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【レンズのプロが解説】ペンタックス超望遠ズーム HD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6ED DC AW -分析121

ペンタックスの超望遠ズームレンズ HD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6の性能分析・レビュー記事です。

さて、写真やカメラが趣味の方でも、レンズの仕組みや性能の違いがよくわからないと感じませんか?

当ブログでは、光学エンジニアでいわゆるレンズのプロである私(高山仁)が、レンズの時代背景や特許情報から設計値を推定し、知られざる真の光学性能をやさしく紹介します。

当記事をお読みいただくと、あなた人生のパートナーとなるような、究極の1本が見つかるかもしれません。

作例写真は準備中です。

レンズの概要

PENTAXの超望遠レンズと言えば、銀色の外装に「PENTAX」と巨大に印字されたフードが特徴的なFA★400mmF5.6EDなど、1980年代後半に発売された超望遠レンズシリーズが思い浮かびます。

この同時代の1988年には、PENTAX初の超望遠ズームも発売されています。

PENTAX初の超望遠ズームは、銀色の外装にいかつい三脚座を持ち、超兵器のような佇まいを感じるF★ズーム250-600mmF5.6EDで、受注生産のかたちで発売されています。

その後しばらく、PENTAXの超望遠ズームは途絶えていたのですが、デジタル化の進んだ2015年に満を持して発売されたのが当記事のPENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6になります。

デジタル時代に復活した最上位レンズらしく、特殊低分散ガラス採用(ED)、防塵防滴構造(AW)、ゴーストを低減するHDコーティング、汚れ防止のSPコーティングと思いつく全ての機能を搭載したレンズとなっています。

そして、その光学性能がいかに進化を遂げたのか?

詳しく分析して参りましょう。

文献調査

HD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6の発売年から遡ること約1年ほど前の2014年にPENTAXから特開2015-129788が出願されており、構成図を見るにどう見ても当記事のFA 150-450mmに違いない形をしておりますので、これを製品化したと仮定し、設計データを以下に再現してみます。

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。

恥ずかしい話ですが、マンションの壁をカビさせたことがありますが、防湿庫のカメラは無事でした。

設計値の推測と分析

性能評価の内容などについて簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

上図がHD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6の光路図になります。

本レンズは、ズームレンズのため各種特性を広角端と望遠端で左右に並べ表記しております。

左図(青字Wide)は広角端で焦点距離150mmの状態、右図(赤字Tele)は望遠端で焦点距離450mmの状態です。

英語では広角レンズを「Wide angle lens」と表記するため、当ブログの図ではズームの広角端をWide(ワイド)と表記しています。

一方の望遠レンズは「Telephoto lens」と表記するため、ズームの望遠端をTele(テレ)と表記します。

さらに、当ブログが独自開発し無料配布しておりますレンズ図描画アプリ「drawLens」を使い、構造をさらにわかりやすく描画してみましょう。

レンズの構成は14群18枚、黄色で示すレンズは望遠レンズにおいて補正が困難な軸上色収差に効果的なED(Extra-Low Dispersion)ガラスで、かなり大径な箇所に2枚も採用されています。

続いて、ズーム構成について以下に図示しました。

上図では広角端(Wide)を上段に、望遠端(Tele)を下段に記載し、ズーム時のレンズの移動の様子を破線の矢印で示しています。

ズーム構成を確認しますと、レンズは全6ユニット(UNIT)構成となっています。

第1ユニットは、全体として凸(正)の焦点距離(集光レンズ)の構成となっていますが、このズーム構成を凸(正)群先行型と表現します。

この凸群先行型は、望遠端の焦点距離が70mmを越えるズームレンズで多い構成です。

高倍率ズームや望遠ズームレンズは、ほとんど全て凸群先行型と見て間違いありません。

第1ユニット、第4ユニット、第5ユニットが望遠端になると被写体側へ移動し、第2ユニットは反対に撮像素子側へ移動します。

第3ユニットは固定されているようです。

かなり複雑な動きをみせますね。

超望遠ズームはレンズ自体が巨大なため、移動ユニット数は簡素だったりするものですが、4つのユニットが移動し固定群はわずかにひとつと複雑に移動する現代的なズーム移動構成になっています。

