当ブログ「レンズレビュー」は、普段は写真用レンズの分析をテーマにするブログですが、今回の記事ではカメラとも馴染みの深い様々な記録メディアに関する歴史の一端を振り返ってみたいと思います。
私と記録メディア
光学設計(レンズ設計)をなりわいとする私ですが、その光学設計とコンピュータには実は深いつながりがあります。
日本で初めて開発されたコンピュータFUJICは「光学設計のために富士フィルムが1956年に完成させた」とされています。
なぜ、光学設計にいち早くコンピュータを導入しようとしたのか?
それは、光学設計には膨大な繰り返し計算を行う必要があり、コンピュータのような自動計算システムの出現が渇望されていたのです。
ちなみにコンピュータの出現する前の大手カメラメーカーでは、計算手と呼ばれたソロバン名人を多く集め人力で処理していたと聞きます。
そして1970年代ともなると、大手メーカーの光学設計は完全にコンピュータ化され、私自身も公私ともに早くからコンピュータの取り扱いを行ってきました。
もはや正確な型式は忘れましたが、私的には80年代にNECが発売した最初期の家庭向けパソコンPC-9800シリーズを購入し、よなよなBasic言語でプログラムを書いたものです。
そう、このPC9800の記録装置であった「5インチフロッピー」から私と記録メディアの愛憎劇が始まったのです。
この記事では、写真やデジタルカメラとも関係の深い記録メディア変遷について、極私的な観点から振り返ります。
本来、記録メディアとは、長期間に渡り大事なデータを保存する装置であってほしい物ですが、5年も耐えられずに消え去るメディアが多数ある驚愕の事実を、経験者の方は懐かしく、お若い方は後学のために、供に味わっていただきたいと思います。
史的事実とは異なる点も多々あるでしょうがご了承ください。
コンピューター用 記録メディア編
5インチフロッピーディスク
5インチフロッピーディスクとは「家庭にまで普及した」という意味で最初期の記録メディアで、80年代から90年代初頭のパソコンには5インチFD専用ドライブが付いていることが標準的なスタイルになりました。
歴史的にフロッピーディスクは、8インチサイズに始まり⇒5インチ⇒3.5インチと小型化しながら進化しました。
※5インチ:正確には5.25インチ
1980年代の初期パソコンブームと供に家庭用に広く普及したのは5インチからで、これを実際に手に取って使った事のある方も多いことでしょう。
記憶容量はいくつか種類がありますが、最大で1.2メガバイト(MB)でした。
お若い方には衝撃かもしれませんが、極端な表現をすると一般家庭においてフロッピーディスク登場以前の世界とは「紙とペン、フィルム写真」しか記録する物が無かったのです。
※音楽用カセットテープや映像用ビデオテープもこの同時期に普及。
紙とペンの世界に唐突に表れた記録メディア、それが5インチフロッピーディスクだったのです。
最近で言うところの「ChatGPT(AI)の登場」か、あるいはそれ以上のインパクトでしょう。
正確に言えば蓄音機とかありますが、一般家庭にあるとは言えません。
さて、フロッピーディスクに話を戻すと、広く普及した5インチフロッピーから画像を見ていただきましょう。
通常、紙製の保護袋(ケース)に入った状態で保管されています。初めての方は「えっ?紙?」と驚くかもしれませんね。
なお、各メディアのサイズ感がわかりやすいように、世界最小のレンズ交換式一眼レフカメラ PENTAX AUTO110を添えて撮影しております。
世界イチわかりやすい配慮ですね。
保護袋を取るともう記録部がむき出しになります。
小判形の小窓から見える茶色い部分が磁気記録部(ディスク)です。
パソコンのディスクドライブに挿入すると、ディスクを回転させながら小窓部分より磁気ヘッドがデータを読み書きします。
当時は不思議に思いませんでしたが、かなり軟質のペラペラぐにゃぐにゃな素材で、書き込めるデータ量は1MB程度とはいえ「よく精度の問題が発生しないものだ」と感心します。
驚くことに、自分で使用したなかで、エラーによりメディアやデータがダメになった経験はありませんでした。
このメディアは薄くペラペラで色も基本黒色しかなく、箱の中にぎっしり入れてしまうと判別がつきません。
最盛期には、ゲームもたくさん発売されるようになり、整理が悪いと目当てのディスク探しに苦労したものです。
3.5インチフロッピーディスク
