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【深層解説】ソニー大口径望遠ズーム SONY FE 70-200mm F2.8 GM OSS II-分析126

ソニーの大口径望遠ズームレンズ SONY FE 70-200mm F2.8 GM OSS II(第二世代)の性能分析・レビュー記事です。

さて、写真やカメラが趣味の方でも、レンズの仕組みや性能の違いがよくわからないと感じませんか?

当ブログでは、光学エンジニアでいわゆるレンズのプロである私(高山仁)が、レンズの時代背景や特許情報から設計値を推定し、知られざる真の光学性能をやさしく紹介します。

当記事をお読みいただくと、あなたの人生におけるパートナーとなるような、究極の1本が見つかるかもしれません。

作例写真は準備中です。

レンズの概要

ズームレンズの中でも、プロ御用達の上位レンズの一部は俗に「大三元レンズ」と呼ばれています。

大三元レンズは、焦点距離仕様が広角ズーム/標準ズーム/望遠ズームの3本の組合わせで、かつFnoの仕様が広角端から望遠端までF2.8一定(通し)の明るい大口径ズームレンズであることが一般的です。

フィルム時代からデジタルカメラへ移行した創成期には撮像素子の感度が低かったため、高速なシャッタースピードを確保できるFnoの明るい大三元レンズを用意することはプロなら当然で、アマチュア層からすれば憧れの機材でした。

近年はカメラの撮像素子感度が向上し、シャッタースピードの問題から少し開放されてはいるものの、星景写真やスポーツの分野ではまだ大口径レンズの需要は高く、また大口径レンズならではのボケ味の観点でも重宝されているのはご存じでしょう。

それでは、当記事で分析するSONYの大三元レンズの一角である大口径望遠ズームレンズの系譜を確認しみましょう。

   ※(カッコ)発売日

MINOLTAは、かつてオートフォーカス一眼レフを世界で初めてシステム化した名門カメラ企業でしたが、2006年にSONYへカメラ事業を譲渡していますので、MINOLTAからSONYまでを一覧にまとめています。

過去の記事では、昭和末期の1987年に発売されたMINOLTA時代の初代大口径ズーム80-200mm F2.8や、ミラーレスカメラ用として平成末期の2016年に発売のFE70-200mm F2.8(第一世代)を分析しました。

MINOLTAからカメラ事業を継承したSONYは、2013年にαシリーズをフルサイズのミラーレス一眼カメラ(Eマウント)へと進化させました。

フルサイズミラーレスも、発売当初こそ一眼レフカメラに対するデメリットが取り沙汰され喧々諤々の議論がありましたが、着実な進歩を重ね2020年頃にはついに一眼レフカメラをカメラを追い抜くに至ります。

2020年代ともなるとSONYのフルサイズミラーレス一眼用のFEレンズもラインナップが一巡し、一部リニューアルが始まります。

今回の70-200mm F2.8 GM IIもリニューアルされたもので、ミラーレスカメラ用としては第二世代に相当します。

第一世代のFE 70-200mmと、第二世代の違いは公式HPによると以下の違いだそうです。

  • 軽量化:約29%軽量化
  • AF性能:最大約4倍高速化
  • 動画撮影性能:動画撮影に最適な設計
  • 操作性:スイッチ類などの進化

新旧のレンズではかなりの違いがあるようで、レンズの構成からもこの違いを読み解いてゆきたいと思います。

続いて少し、レンズの名称の説明します。

レンズ名の「GM」は、SONYレンズの最高峰シリーズである「G Master」の略で、元はMINOLTAレンズの上位グレードを示す「G」の表記を継承したものです。

名称末尾のOSSは「Optical Steady Shot」の略で「光学式手振れ補正」を搭載することを示します。

文献調査

SONYは特許を気まぐれに出願する傾向がありますが、特開2023-39817には様々な構成の大口径望遠ズームが記載されており、この文献の中で実施例2が製品形状に酷似jしていることがわかりました。

今回はこれを製品化したと仮定し、設計データを以下に再現してみます。

 関連記事:特許の原文を参照する方法

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。

設計値の推測と分析

性能評価の内容などについて簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

左図(青字WIDE)は広角端で焦点距離70mm、右図(赤字TELE)は望遠端で焦点距離200mm

上図がSONY FE 70-200mm F2.8 GM OSS IIの光路図になります。

本レンズは、ズームレンズのため各種特性を広角端と望遠端で左右に並べ表記しております。

左図(青字Wide)は広角端で焦点距離70mmの状態、右図(赤字Tele)は望遠端で焦点距離200mmの状態です。

英語では広角レンズを「Wide angle lens」と表記するため、当ブログの図ではズームの広角端をWide(ワイド)と表記しています。

一方の望遠レンズは「Telephoto lens」と表記するため、ズームの望遠端をTele(テレ)と表記します。

さらに、当ブログが独自開発し無料配布しておりますレンズ図描画アプリ「drawLens」を使い、構造をさらにわかりやすく描画してみましょう。

レンズの構成は14群17枚、黄色で示すのは望遠レンズで特に補正が困難である軸上色収差に効果的な特殊低分散材料ED(Extra-Low Dispersion)ガラス、紫に示すのはさらに強力で蛍石にも匹敵する補正効果を持つ超低分散材料Super EDで、非常に大口径な第2と第3レンズに搭載されています。

