レンズ分析

【レンズ性能評価】NIKON Ai AF DC NIKKOR 135mm F2S Part2:DC編 -分析091

ニコン Ai AF DC ニッコール 135mm F2Dの性能分析・レビュー記事です。

当記事は、前後2部構成の後半となり、DC機能(Defocus Image Control:ボケ可変)に関する詳細分析を行います。

DC NIKKOR 135mm F2.0の基本性能については前半の収差分析編をご参照ください。

 関連記事:NIKON AiAF DC NIKKOR 135mm F2 収差分析編

DC機能の概要

DC NIKKOR 135mm F2.0はニコンの大口径中望遠で、DC機能(Defocus Image Control:ボケ可変)が搭載された特殊なレンズです。

一般的な単焦点レンズであれば、ピント合わせのためのフォーカスリング、Fno変更のための絞りリングの2種が搭載されています。

さらにDC NIKKORでは、ボケ味を変化させるための「DCリング」も備えています。

まず、DCリングの構造を簡単に紹介しましょう。

レンズの構造

上図は、DC NIKKOR 135mm F2の光路図に構造説明を追記したものです。

第3レンズと第4レンズがDCレンズユニットで、DCリングを操作するとユニットが前後に移動します。

第5レンズから第7レンズは、ピント合わせを行うためのフォーカスユニットになります。

DCレンズを操作すると、光学的には球面収差が変化することで、ピントを合わせた部分の解像感はあまり変化しませんが、背景や前景のボケの様子が変化します。

ボケの評価条件

ボケをシミュレーションで評価するために条件を定義から始めます。

当ブログにおいて一般のレンズの分析記事では、撮影距離が「無限」での性能を分析し評価しています。

「無限」の距離とは、星を撮影するような極遠距離になります。

ここで問題となるのは、無限距離では背景が存在しないため「後ボケ」が定義できません。

そのため、背景と前景の両方がバランスよく画面内に存在しそうなシチュエーションを改めて定義し、その条件で光学シミュレーションを行い比較検証を行います。

評価条件

上図は評価条件のイメージを図にまとめたものです。

焦点距離135mmのレンズで、カメラから約4m離れたモデルを撮影しているとお考え下さい。

背景には樹木があり、前景には花が咲いています。

この条件で撮影すると、背景の樹木は「後ボケ」、前景の花は「前ボケ」に相当します。

ちなみにモデルは、日本人女性のおおよその平均身長である158㎝を基準としています。

焦点距離135mmのレンズで4m先を撮影すると縦711mm程度の範囲が写りますから、証明写真ぐらいの撮影になります。

上図の比率は、正確に描画しています。

この条件であれば、後ボケと前ボケのある実用的な条件でのシミュレーションになりますね。

良いボケ味とは?

続いて、良いボケとは何か?どのように評価すれば良いのか?

ボケの良さと悪さの定義を考えてみます。

良いボケ・悪いボケの判断は感覚的なものですから、とても定義が難しいのですが、DC NIKKOR 135mm F2の特許文献(特開平1-259314)ではスポットダイアグラムを使ってボケの良否判断を説明していましたので、これに従い定義したいと思います。

スポットダイアグラム

上図は、スポットダイアグラムの一例です。

当ブログのいつものレンズ分析記事では、光波長ごとに4色の計算結果を掲載していますが、今回はボケ味の評価を行うために基準光線であるd線だけを表示します。

なお、d線はいつもは黄色で書くのですが、シミュレーションソフトの都合で1種の光だけ計算すると、赤色しか設定できませんでしたのでご了承ください。

 関連記事:スポットダイアグラム

スポットダイアグラムと評価条件の関係

スポットダイアグラムと評価条件がどのように関連するのか、図にまとめてみました。

上図の撮影ではモデルにピントを合わせるので、モデルの位置がスポットダイアグラムの中央列に相当します。

背景となる樹木は、左側の列となり、後ボケに現れる特性を示しています。

反対に、前景となる花は、右側の列となり、前ボケに現れる特性を示します。

良いボケ・悪いボケ

ピント合っている場所とは、スポットが小さな点にまとまった状態です。

反対に背景や前景などのピントの合わない領域ではスポットが広がりを持った状態となります。

特許文献(特開平1-259314)では、この時のスポットの広がり方が、すなわちボケ味に相当すると説明されています。

文献によれば、図の右側のように中心に核を持ち、一様に広がる形状となるのが「良いボケ」のスポット形状になります。

図の左側のように、中央部はまばらで周辺でリング形状になるのが「悪いボケ」のスポット形状となります。

球面収差がゼロにできない限り、後ボケか前ボケのどちらかは「悪いボケ」になります。

DC NIKKOR 135mm F2では、DCリングを操作することで、悪いボケの発生個所を移動させ背景と前景で入れ替えることができます。

では、具体的に光学シミュレーションを使ってボケを評価してみましょう。


記事の途中ですが、カメラマンは眼が命です。眼精疲労を感じたらこちらはいかがでしょうか?