1990年代を代表する記録メディアと言えば3.5インチフロッピーディスク(3.5インチFD)でしょう。
5インチFDからさらに半分ほどのサイズとなり、硬質ケースに記録面を保護する金属製のシャッター構造に未来のハイテクを感じたものです。
※5インチFDからの容量差は倍も変わらない1.4MB程度なのですが…
まずはパッケージ写真からご覧ください。
薄いフィルム状の梱包を破り捨て中身を見ると、5インチと最も異なる点は硬質プラスチックの外装部で硬くなりました。
記録面はむき出しでなく、保護するためのシャッター機構が搭載されました。
シャッターを開けると磁気記録部が露出します。
このシャッターが「シュッ!」と開く仕掛けだけで未来を感じたんですよ、だって昭和でしたから…
3.5インチFDはSONYが開発した物がデファクトスタンダード化し、なんと2010年ごろまでのパソコンに専用ドライブが搭載され続けました。
2010年の時点ですでにレガシーメディアで普通は使わない物となっていましたが、あまりにも普及したメディアであったため業務用途の関係で廃止できない業界も多く、専用ドライブの搭載が続いたようです。
SONYの提唱した記録メディアといえば、ビデオテープの規格であるベータマックス、デジカメ用のメモリースティック、プレイステーションポータブルのUMDなど聞いただけで「嫌な予感」しかない、不穏な気持ちになりますが3.5インチFDだけは大当たりしたと言えます。
HDD :ハードディスク
ハードディスク(HDD)は、1990年代あたりから家庭にも普及し、現代でも記録メディアの雄としてご存じでしょう。
私的にはNEC製パソコンの金字塔PC9821シリーズの端末を購入した際、ついに本体に内蔵されていました。
HDDの外見は、デスクトップパソコンに内蔵される3.5インチ型の大型サイズと、ノートPCやモバイル用に使われる2.5インチ型の小型サイズの2種が主流です。
こちらが3.5インチ型です。
こちらは、ケースに入った状態の2.5インチ型です。
HDDの中で特殊な物としては、CFカードサイズの「マイクロドライブ」なる物もありました。(CF項に詳細を記載)
私が初めて購入したハードディスクの容量は、50メガバイト(MB)ほどでしたが、当時はそれでも衝撃的なサイズでした。
その後HDDは、毎年のように容量が倍増し、2000年代にはギガバイト(GB)サイズを越え、2010年代にはテラバイト(TB)サイズを越えています。
執筆現在(2023年)では、10TBサイズのモデルも入手可能な価格帯となっています。
私の使い方ですと、10TBもの大容量があれば、残りの人生で撮影する全データが保存できそうです…
しかし、HDDは内部にモーター類があり高速で駆動してデータの読み書きを行うため、機械的な寿命が存在します。
私も公私を通じて30台以上のHDDを使ってきましたが、3台は謎の故障、1台はあきらかに寿命と思われる現象を目撃しています。
ハードディスクで長期のデータ保存を行うためには複数台を組み合わせるなど工夫が必要です。
私的に実験したことがあるのですが、5年ほど放置したハードディスクを再度使ってみたところ何の問題も無く動きました。
この結果は、保管条件などに異なりますので保証されるものではありませんが、意外に長期保管できるようです。
CD-R/RW :コンパクトディスク
その昔、音楽と言う物は「レコード盤」で聞く物でしたが、1980年代の中盤から「コンパクトディスク(CD)」へ急速に置き換わりました。
そして、1990年代の中盤にCDへ直接データを書き込む装置とそのメディア「CD-R」が販売されるようになります。
昭和世代の我々は「CDとは工場で生産される物」と思い込まされていたので「自宅で作れるとは、なんと画期的な!」と感動したものです。
書き込みできるデータ容量も700MBと90年代に普及していたHDD(50MB前後)よりも十分に大きく、期待の記録メディアでした。
しかし、登場直後は書き込み速度が非常に遅く、登場時の1倍速の機器ですと準備して書き込み終了までに2時間ほどかかりました。
さらに、長時間の書き込み作業後、謎のエラーで使えないことも多々発生したのです。
CD-Rは、データの消去ができませんから書き込みエラーになれば、そのままメディアも廃棄となります。
巷の噂では、書き込み時の環境が重要で「振動の少ない場所で行うと良い」とか、「電圧の安定する夜間に行うと良い」とか、真偽不明な情報を耳にしましたが事実だったのでしょうか?