望遠ズームレンズには、第1ユニットが固定の物と飛び出す(移動する)物の2種類があります。

第1ユニットが飛び出すタイプは、広角端の状態にすると全長をとても小さくできるので、高い携帯性を求めるユーザーに人気です。

第1ユニットが固定のタイプは、堅牢性が高く、ホコリや水分の入り込みも少なく、報道機関など荒っぽい現場では好まれるようですね。

しかし、防塵防滴をうたうPENTAXのレンズですから、1群が移動する構造でも堅牢なことは保証されているようなものでしょう。

特許文献における説明では、最も撮像素子側の第5ユニットを移動させてピント合わせ(フォーカシング)を行う構造です。

レンズを撮像素子側から見るとフォーカシング構造が見えるのかもしれません。

縦収差

左図(青字Wide)は広角端で焦点距離150mm、右図(赤字Tele)は望遠端で焦点距離450mm

左から、球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

画面中心の解像度、ボケ味の指標である球面収差から見てみましょう、左側の広角端側の基準光線であるd線(黄)の特性を確認すると、少々大き目にマイナス側に膨らむフルコレクション型ですが、右側の望遠端側を見ると極めて鋭い直線です。

画面の中心の色にじみを表す軸上色収差のg線(青)を見ると、補正残りが少し大き目にあるものの、グラフの上端部で芸術的にd線(黄)とg線(青)が重なります。

広角端と望遠端で逆方向に捻じ曲げ、重ねるのですから、狙ってもなかなかできる事ではありません。

一般的には色収差を小さくするには特殊なガラスを採用したり、構成枚数を増やすことが効果的ですが、その場合は重量や価格に跳ね返ります。

一方で、PENTAX 150-450mmは、まさに匠の技と言える補正を行っています。

仕様は異なりますが、同時代のNIKONを見ますとだいぶ収差の構造が異なり、思想の違いがわかりやすいと思います。

 関連記事:NIKON AF-S NIKKOR 80-400mm F4.5-5.6

像面湾曲

画面全域の平坦度の指標の像面湾曲は、広角端では文句のない直線に補正されており、望遠端ではわずかにマイナス側に倒れますがFno5.6の深度からするとさほど影響は無いでしょう。

歪曲収差

画面全域の歪みの指標の歪曲収差は、広角端も望遠端も少々プラス側へ倒れる形状で、撮影すると糸巻き型の歪曲が発生しますが、絶対値的には許容範囲でしょう。

倍率色収差

左図(青字Wide)は広角端で焦点距離150mm、右図(赤字Tele)は望遠端で焦点距離450mm

画面全域の色にじみの指標の倍率色収差は、広角端では適度に補正されており、望遠端ではg線(青)が画面周辺部で大きめです。

超望遠の仕様を鑑みれば許容できないレベルではありませんが、倍率色収差はデジタル処理で補正することが容易なことも考慮していると思われます。

横収差

左図(青字Wide)は広角端で焦点距離150mm、右図(赤字Tele)は望遠端で焦点距離450mm

タンジェンシャル、右サジタル

画面内の代表ポイントでの光線の収束具合の指標の横収差として見てみましょう。

広角端側の左列タンジェンシャル方向は、球面収差が少し大き目であった影響で、画面の中央部の像高6mmあたりまではハロ(傾き)成分が強く出ていますが、コマ収差(非対称成分)が非常に少ないようで解像度は高そうです。

右列サジタル方向は、Fnoが控えめなF4.5ですから、あまり収差が発生しませんので直線的なグラフです。

右図の望遠端側グラフに移り、左列タンジェンシャル方向は、画面の中央部の像高6mmあたりまでは非常にきれいで収差が少ないですが、像高18mmからはg線(青)のズレが大き目で、これは倍率色収差の大きい点とコマ収差が影響しています。


