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【深層解説】 オリンパス大口径中望遠レンズ OLYMPUS Zuiko 100mm F2.0-分析002

この記事では、オリンパス の一眼レフカメラ用交換レンズシリーズの大口径中望遠レンズ ズイコー 100mm F2.0の歴史と供に設計性能を徹底分析します。

さて、写真やカメラが趣味の方でも、レンズの仕組みや性能の違いがよくわからないと感じませんか?

当ブログでは、光学エンジニアでいわゆるレンズのプロである私(高山仁)が、レンズの時代背景や特許情報から設計値を推定し、知られざる真の光学性能をやさしく紹介します。

当記事をお読みいただくと、あなたの人生におけるパートナーとなるような、究極の1本が見つかるかもしれません。

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レンズの概要

現代にもその名を残すOLYMPUS(現OMDS)の銘カメラと言えばOMシリーズですが、元は1970年代より始まるフィルム式一眼レフカメラがその源流です。

OLYMPUS初の35mmフイルムを採用したレンズ交換式一眼レフカメラ「OM-1」は1972年に発売され、当時の35mmフィルム一眼レフカメラの中で最小・最軽量で驚異的なサイズ感を実現したカメラでした。

OMシステムに合わせて準備されたのがOMマウント専用「Zuiko(ズイコー)」レンズ群で、基本のフィルタサイズがφ49かφ55とレンズも小型化されながら高画質化も達成し人気のシステムとなりました。

Zuikoレンズシリーズの特徴的な点のひとつは、FnoがF2.0と当時では大口径なレンズが多数発売されたことが挙げられます。

多くのレンズで「F2.0大口径」と「F2.8あるいはF3.5などの小口径」の2系列からレンズが選べるようになっていたのです。

F2.0仕様のレンズが用意された焦点距離は、21mm、24mm、28mm、35mm、85mm、90mm100mm、180mm、250mmと、ほぼ隙間なく用意されています。

今回分析するZuiko 100 F2は、オリンパスOMマウント用のZuikoレンズシリーズでは大口径中望遠の銘玉と称賛されるレンズです。

焦点距離100mmはどこか懐かしさを感じさせる仕様です。それは近年、単焦点100mmの大口径製品をあまり見かけないからかもしれません。

マクロレンズの定番が100mm F2.8なので各社とも仕様のかぶりを考慮して100mm単焦点が少なくなったのでしょう。

さて、このZuiko 100 F2は手に取るとずっしりとした重みがありますが、AF機構や手振れ補正機構などを搭載した現代的レンズに比較すればかわいい大きさです。

しかしながら、オールドレンズらしいガラスと金属の塊感や密度感がすばらしく是非ともコレクションしたくなる手触りです。

Zuikoレンズは、よく小口径のレンズが銘玉に挙げられることが多いように思いますが、中望遠の焦点距離レンジではこのZuiko 100mm F2.0とZuiko 90mm F2.0が並んで銘玉として挙げられています。

私がこのZuiko 100mmを購入したのは2000年ごろでしたが、購入の前に同じく銘玉扱いのZuiko 90mm F2.0マクロと悩んだ記憶があります。

当時の判断としては、マクロは他のマウントのレンズを持っていたので、結局はこちらのZuiko 100mm F2.0を買ったのでした。

このレンズを初めて使った日の事をなんとなく覚えていますが、ファインダーから見た像がすでに綺麗で「これは良い写真が撮れるな」と撮る前から感動しました。

当時はまだフィルム全盛で、明るいFnoで性能の良いレンズというのは限られていますからそれぐらい感動するわけです。

olympus zuiko 100mm f2.0

文献調査

1970年代後半ぐらいからの特許文献を総当たりで調べると2件ほど製品の断面図と類似する物がありますが、両方とも近距離撮影時の性能を改善したことを特徴として権利化されています。

具体的な改善策としてはフォーカス時に2つのレンズ群を同時に別体移動させるフローティングフォーカスを導入することで無限遠距離から近距離まで性能を均質に高めることを実現しているようです。

分解しないとフローティングフォーカスしているのか判断できませんが、しているものと仮定しましょう。入ってた方がうれしいですし…

特許文献より断面図の形状が類似し、公開年代や性能の様子から特開昭57-111506の実施例1が製品構成に類似すると予想しこれを設計値として再現してみます。

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。

設計値の推測と分析

性能評価に関する設定詳細は、以下のリンク先にまとめてあります。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