データの書き換えができないなど、使い勝手に難もあったCD-Rですが、音楽CDをそのままコピーできたので猛烈な普及をみせ、2000年代にもなると価格もとても安価になり1枚数十円で売られていました。
ことちらが、CDの表面です。
裏面が記録面になります、傾けて色合いがわかりやすいに撮影しております。
裏面は薄い青なんですね。いくつか色の種類があるように記憶しています。
その後、CD-Rは2000年代を越えると、技術の向上で書き込みエラーも無くなり、書き込み速度も向上し40倍速を越えるレベルに達するのですが、その間にHDDの容量が飛躍的に増大しギガバイト(GB)をはるかに越えたことで、容量的な魅力は乏しくなりました。
価格の安さから配布用のメディアとして今でも一定の需要があるものの、ネットワーク環境が向上し、音楽CDも売れない時代となったため2020年代に入り役目を終えようとしています。
これと似た規格のCD-RWは、書き換えを可能としたメディアですが、音楽CDとしてはほぼ使えないなど汎用性が低く、価格がCD-Rに比較すると高いなど、ネガティブ要件が多くいまいちメジャーにはなれずに終わります。
こちらはCD-RWです。
裏面は特別な色味が無いようですね。
ZIP :ジップ
ZIPとは、1990年代の中盤に登場し、3.5インチFDの代替えメディアの一角として勢力を広げた記録メディアです。
初期の記録容量は100MBで容量的にも外観的にも「大容量3.5インチFD」風なメディアで、CD-Rと違ってデータ消去も可能です。
ほとんどがテキストデータのみで、まだマルチメディアには程遠い1990年代において日常的なデータ量として100MBあれば十分な時代でした。
なにしろ、普段使っているメディアは1MBほどの3.5インチFDですから…
ZIPは、欧米では大人気で、後述するライバルのMOに対して読み書きが非常に高速、私的には「これが新世代の本命メディアだッ!」と買い込んだのですが…
CD-Rの普及率の高さと価格の安さの前には勝てず、気が付けば消え去っておりました。
こちらがZipのパッケージです。
見た目、サイズ感はFD感が満載ですね。
上部の銀色に見える部分がシャッター構造になっており、読み書きする際は開閉します。
なお、もっと普及に大失敗した「Jaz」というものもありましたなぁ。
MO :光磁気ディスク、エムオー
MOとは、ZIPと同じく1990年代中盤に普及が始まったメディアで「磁気で書き込み、光で読み出す、で光磁気ディスク」これを直訳し頭文字にするとMOなんだとか。
初期の記録容量は125MBとZIPに近い設定で、透明なケースにCDのようにきらりと光るディスクが見える「魅惑的なデザイン」です。
MOもフロッピーディスク同様にデータ消去が可能で、規格の拡張が行われ、販売店でよく見かけた最大容量は640MBで、ギガバイトサイズのメディアもあったようですが実際に売っているのは見た記憶がありません。
私の職場ではMOが採用されまして、一時期使用していましたが、2000年を超えると一般企業のデータ管理もデータサーバーでネットワーク管理を行うのが当たり前になり、頻繁にデータバックアップを行うこともなくなり次第に姿を消しました。
MOのパッケージがこちらです。
中には、半透明のケースにキラリと光るディスクが、チラリと見える秀逸なオシャレデザインで「ミライ、キタァー」と思わずつぶやいてしまいますね。なにしろ「平成」になってましたし。
こちらはスケルトンデザインの物です。
後に知りましたが、日本以外ではほとんど普及しなかったそうですね。
欧米人にはこの未来的デザインが少し早すぎたのでしょうか?