記録メディアは、事故防止のため信頼性の高い物を使いましょう。

スポットダイアグラム

左図(青字Wide)は広角端で焦点距離150mm、右図(赤字Tele)は望遠端で焦点距離450mm

スポットスケール±0.3(標準)

ここからは光学シミュレーション結果となりますが、画面内の代表ポイントでの光線の実際の振る舞いを示すスポットダイアグラムから見てみましょう。

Fnoが4.0を超えて暗いレンズはピントの合う距離(深度)が深くなるため、ディフォーカス量(グラフ横方向)を±0.4mmと通常設定の4倍としてるのでご注意ください。

広角端では、球面収差の残りが気になりましたが、スポットダイアグラムで見ると非常に小さくまとまっているようです。

望遠端は、画面の周辺の像高18mmあたりから倍率色収差の影響でg線(青)のズレが少し目立ちます。

スポットスケール±0.1(詳細)

さらにスケールを変更し、拡大表示したスポットダイアグラムです。

広角端は本当に秀逸ですね。しかし、望遠端も超望遠の仕様を考えれば同クラスの製品の中では優秀なクラスです。

MTF

左図(青字Wide)は広角端で焦点距離150mm、右図(赤字Tele)は望遠端で焦点距離450mm

開放絞りF4.5-5.6

最後に、画面内の代表ポイントでの解像性能を点数化したMTFによるシミュレーションの結果を確認してみましょう。

Fnoが4.0を超えて暗いレンズはピントの合う距離(深度)が深くなるため、ディフォーカス量(グラフ横方向)を±0.4mmと通常設定の4倍としてるのでご注意ください。

開放絞りでのMTF特性図を一見してわかるのが、グラフの山の横方向の位置が極めて均質に一致している点です。

これは、中心から周辺までピント面が平坦に一致していることを示しています。(像面湾曲が非常に小さい)

たとえMTFの高さがあったとしても位置がずれていると、画面の位置ごとにピントのズレを感じてしまうものです。

意外かもしれませんが、この平坦性は望遠レンズほど重要です。

超望遠レンズは非常に遠くの被写体を撮影するため、すべてが超遠距離となり「実質的に平坦な被写体」を撮影する機会が多くなります。

そのためピントの平坦性が重要になるわけですね。

逆に超広角レンズは非常に広い範囲が写るのですが、そのような広大な面積の平坦な被写体は少なく、撮影する機会が少なくなります。

このPENTAXのレンズは、収差図で見ると必ずしも絶対値が極小というわけではないのですが、MTFで総合的に見ると極めてレベルの高い補正が行われていることがわかります。

PENTAXの匠の技術を感じますね。

小絞りF8.0

FnoをF8まで絞り込んだ小絞りの状態でのMTFを確認しましょう。一般的には、絞り込むことで収差がカットされ解像度は改善します。

ぱっと見て「美しい」のがわかりますよね。言葉で取り繕う必要も無いでしょう。

グラフの山が広がるように見えるのは、絞り込みにより深度が増え解像度の高い範囲が広がることを示しています。

総評

高価な材料を散りばめた煌びやかな構成とは違い、一見すると地味さを感じる構造や収差でありがなら一段上の秘めた実力を隠す。

まさにPENTAXらしい質実剛健さを体現するようなレンズです。

収差を完全に滅することは原理的に不可能であり、足るを知り、知で補い、美を求める、光学設計とはすなわち哲学であることを再認識させてくれるレンズです。

以上でこのレンズの分析を終わりますが、今回の分析結果が妥当であったのか?ご自身の手で実際に撮影し検証されてはいかがでしょうか?

それでは最後に、あなたの生涯における運命の1本に出会えますことをお祈り申し上げます。

LENS Review 高山仁

作例・サンプルギャラリー

HD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6の作例集は準備中です。


当ブログの画像編集に採用している国産現像ソフトSILKYPIXについての分析記事はこちら

製品仕様表

製品仕様一覧表 HD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6

画角16.5-5.5度
レンズ構成14群18枚
最小絞りF22-27
最短撮影距離2m
フィルタ径86mm
全長241.5mm
最大径95mm
重量2325g(フード、三脚座付
発売日2015年 4月17日

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