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【深層解説】 ソニー広角レンズ SONY FE 24mm F2.8 G -分析083

ソニーFE 24mm F2.8G(SEL24F2.8G)の性能分析・レビュー記事です。

さて、写真やカメラが趣味の方でも、レンズの仕組みや性能の違いがよくわからないと感じませんか?

当ブログでは、光学エンジニアでいわゆるレンズのプロである私(高山仁)が、レンズの時代背景や特許情報から設計値を推定し、知られざる真の光学性能をやさしく紹介します。

当記事をお読みいただくと、あなたの人生におけるパートナーとなるような、究極の1本が見つかるかもしれません。

作例写真は準備中です。

レンズの概要

SONY FE 24mm F2.8 Gは、2021年に発売された久しぶりの24mm F2.8仕様のレンズです。

まずは、MINOLTAからSONY Eマウントまでの24mm F2.8レンズの系譜を見てみましょう。

  • MC W ROKKOR 24mm F2.8 7群9枚
  • MC W ROKKOR 24mm F2.8 8群10枚
  • MD W ROKKOR 24mm F2.8 7群9枚(1977)
  • New MD24mm F2.8 8群8枚(1981)
  • AF24mm F2.8 8群8枚(1985)

 ※光学系が共通するものは除く

1970年代のMCレンズ時代から24mm F2.8が出現し、世界初の本格オートフォーカス一眼レフカメラのα登場と供にAF 24mm F2.8が1985年に発売されています。

しかし、ここで一旦24mmの系譜は途絶えてしまいます。

その後、紆余曲折を経てMINOLTAのカメラ事業を買収したSONYよりミラーレス一眼用レンズとして再びの発売となりました。

SONY買収後、始めに登場したのは、最上位クラスのG Master系であるFE 24mm F1.4 GMで当ブログでも分析を行いました。

 関連記事:SONY FE 24mm F1.4 GM

続いて登場したのが、当記事でテーマとする中位クラスであるG系のFE 24mm F2.8 Gとなります。

このレンズの登場は、1980年代に一度途絶えて以来の約35年ぶりとなる24mm F2.8の最新レンズとなります。

また、古い時代の同仕様レンズとしては過去にNIKONのレンズを分析しております、比較としてご覧ください

 関連記事:NIKON Nikkor-N Auto 24mm F2.8

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私的回顧録

『ついに24mm時代が到来か?』

ひとつ前の記事でも少し触れましたが、90年代ともなりますと24mm仕様のレンズは「悲哀のレンズ」、失礼な言い方をすれば「不人気レンズ」でありました。

しかし、フルサイズデジタル時代の到来と供に復権し、この先もしかすると24mm時代のあるのかもしれない雰囲気も感じられます。

その理由は、スマートフォンにあります。

今や大変に高画質化したスマートフォンをカメラと考えると「世界イチ売れているカメラはiPhone」とも考えることができます。

iPhoneのレンズは、初期こそ焦点距離32mm相当でしたが、年々レンズ仕様の広角化が進み、執筆時(2022)の最新であるiphone13には焦点距離26mm相当の光学系が標準として搭載されています。