ちなみにMOの以前の職場ではDATと言うテープ型のメディアでデータを管理しており、若手社員が定期的にデータを保存していましたが、幸運な事に?一度もバックアップデータからリカバリーした記憶が無いんですよね…
DATは業務用としては現在(2023年)も現役だそうです。
DVD-R/RW
DVDとは、1990年代後半からVHSビデオテープの代替えとして、主に映画を販売するために普及が始まったメディアです。
執筆現在(2023年)でも現役で映画やビデオの販売やレンタルに使われていますから、短命な物が多い記録メディア界では大成功した部類です。
DVD以前に普及したVHSビデオテープは、弁当箱ぐらいの大きさで、今見るととても巨大です。
ビデオテープは、スペースも重量も大きく映像コレクターの部屋はあっというまに床が抜けるような事態になりがちでした。
DVDに変わりとても薄く軽くなったため初めて見た時は「これは脱昭和だ」と感じたものです。
DVDにもCDと同じく「-R」などの書き込み規格が設定され、DVD-Rの容量は4.7BGほどに達しました。
こちらがDVD-Rの表面です。
裏面が記録面になります、傾けて色合いがわかりやすいに撮影しております。
裏面は紫色のようで美しいです。
DVDも販売用メディアでは成功したものの、ハードディスク容量が爆発的に増えた時期でもあり、記録メディアとしては役不足で主役となった印象はありません。
しかも、私はDVD規格の中でも、最も普及しなかったDVD-RAMを選択する愚行を犯します。
DVD-RAM :DVD-ラム
2000年を過ぎると、私もデジタルカメラを使うようになり、しだいにデータのバックアップに頭を悩ませるようになってきます。
ハードディスクはどうしても故障リスクがつきまとうので、手軽なデータバックアップのシステムを構築する必要があると考えました。
CD-Rでは当時でも容量的な魅力に乏しく、バックアップに手間がかかる上、消去ができません。
そこで、当時の私が目を付けたのが「DVD-RAM」です。
DVD-RAMとは、DVD-Rなどと同時期に普及の始まった記録メディアで、硬質ジャケットに入れらており「巨大フロッピーディスク」のような見た目です。
昭和世代には馴染みのあるスタイルに安心感を覚えたのでしょうか…
記録容量は、両面記録できるタイプのメディアなら9.4GBも保存可能で、消去し書き換えることも可能なので「これだッ!」と当時は思ったんですよ…
DVD-RAMのパッケージはこちらです。
中を開けると硬質プラスチックのケースにディスクメディアが内包されており、中身のディスクだけ取り出して使うことも可能です。
中央部のシャッターを開け、裏面から記録面を見ると独特なパターンが見え非常に美しいです。
実際にDVD-RAMを購入したのですが、専用のドライブが必要で汎用性に難点があり、ぜんぜん普及しませんでした。
本当に驚くべくレベルで普及しなかったのです。
結局はハードディスクの容量が激増しかつ安価となり、CFカードなどのカメラ用メディアも合わせて倍増し、あっと言う間にチープな容量に…
ついにDVD-RAMのメディアは5枚も購入しなかったような…
また、同じような書き換え可能メディアとしてDVD-RW(マイナス)、DVD+RW(プラス)なども存在し、一般消費者にはわかりづらく全部とも倒れになった感も否めません。
そして私は心に誓ったのです「もうディスク型メディアなんて信用しない、と!」(この時点で20年ほど使っているわけですが)
BD-R :ブルーレイ
BR(ブルーレイディスク)は、DVDよりもさらに高画質のフルハイビジョン映像を録画するためのメディアです。
すでにディスク型メディアと袂を分かつ私にはわかりませんが、1層20GBほどのデータを記録できるようです。
BDの書き込み用メディア(規格)が、BD-Rとなります。
こちらがBD-Rのパッケージです。
こちらが表面です。インクジェットプリンターで印刷用できるタイプなので何も書かれていませんね。
