましたが、当記事のタイトルにある「コダクローム」とはカラーポジフィルムの名称でした。

大別するとフィルムのタイプには、ネガフィルムとポジフィルムがあります。

一般の人は露出補正が容易で失敗の少ないネガフィルムを使っていました。

ネガフィルムは色味が反転しており、そのままでは良くわかりません。

フィルムからプリントする際に色味を再反転させて普通の色合いに戻します。

現在も販売されている「写ルンです」にもネガフィルムが使われているので見たことある方も多いでしょう。

もうひとつのポジフィルムは、フィルムの状態ですでに正常な色味になっており、現像が終わったフィルムをライトボックスで眺めると小さく凝縮された世界を見るようでワクワクとしたものです。

ポジフィルムは色味が良いものの露出条件がシビアでプロ向けとされ、価格も現像代も高かったので「コダクローム」はカメラ好き少年たちには憧れの舶来フィルムでありました。

また、フィルムには色味のある「カラーフィルム」と、白と黒だけの世界「モノクロフィルム」があることはご存じでしょうが、70年代はカラーフィルムが主流となった時代でもあります。

しかし、作品作りの領域ではカラーフィルムの地位はまだ低く、硬派な写真道とは「すなわちモノクロである」が多数派だった時代です。

その一方、アメリカではニュー・カラーと言われる写真の潮流が生まれ、カラーフィルムを使い撮影されたアメリカ各地の「普遍的な世界」の写真を眺めてはため息が出たものです。※2

サイモン&ガーファンクル

そして「コダクローム」で忘れてはならないのが、フォークデュオのサイモン&ガーファンクル(Simon & Garfunkel)のポール・サイモン(paul simon)がソロ時代に歌いヒットした代表曲「僕のコダクローム」です。

写真やカメラを題材にした歌はたくさんあるかと思いますが、ここまでストレートに商品名を打ち出しながら世界的に大ヒットした曲はこの歌だけではないでしょうか?


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私がこの歌を初めて聞いてから数十年経過していますが、これまでコダックが製作したCMソングだと思い込んでいました。

なにしろその歌詞は、まさにコダックの黄金時代を象徴するようにも受けて取れます。

今回、執筆のために調べて知ったのですが、実はたまたま語呂が良かったから「コダクローム」と言う単語を使ったのだそうで、大ヒットの末にだいぶ年月が経ってからCMソングとして逆輸入的に採用されたのだそうです。

ちなみに、歌詞に出てくる「ナイコン キャメラ」とは、日本光学製カメラ(ニコンカメラ)の事です。

終わりの始まり

フィルム時代を謳歌したコダックですが、必ずしもアナログな会社だったわけではありません。

なんとデジタルカメラを開発したのもコダックと言われていますから確かな技術はあったはずなのです。

思い出すと90年代に”わけわからん値段”で販売されていた業務用デジタル一眼レフカメラの記憶装置部分にコダックのロゴが入っていたのを思い出しますね…あのカメラは新聞社などが購入したのでしょうか。

しかし、「デジタルカメラの発明」そんな画期的な功績を上げたものの、経営陣に先見の明が無かったようで、世間のデジタル化の流れに乗れずにコダクロームは生産終了、さらにその数年後には会社自体が経営破綻します。

その破綻後、幸運にも経営再建されたようで、現在でも細々とフィルムの製造が継続されておりAMAZONなどの大手通販サイトでなんとか購入できるようです。

一方のポール・サイモンの「僕のコダクローム」は、音楽配信サービスによりタダみたいな値段で気軽に聞けるのですから技術の発展とは実に因果なものですね。

「僕のコダクローム」は、AMAZONが提供する楽曲聞き放題の配信サービスでも聞くことができます。

久しぶりにサイモン&ガーファンクルの歌声が聞きたくなった方はこちらをご確認ください。

さて、コダックはフィルム生産を続けているものの、コダクロームは残念ながら現在生産されておらず使うことができません。

しかし、コダックのフィルムは、現在でも購入できますから当時をわずかに懐かしむ事はできます。

最近はなにやら若者にフィルムコンパクトカメラが流行しているとの噂もありますが…

久しぶりにMFカメラへフィルムを詰めて出かけてみましょうか、スマートフォンへダウンロードした「僕のコダクローム」でも聞きながら。

後編へ続く

 関連記事:僕とコダクローム -後編

<注釈>

コダック wiki

※1:NIKON F2は1971年の発売、PENTAX Kシリーズは1975年から開始

※2:ニュー・カラーについてはホンマタカシ先生の著書がおすすめです。「たのしい写真」など


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  • この記事を書いた人

高山仁

いにしえより光学設計に従事してきた世界屈指のプロレンズ設計者。 実態は、零細光学設計事務所を運営するやんごとなき窓際の翁で、孫ムスメのあはれなる下僕。 当ブログへのリンクや引用はご自由にどうぞ。 更新情報はXへ投稿しております。

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