赤色で示す2枚は球面収差や像面湾曲の補正に効果的な非球面Asphericalレンズで、このうち撮像素子側の非球面レンズは超高度非球面XA(extreme aspherical)レンズで表面の研磨精度を極限まで高めることで輪線ボケを抑えた自然なボケ味を実現しています。

緑色で示すのは特殊低分散材料であるEDを非球面にした殊更に特殊なED非球面レンズです。

特殊材料は第一世代レンズにも多数採用されていましたが、全体の構成枚数が23枚⇒17枚へと大きく削減されています。

重量が約3割も軽量化された秘密がここにあるようですね。

構成枚数を大きく減らしていますが性能に問題が出ないのか?その疑問の答えを探るため続いて、ズーム構成について以下に図示しました。

上図では広角端(WIDE)を上段に、望遠端(TELE)を下段に記載し、ズーム時のレンズの移動の様子を破線の矢印で示しています。

ズーム構成を確認しますと、レンズは実質的に全7ユニット(UNIT)構成となっています。

第1ユニットは、全体として凸(正)の焦点距離(集光レンズ)の構成となっていますが、このズーム構成を凸(正)群先行型と表現します。

この凸群先行型は、望遠端の焦点距離が70mmを越えるズームレンズで多い構成です。

高倍率ズームや望遠ズームレンズは、ほとんど全て凸群先行型と見て間違いありません。

第1ユニット、第5ユニット、第8ユニットは固定ですが、第2ユニット、第3ユニット、第4ユニット、第7ユニットが望遠端になるにつれて撮像素子側へ移動し、第6ユニットは被写体側へ移動します。

第一世代レンズでは、ズーム時の移動ユニットは3つしかありませんでしたが、今回の第二世代レンズでは5個ものユニットを移動させています。

8個もユニットに分かれ複雑怪奇に移動するのは過去の分析した事例でも最高数ではないでしょうか。

レンズの構成枚数を削減して軽量化しながらも高性能を実現するために、複雑な移動方式を採用したようです。

なお、望遠ズームレンズには、第1ユニットが固定の物と飛び出す(移動する)物の2種類があります。

第1ユニットが飛び出すタイプは、広角端の状態にすると全長をとても小さくできるので、高い携帯性を求めるユーザーに人気です。

第1ユニットが固定のタイプは、堅牢性が高く、ホコリや水分の入り込みも少なく、報道機関など荒っぽい現場では好まれるようですね。

大口径望遠ズームは、スポーツや報道などの現場でも使われることが多いためか、第1ユニットを固定式にすることが一般的のようです。

凸先行型のズームレンズは、第2ユニットに複数の凹レンズを詰め込んだ力強いレンズを配置するのがセオリーですが、当レンズはこれを3つのユニットに分割して移動させています。

独創的な社風で知られるSONYらしさが滲みますね。私のように常識に縛られた人間には発想できません。

また、第6ユニットと第7ユニットはピント合わせ時にも移動するフォーカス(Focus)ユニットも兼ねています。

2つのフォーカスユニットを同時に移動させる方式を一般的にフローティングフォーカス機構と呼びます。

第一世代レンズでは、巨大な第1ユニットの一部を動かしてフォーカスしていましたが、当レンズは小型軽量な第6/第7ユニットへフォーカスを移設したことでオートフォーカス速度の超高速化を達成しているものと推測されます。

さらに、第5ユニットの一部は、光学式手振れ補正OSS(Optical Steady Shot)の機能を担っており、OSSレンズを瞬時に振動させることで手振れを打ち消します。

画質を損なうことなく手振れを補正を実現するために、振動状態の性能変動までも補正する高度な収差補正が行われているのです。

縦収差

左図(青字WIDE)は広角端で焦点距離70mm、右図(赤字TELE)は望遠端で焦点距離200mm

左から、球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

画面中心の解像度、ボケ味の指標である球面収差から見てみましょう、基準光線であるd線(黄色)を見ると第一世代の時点ですでに広角端側も望遠端側も十分に補正されていましたが、第二世代の当レンズも十分に小さく補正されています。

画面の中心の色にじみを表す軸上色収差は、第一世代では広角端側で少し補正の甘さがありましたが、第二世代の当レンズは十分に小さく補正され、広角端も望遠端も軸上色収差は完全に補正されたと言えるでしょう。