裏面が記録面になります、傾けて色合いがわかりやすいに撮影しております。
少々渋い雰囲気の薄いゴールドの色合いです。
かつてHD DVDという似た規格もあって、いつものごとく覇権争いをしており「心底ディスク型メディアはうんざり」ですね。
BD-Rが普及した頃、ハードディスク容量はすでに数百GBクラスに到達しており、20GB程度の容量では中途半端で使い道が見いだせないためパソコン市場でのシェアは低かったものと思います。
結果的にBDは、映画やアニメの販売用メディアやレンタルビデオ用の位置に留まりました。
最近訪れた近所の古道具屋では、CD-Rが110円なのにBD-Rは55円で売られていました。
SSD :ソリッドステートドライブ
SSDとは、2010年代から普及が始まったフラッシュメモリを使った記録メディアです。
イメージで表現すると、ハードディスクの代わりに大きなCFカードを使うとするのが妥当でしょうか。
ついに「非ディスク型メディアの本命の登場かッ!」と大変に期待したものです。
登場初期は、プチフリなどと言われる瞬間的に動作が止まってしまう問題があったり、大容量化にも時間がかり、ノートパソコンの記録メディアとしてHDDからSSDへ完全に切り替わったのは2020年ごろだったでしょう。
同時期にSSDを採用した超小型パソコンも市場で存在感を増してきました。
期待のメディアですが、執筆現在(2023)でも、まだHDDの方が容量的には圧倒的に大きく、価格も安い状況です。
HDDのように内部で駆動する物は無いため、寿命が無いと思いがちですが、書き込み回数に限界があります。
また、通電せずに放置すると7~8年でデータが消失する現象が起こるため、長期のデータ保存には注意が必要です。
近年ようやく4TBクラスの製品もだいぶ価格が低下しており、SSDのみでパソコン環境構築することも可能となってきました。
SSDは、データの読み書きがとても高速かつ無音で、故障リスクもHDDよりは低く、ついに理想のメディア誕生かと思いましたが、長期保存に難があるなど、完璧なメディアとはなかなか誕生しないものですね…
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カメラ用 記録メディア編
ここからは一般常識的な情報ですが、当ブログらしくカメラ用の記録メディアもご紹介いたします。
135フィルム
135フィルムとは、デジタルカメラが普及する以前のカメラで最も多く採用された記録メディアです。
写真用フィルムは、光を当てると変質する薬剤を薄いシート状の基材に塗布し、レンズにより被写体をフィルム上へ結像させることで化学的に写し込むことができます。
撮影直後のフィルムはまだ見ることができず、現像処理、プリント処理を経てようやく見ることが可能になります。
一般的にフィルムと言えばこの135フィルムを指し、1925年に近代カメラの始祖Leica(ライカ)へ採用されたことで世界中に普及しました。
「135フィルム」が正規名称ですが、ライカ版とか35mm版などの呼び方の方がむしろ一般的でしょうか。
現像したフィルムの様子は以下です。
一般的なフィルムは、ネガタイプで色味が反転しており、プリント処理を行うと正常な色味に戻ります。
ちなみに35mmとは、フィルムの縦幅を指しており、映画撮影用フィルムを切断し写真用に使ったことが始まりだそうです。
執筆現在(2023)、Leicaが採用してからおよそ100年が経過しましたが、利用率の低下から価格が高騰しており、そろそろ絶滅が危惧されています。
また、現代でも販売が続く「写ルンです」にも採用されています。
110フィルム
110フィルムとは、今回の記事で、各種記録メディアと供にサイズ比較用に写している「PENTAX Auto110」にも採用されているフィルム規格です。
1970年代に登場し、カメラへの装填ミスが発生しない先進的な構造で一時は市民権を得ました。