当ブログでも過去にはiPhoneのレンズを分析した事がありますのでご参考にご覧ください。

 関連記事:Apple iphone

そして、もうあと一歩、広角化が進み焦点距離26mm→24mmへとなれば世界イチ売れているカメラには24mmが装着されていることになるのです。

これは「焦点距離24mm標準時代」と言わざるを得ない状況ですね。

と、未来の事はわかりませんので、本題のレンズ分析にまいりましょう。

文献調査

私は定期的に各社が出願する特許をまとめて眺めておりまして、今回特開2022-030896を発見しました。

本件は、SONYともう一社の共願形式となっています。

会社の規模から推測するにSONYから委託を受けて設計製造している会社が共願形式で特許をだしたのでしょう。

文献に添付された図面を見ますと実施例1が製品形状に酷似しているため、実施例1を製品化したと仮定し、設計データを以下に再現してみます。

 関連記事:特許の原文を参照する方法

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。

恥ずかしい話ですが、マンションの壁をカビさせたことがありますが、防湿庫のカメラは無事でした。

設計値の推測と分析

性能評価の内容などについて簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

上図がSONY FE 24mm F2.8 Gの光路図になります。

7群8枚構成、第2、第6、第7レンズには非球面レンズを採用しています。

第2、第6レンズは通常のガラスレンズの表面に非球面形状の薄い樹脂層を付けた複合非球面のようです。

第7レンズはガラスモールディング非球面レンズでしょうか?レンズの両面を非球面形状としたレンズです。

全体の構成枚数は古き良き時代のような枚数ですが、この低価格レンズにこんなに多くの非球面レンズを使うのかと溜息のでるような豪勢な構成です。

縦収差

左から、球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

球面収差から見てみましょう、球面収差は略直線状で非球面レンズの補正効果を使って徹底的な除去を試みたことがわかります。

軸上色収差は、この小枚数レンズで実現できるのが不思議なレベルで補正されています。

像面湾曲

像面湾曲は球面収差に合わせて適正に補正されているでしょう。

歪曲収差

歪曲収差を見るとこのレンズの実態がわかります。

一般的なレンズは大きくても5%程度歪曲量であることが一般的ですが、当レンズでは画面周辺でおよそ10%の歪曲収差が発生しています。

これは歪曲収差は完全に画像処理にまかせているためと推測できます。

ミラーレス一眼では画像処理による歪曲収差の補正が可能であるため、レンズ系としては歪曲収差は残し、他の収差を徹底して抑制することで小枚数でありながらも高性能を実現しようとの意図でしょう。

倍率色収差

倍率色収差は価格帯からすると適正程度とも言えますが少々大き目です。

歪曲収差と供に画像処理で抑え込むことを想定しているのでしょう。

横収差

タンジェンシャル、右サジタル

横収差として見てみましょう。

画面中心から周辺まで、基準光線であるd線(黄色)は略直線で非常に高度に補正されています。

一方で画面周辺の像高12mmあたりから色ごとのズレは大きめです。

倍率色収差と同様に色収差成分は画像処理による補正を前提としていることが伺えます。

スポットダイアグラム

スポットスケール±0.3(標準)

ここからは光学シミュレーション結果となりますが、最初にスポットダイアグラムから見てみましょう。

Fnoも控えめなF2.8なこともあり、標準スケールで見ると極小なスポットであることがわかります。

スポットスケール±0.1(詳細)

拡大したスケールで確認しますとやはり色ごとのズレは少々あるようです。

MTF

開放絞りF2.8

最後にMTFによるシミュレーションの結果を確認してみましょう。

開放FnoのMTFを見ても山の高さ、また周辺性能の山の位置の一致度ともに申し分のない高性能なまとまりです。

MTFには影響の少ない色収差については画像処理にて補正されるため、トータルでも非常に解像感の高い画像を得られそうです。

小絞りF4.0

Fnoを絞り込みF4ともなれば、これはほとんど完璧と言える特性になります。

総評

SONY FE 24mm F2.8 Gは、画像処理による収差補正を前提とした極めて現代的な光学設計を象徴するレンズであることがわかりました。

古き良き時代のレンズかと見紛うほどにとてもコンパクトで軽量、かつ価格もお手頃な割に極高性能である理由が良くわかりましたね。

私としてはこのようなコンパクトレンズが好みでありますので各社から販売される事を望みますが、大口径化を推す世論の方が強いようにも感じますね。

以上でこのレンズの分析を終わりますが、今回の分析結果が妥当であったのか?ご自身の手で実際に撮影し検証されてはいかがでしょうか?

それでは最後に、あなたの生涯における運命の1本に出会えますことをお祈り申し上げます。

LENS Review 高山仁

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作例・サンプルギャラリー

SONY FE 24mm F2.8 Gの作例集は準備中です。


当ブログで人気の「プロが教えるレンズクリーニング法」はこちらの記事です。

製品仕様表

製品仕様一覧表SONY FE 24mm F2.8 G

画角84度
レンズ構成7群8枚
最小絞りF22
最短撮影距離0.18m
フィルタ径49mm
全長45mm
最大径68mm
重量162g
発売日2021年 4月23日

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