収差で見るボケ味

ニュートラル状態

最初にDCリングを中央にし、4m先の被写体を撮影した性能から確認します。

中央にセットすることでボケ味は標準的(ニュートラル)な状態になります。

縦収差

左から、球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

左側の球面収差図の基準光線d線(黄色)を見ると、マイナス側にふくらみを持つフルコレクション型でレンズ枚数の少なめな構成では一般的な収差のまとめ方です。

像面湾曲や歪曲収差も小さめにまとまっています。

スポットダイアグラム

DCリングを中央にしたニュートラルな状態では、スポットダイアグラムの左列側の後ボケ側は良好なボケ味になる「拡散した形状」に近く、右列側の前ボケ側に悪いボケを示す「リング形状」が見られます。

フルコレクション型で収差をまとめると、像面湾曲との相性が良いとか、小絞りにした時の性能変動が発生しづらい、などの利点があります。

さらにボケに着目して考えると、一般に前ボケは発生率が低いこと、発生しても大ボケとなって味のような差が出づらい、などシチュエーション的に背景ボケの味が良くなるようにしている、そんな考察もできます。

しかし細かく見るとニュートラル状態は、左列の後ボケ側のボケ味が良好となる拡散形状ですが、スポットに「核が無い」ので理想的なボケ味までは達していないとも見ることができます。

ニュートラル位置は、中途半端な状態であるとも言えますね。

MTF

画面の各位置での解像度を示すMTFを見ると、画面中心から周面まで均質な性能であることがわかります。

前ボケ優先状態

次ににDCリングを「F側」に回した状態です。

F側にセットすることでボケ味は「前ボケ優先」の状態に変化します。

縦収差

左から、球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

左側の球面収差図の基準光線d線(黄色)を見ると、マイナス側に大きく倒れており、球面収差としては補正不足の状態を示しています。

像面湾曲や歪曲収差は変化が無いようで、球面収差だけが変化していることがわかります。

スポットダイアグラム

DCリングをF側にした前ボケ優先の状態では、スポットダイアグラムの左列側の後ボケ側は悪いボケを示す「リング形状」が見え、右列側の前ボケ側は良好なボケ味になる「核を持って拡散した形状」となります。

ニュートラル状態とは密度も濃いうえに反対の位置となりました。

一方で、ピントを合わせた位置である中心列のスポットはそれなりに小さくまとまっていますが、画面中間の像高12mmを超えるとスポットの像が変化しコマ形状になっており周辺部の解像度がやや落ちることがわかります。

MTF

画面周辺部でのスポットの広がる様子からわかるように、画面画面周辺に行くに従いだいぶ山が平坦になっており、画面周辺ほど解像度の低下が顕著になることがわかります。

後ボケ優先状態

最後にDCリングを「R側」に回した状態です。

R側にセットすることでボケ味は「後ボケ優先」の状態に変化します。

縦収差

左から、球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

左側の球面収差図の基準光線d線(黄色)を見ると、プラス側に大きく倒れており、球面収差としては過剰補正の状態を示しています。

像面湾曲や歪曲収差は変化が無いようで、球面収差だけが変化していることがわかります。

スポットダイアグラム

DCリングをR側にした後ボケ優先の状態では、スポットダイアグラムの左列側の後ボケ側は良好なボケ味になる「核を持って拡散した形状」となり、右列側の前ボケ側は悪いボケを示す「リング形状」となります。

ニュートラル状態に比較すると、後ボケ側では良好なボケ味になる「核を持って拡散した形状」に近づいており、より良いボケ味となっていることがわかります。

MTF

スポットの形状はまるみは維持していますが、スポットの散らばりが画面全域で増えてため全体にMTFが10ポイント程度低下しているようです。

ボケ味を良くするために解像度も少々犠牲になるようです。

DCリングは無段階に可変できますから、被写体によってボケ可変効果を増減させることが肝要ですね。

実写比較

まずは、先のスポットダイアグラムを見やすく3つ並べました。

左から、後ボケ優先、ニュートラル、前ボケ優先の順です。

実写も同じように配置しました。

左側「後ボケ優先」は、最も背景が滑らかにボケているのが良くわかりますが、メインの被写体も少々解像度が低下しています。

中央「ニュートラル」は、少々背景のボケが硬いのがわかりますね。メインの被写体はしっかり解像しています。

右側「前ボケ優先」は、背景にきつい輪郭のような物が残り、これは一般に「二線ボケ」と言われ嫌われるタイプのボケですね。

まとめ

DC NIKKOR 135mm F2は巧みな収差コントロール機能によってボケを操ると言う希少な機能を持つレンズです。

一般には使い方が難しいと良く言われますが、収差の変化を頭に入れることでより自在に扱うことができるようになったかも…しれませんよ。

  前半記事:NIKON AiAF DC NIKKOR 135mm F2 収差分析編

もし、ご興味があれば下記のリンクより購入も可能なレンズですが、Fマウントの終焉も見えてきましたので最後のチャンスかもしれませんね。

このレンズは、NIKONの設計者自身が語った開発秘伝集にも収められています。


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