しかし、当時のフィルム品質では満足な画質が得られず、次第にトイカメラ用となりました。
1990年代には消えたと思いきや、LOMOが現代でも販売を続けているそうです。
APSフィルム :アドバンストフォトシステム
APSフィルムとは、1990年代後半に登場した135フィルムよりも一回り小さいカートリッジタイプのフィルムです。
装填から巻き上げまで自動で行う構造で、135フィルムでありがちな装填ミスや撮影前に裏ブタを開けてしまうなどの事故が起こりません。
コンパクトカメラを中心に一時期ブームなり、各社から対応する一眼レフカメラも発売されましたが、デジタルカメラの拡大時期と重なったため、2000年以降は販売数量が急減し、2012年にフィルム自体の生産も終了となりました。
現代のデジタル一眼レフやミラーレスカメラに残る「APSサイズ」の呼称は、このAPSフィルムサイズを模したセンサーサイズを指しています。
CFカード :コンパクトフラッシュ
CFカードは、執筆現在でもデジタル一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラなど高級機種で採用されている記録メディアです。
1994年に発売された現代デジタルカメの元祖「CASIO QV-10」の頃はまだ内蔵メモリ式でしたが、1990年代後半から普及が進み初期のコンパクトデジタルカメラやデジタル一眼レフカメラに採用されます。
関連記事:CASIO QV-10
2000年代に入ると高級デジカメではCFカードが市場を席捲し、低価格デジカメはSDカード/スマートメディア/xDピクチャーカードの3種がしのぎを削る小型記録メディアの戦国時代でした。
私的にはデジタルカメラで使うよりも「PDA」で使ったのが最初の出会いです。PDAとは現代のスマートフォンの源流ですね。
また、CFカードと同じスロット形状で互換性のあるマイクロドライブも忘れてはいけません。
CFカードは半導体のフラッシュメモリーですが、マイクロドライブはCFカードサイズで作られた超小型のハードディスクで、今見てもオーパーツ感に溢れるステキアイテムです。
当時のマイクロドライブの最大容量は1GBでしたが、現代の技術で作り直せば容量1TBぐらい実現できそうな気がします。(買いませんけど)
さて、近年のCFカード界隈の動きとしては、2020年ごろ高速化規格CFexpressに後継が一本化され、高級ミラーレス一眼から徐々に広がりを見せていますが、デジカメ市場の縮小や停滞が重なり、CF系メディアが市場を制覇できるのか?まだ予断を許さない状況が続いています。
メモリースティック
メモリースティックとは、SONYが提唱した記録メディアで1997年に発表されました。
SONYが主体のメディア… コレもう嫌な予感しかしませんよね…
ちょっと話はそれますがSONYのメディアと言えば「ベータマックス」に裏切られた記憶が今も忘れられないんですよ。
発売当初はカメラ以外のSONY製品にも採用されたことから、登場時はそれなりに普及したのですが2000年代に入るとSDカードが市場を席捲します。
メモリースティックもSDカードに対抗した小型高速化仕様Duo、Microなどを打ち出すものの、SDカードにはまったく太刀打ちできず、ついにSONYのカメラもSDカードに対応します。
こちらが普通のメモリースティックです。
小型規格のDuoがこちらで、SDカードおよそ同じサイズ感になります。
Duoには、変換アダプタが用意されており、旧製品との互換性を維持しています。
2010年を超えるとメモリースティックをあえて使うようなユーザーは実質いなかったと思うのですが、SONYのデジタルカメラは2019年発売の製品でもメモリースティックに対応しているあたりが泣けますね。
私的にはカメラ用としてメモリースティックを購入したことが無いのですが、ゲーム機に使うとかそんな理由で家族に購入を頼まれ「これかぁ…」と奇妙な気持ちで眺めた記憶があります。
