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雑学001 光学性能の評価手法

当ブログで実施している光学性能の評価とはどのようなものなのか紹介したいと思います。

性能評価シミュレーションソフトについて

当ブログのレンズ分析記事では特許などの情報から光学性能の評価用を行っております。

光学計算ソフトは多々ありますが、当ブログではOpTliXを利用しています。

なんと約1万円(税込)で主要な光学性能評価が可能です。

いくつかの無料ソフトや有償ソフトのサンプル版など検討しましたが、機能と価格のバランス的に最適でした。

設計(最適化機能)が可能なバージョンでも17万円ほどなので趣味の範囲で支払える価格です。

 今の私には無理な価格ですが…

性能評価の設定等の概要

当ブログでは主に光路図、ザイデルの5収差、横収差、スポットダイアグラム、MTFを評価することでレンズの主要な特性を解析します。

以下に各データの表示形式を説明します。

光路図/断面図

この図は、レンズを縦切りにし光線の通る様子を描いています。左側が被写体側で右側は撮像素子側になります。

描画する光線の像高は横収差やスポットの評価位置と合わせてあります。特に注記がなければ、標準としては開放Fno、無限遠合焦の状態を示しています。

光路図については専用の解説ページを準備しております、以下のリンク先もご参照ください。

 関連記事:光路図を図解

メーカーページには断面図が記載されていますが、光線追跡の図まで記載された物を見たことのある方はまずいないと思います。

恐らく、世界でこのブログだけが記載している貴重な資料だと思います。

収差

各収差に関する詳細な説明は専用ページをご覧ください。

この記事では収差グラフのスケールの設定などの簡単な説明を行います。

縦収差

球面収差、像面湾曲、歪曲収差の3つのグラフを並べて記載します。

球面収差のスケール ±0.5mm
像面湾曲のスケール ±0.5mm
歪曲のスケール   ±5%
を標準としています。あまりに見づらい場合は変更します。

評価光源はg線(青)、F線(水色)、d線(黄色)、C線(赤)として4色分をグラフに記載します。

特に注記の無いかぎり開放Fno、無限遠合焦の状態です。

倍率色収差図

縦収差の一種ですがOPTALIXでは別グラフとして出力されるため別枠での説明としています。横軸のスケールは±0.05を基準にしています。

横収差

まずは評価像高の設定を模式図にて説明します。

各種シミュレーションで性能評価を行う画面内の特定のポイントを「像高(ぞうこう)」と呼びますが、評価像高の配置は上図の丸で示している0mm/6mm/12mm/18mm/21mmとしています。

各ポイントの数値は中心からの直線距離で、0mmとは画面真中心、21mmはフルサイズセンサーでの四隅のカドに相当する箇所です。

12mmは画面真上と同じ意味で、18mmは真横になります。

なお説明の際にわかりやすくするために、中心/中央/中間/周辺/隅と名前を付けています。

この像高設定は光路図、スポット、MTFの表記とも共通しています。

個人的には12mmまでの性能が良ければそれで良いです。

横収差

以下が横収差図の設定です。

左にタンジェンシャル方向、右にサジタル方向のグラフを記載します。

評価光源は縦収差と同じです。特に注記の無いかぎり開放Fno、無限遠合焦の状態です。

このグラフは下から順に中心0mm、中央6mm、中間12mm、周辺18mm、隅21mmの像高位置での横収差グラフが並んでいます。

スポットダイアグラム

縦方向は像高、横方向はピントです。

横収差と同じ像高分割、同じ光源で評価しています。

スケールは0.05mmあたりを標準としたいですが、統一が難しいのでバラバラになりそうです。画面右上にスケールサイズを記載しています。

特に注記の無いかぎり開放Fno、無限遠合焦の状態です。

このグラフは上から順に中心0mm、中央6mm、中間12mm、周辺18mm、隅21mmの像高位置でのスポットグラフが並んでいます。

MTF

MTFは、評価周波数20本/㎜のディフォーカス特性図を記載しています。

横軸はピント方向、縦軸はMTF値です。Fnoの明るいレンズは1~2段絞ったグラフも記載します。

一般的にメーカーのホームページには10本/mmの低周波と30〜40本/mmの高周波が表記されていますが、簡素な1グラフで納められるように中間程度の20本/㎜にしています。

色によって評価像高を分けています。

  •    :中心0mm
  • 水色  :中央6mm
  • 黄色  :中間12mm
  • オレンジ:周辺18mm
  •    :隅21mm

メーカーのホームページでは像高特性のグラフが記載されていますが、あまり意味が無いのでディフォーカス図を記載することにしました。

評価光源の設定はネット上で公開されていたSONYのCMOSセンサーの感度を参考にしました。レンズ側の透過率は考慮してません。開放Fno、無限遠合焦の状態です。

収差などについてより詳しい資料をお探しの方は各詳細説明資料をご覧ください。

現在のところ解説は以上となります。

さらに詳細に光学用語を知りたい方向けに私がおすすめの光学の入門書籍の紹介ページを作成しましたので以下のリンクよりご覧ください。

 関連記事:雑学004 光学の入門書

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  • この記事を書いた人

高山仁

いにしえより光学設計に従事してきた世界屈指のプロレンズ設計者。 実態は、零細光学設計事務所を運営するやんごとなき窓際の翁で、孫ムスメのあはれなる下僕。 当ブログへのリンクや引用はご自由にどうぞ。 更新情報はXへ投稿しております。

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