像面湾曲

画面全域の平坦度の指標の像面湾曲は、甲乙つけ難いレベルの高さですが、第一世代よりもよりスッキリとした印象がありますね。

歪曲収差

画面全域の歪みの指標の歪曲収差は、少々意外で左図の広角端ではほとんどゼロに補正されています。一方の右図の望遠端ではプラス側へ倒れる特性で撮影すると糸巻き型になり、ズームレンズとしては平均的レベルです。

近年のレンズの歪曲収差は、画像処理を前提として少し大き目に残すレンズが多くなっていますが、意外なところです。

画像処理で補正するとわずかですが画像にノイズが増えるのも事実として存在するため、収差とノイズどちらを取るかバランスさせた結果なのでしょうか。

倍率色収差

左図(青字WIDE)は広角端で焦点距離70mm、右図(赤字TELE)は望遠端で焦点距離200mm

画面全域の色にじみの指標の倍率色収差も、近年のレンズは画像処理での補正に任せるレンズが多くなりましたが、当レンズは第一世代のレンズより改善しています。

色収差は、レンズの材料で抑える種類の収差ですが、レンズ構成枚数をより削減する中でさらに色収差を改善しているのですから恐れ入ります。

横収差

左図(青字WIDE)は広角端で焦点距離70mm、右図(赤字TELE)は望遠端で焦点距離200mm

タンジェンシャル、右サジタル

画面内の代表ポイントでの光線の収束具合の指標の横収差として見てみましょう。

左列タンジェンシャル方向は、広角端も望遠端もとても綺麗で、コマ収差(非対称)も非常に少ないようです。

右列サジタル方向は、右図の望遠端側は画面周辺まで十分補正されています。広角端側は画面中間あたりから少しグラフの傾きが目立ちます。

おススメの記事レンズのプロが教えるクリーニング方法

スポットダイアグラム

左図(青字WIDE)は広角端で焦点距離70mm、右図(赤字TELE)は望遠端で焦点距離200mm

スポットスケール±0.3(標準)

ここからは光学シミュレーション結果となりますが、画面内の代表ポイントでの光線の実際の振る舞いを示すスポットダイアグラムから見てみましょう。

軸上色収差と倍率色収差が削減されたことで第一世代よりスポットがさらに一段と小さくなっているようです。

スポットスケール±0.1(詳細)

さらにスケールを変更し、拡大表示したスポットダイアグラムです。

より拡大して見ても倍率色収差が小さくなったため色ごとのズレも改善されています。

MTF

左図(青字WIDE)は広角端で焦点距離70mm、右図(赤字TELE)は望遠端で焦点距離200mm

開放絞りF2.8

最後に、画面内の代表ポイントでの解像性能を点数化したMTFによるシミュレーションの結果を確認してみましょう。

開放絞りでのMTF特性図で画面中心部の性能を示す青線のグラフを見ると、第一世代の時点で非常に高い特性となっていたため大きな改善は見られませんが、双方のレベルが非常に高すぎることによる問題ですね。

小絞りF4.0

FnoをF4まで絞り込んだ小絞りの状態でのMTFを確認しましょう。一般的には、絞り込むことで収差がカットされ解像度は改善します。

光学系として色収差の改善が効いているようで、絞ると第一世代のレンズより改善するようです。

開放Fnoではこれ以上の改善が難しいと見て、実使用頻度の高い絞り込み時の改善効果を狙ったのでしょう。

総評

SONY FE 70-200mm F2.8 GM OSS IIは、主に色収差などで第一世代を凌ぐ性能を実現しながら、約3割の軽量化やオートフォーカスの高速化を達成し、格段の進歩を見せつけてくれました。

しかしながら、動体撮影を主としないのであれば第一世代のレンズも十分に現役と言えるレベルの性能を有していることもわかり、これまたレンズ選びがますます難しくなったわけですから困りものですね。

改めて第一世代のレンズをご覧になりたい方はこちらをご覧ください。

 関連記事:SONY FE 70-200mm F2.8 GM OSS(第一世代)

 

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以上でこのレンズの分析を終わりますが、今回の分析結果が妥当であったのか?ご自身の手で実際に撮影し検証されてはいかがでしょうか?

それでは最後に、あなたの生涯における運命の1本に出会えますことをお祈り申し上げます。

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作例・サンプルギャラリー

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当ブログで人気の「プロが教えるレンズクリーニング法」はこちらの記事です。

製品仕様表

製品仕様一覧表 SONY FE 70-200mm F2.8 GM OSS II

画角34-12.3度
レンズ構成14群17枚
最小絞りF22
最短撮影距離0.4-0.82m
フィルタ径77mm
全長200mm
最大径88mm
重量1045g
発売日2021年11月26日

その他のレンズ分析記事をお探しの方は、分析リストページをご参照ください。

以下の分析リストでは、記事索引が簡単です。

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