スマートメディア
スマートメディアとは、東芝・オリンパス・富士写真フイルムが主体となり1995年に発売された記録メディアで、開発時期の割に非常に小さく、5インチフロッピーディスクを彷彿とさせる薄さが特徴です。
2000年より少し前、デジタルカメラの夜明けの時期、今では意外かもしれませんがオリンパスや富士フィルムがデジカメ市場をリードしていたのです。
ゆえにオリンパスが採用するスマートメディアは「CFカードよりも小型で有望なメディアなのではないか?」と思い込んだ私はスマートメディア採用のデジタルカメラを購入してしまったのです…
メディアは3枚程度購入したでしょうか。専用のカードリーダーも買いました。
こちらがスマートメディアで、SDカードよりも一回り大きく、厚みが薄いのが特徴です。
しかし、1999年に東芝は後に市場を席捲する「SDカード」をスタートさせ、携帯電話への採用も大きかったのか猛烈な勢いで普及してゆきました。
なんとその後、オリンパス・富士写真フイルムは2002年に「xDピクチャーカード」を発表し、スマートメディアは放棄されるのです。
そうです、しっかりと私は騙されていたのです。
この後、私はしばらく心の傷が癒えるまで「135フィルムへ回帰」したのでした。
xDピクチャーカード
xDピクチャーカードとは、スマートメディアをけん引していたオリンパスと富士フィルムが主体となり2002年から始めた記録メディアです。
ライバルSDカードの市場での展開が圧倒的に早く、逆にxDピクチャーカードを採用したオリンパスや富士フィルムが自体があっと言う間にデジカメシェアを落としていきました。
私自身はスマートメディアで受けた心の傷が癒えぬなか、気が付けばxDピクチャーカードなんぞ消滅していたので、もはや自身の肉眼で見た記憶すらありません。
最近、メルカリで価格を見てみますと、同世代のメディアの中で圧倒的に高い値段で取引されているようでした。
あまりに市場に流通しなかったため逆にプレミアムが付いているのでしょうか…
SDカード
現在のパナソニック、東芝、サンディスクが主導し、1999年に発足したのがSDカードです。
執筆現在(2023年)でもカメラ市場で圧倒的なシェアを持っており、まだしばらくはこのまま続きそうです。
思い起こせば20年ほど前、初めてのSDカードは容量64MBで、その翌年ぐらいには容量256MBへ買い替えました。
256MBの容量で2万円ぐらいの値段だった記憶があり「紛失したらどうしよう」と心配したものです。
そして毎年のように容量は増え、最近ではコスパの良い256GBを使用しています。6000円ぐらいで購入。
なお、市販されているメディアの容量は現在1TBに到達しています。
そして、2023年中に容量2TBのSDカードが生産開始されるそうです。
現在主流のSDカード規格SDXCの容量上限は2TBで、この数値を初めて聞いた時には無限大にも感じましたが、規格上限に到達する日が来たようです。
左右のメディアは、販売時期が20年ほど異なりますが、容量差は1000倍ですが、価格は1/3ほどなっています。
恐ろしい進化です…使っている人はさっぱり進化していないのも恐ろしいですが。
まとめ
今回は、過去に私が使用したパソコンとカメラの記録メディアについて簡単に振り返ってみました。
もっとジャンルを広げ、音楽メディアも含めればレコードにカセットテープ、CD、MD、MP3シリコンオーディオ、iPodもあります。
あるいは、動画メディアならば8mmにベータマックス、VHS、miniDVなど、まだまだ私を翻弄した記録メディアたちの話は尽きません。
そして、数多の記録メディアに裏切られた私の人生は、おそらく近い将来に完全クラウド化によって最後の裏切りを受けるのでしょう…
そうなると、私が購入してきた記録メディアとはなんだったのでしょうか?その話は近いうちに現実のものになりそうで怖いものです。