上図がzuiko 100 F2.0 の光路図です。

6群7枚構成、ダブルガウスタイプの前側に凸を追加した典型的なガウス中望遠タイプです。

本来のガウスタイプは焦点距離50mmぐらいに適するため、本レンズはそれより長い焦点距離100mmまで伸ばしたためガウスらしい対称構造は少しくずれてしまいます。

とは言え、100mmぐらいまでは性能確保は可能でしょう。

レンズの材料を見てみますと第2レンズに特殊低分散材料を採用しています。ニコンならEDガラスと言う名前です。

特殊材料を採用すると製品名に特別な名称を入れそうですが、入れないのがオリンパスの奥ゆかしい所でしょうか。

なお、一眼レフ用レンズの基礎たるガウスタイプの簡単な説明は以下のリンクをご参照ください。

 関連記事:ダブルガウスレンズ

縦収差

球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

球面収差は十分に補正されています。

この枚数でこれ以上に補正すると絞り込み時に像面湾曲とのバランスがくずれるのでほんのりフルコレクションにしておくのがポイントです。

軸上色収差はもう少しg線をプラス側にしたくなりますが、倍率色収差とのバランスに配慮した結果でしょうか。

像面湾曲

像面湾曲は大口径の部類ですが、適切に補正されています。

歪曲収差

歪曲収差は焦点距離が長くなると糸巻き側の歪曲が発生しますが、100mmならそこまで長焦点でもないのでほぼゼロに補正されています。

倍率色収差

倍率色収差は、対称型を外れた構成となってきているので収差補正には若干難が出ているようです、開放側では倍率色はあまり目立たない事が多いので実用上は気にならないとは思います。

そもそも開放側を楽しむレンズですから小絞りの性能は問題では無いでしょう。

横収差

横収差として見てみましょう。

Fnoの値からするとクセも無く十分に補正されています。銘玉と言われる由縁でしょう。

このSSDを購入しました。最高に良いです。

スポットダイアグラム

スポットスケール±0.3(標準)

ここからは光学シミュレーション結果となりますが、最初にスポットダイアグラムから見てみましょう。

軸上色収差から予想するに赤の収差が目立ちそうでしたが、スポットでみるとバランスは良さそうです。

スポットスケール±0.1(詳細)

MTF

開放絞りF2.0

最後にMTFによるシミュレーションの結果を確認してみましょう。

開放からすでにMTFは高く、周辺部のピントも一致しています。確かに銘玉認定の性能です。オールドレンズとしは面白みが無いのかもしれませんが…

少し面白いのは中心部の性能と周辺部の性能がかなり均質でそろっている点です。

通常、中心ばかり上がってしまいますが、このレンズは画面全域で均質で高性能な点が特に素晴らしい描写に繋がるものと思います。

小絞りF4.0

開放ですでに十分構成なため、絞っても大きな変化はありませんが、より像面湾曲が減少します。現代でも違和感無い性能です。

総評

これほど少ないレンズ枚数で「ここまで性能が高まるものか」と感心するほどの性能です。

実写しても申し分のない性能ですが、近年の超高性能レンズと比較しますと、軸上色収差が若干多めに残っており、少々まるみのあるやさしい描写を楽しめますね。

当時の銘玉として各所で認定されたことにも納得の性能でした。

なお焦点距離の近い近代的レンズ設計の代表例として、SIGMA Art シリーズからSIGMA 105mm F1.4を分析しておりますので以下のリンク先を参考にご覧ください。

 関連記事:SIGMA 105mm F1.4

以上でこのレンズの分析を終わりますが、最後にあなたの生涯における運命の1本に出会えますことをお祈り申し上げます。

LENS Review 高山仁

マップカメラ楽天市場店

もし、ミラーレスカメラをお持ちでしたらマウントアダプターを使用すれば再びZuiko 100mm F2で撮影が可能です。

こちらの商品はOM用ZuikoレンズをソニーのミラーレスカメラのEマウントへ取り付けるためのアダプターです。

OM用ZuikoレンズをニコンのミラーレスカメラのZマウントへ取り付けるアダプターもあります。

このレンズに最適なカメラをご紹介します。

作例・サンプルギャラリー

特に注釈の無い限り全て開放Fnoの写真です。

さらに多くのZuiko 100mm F2の作例はこちらにもあります。

 関連記事:実写 Zuiko 100mm F2 【上野編】

USB高速充電

製品仕様表

OLYMPUS Zuiko 100 F2.0製品仕様一覧表

画角24度
レンズ構成6群7枚
最小絞りF22
最短撮影距離0.7m
フィルタ径55mm
全長72mm
最大径70mm
重量500g

その他のレンズ分析記事をお探しの方は、分析リストページをご参照ください。

以下の分析リストでは、記事索引が簡単です。

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  • この記事を書いた人

高山仁

いにしえより光学設計に従事してきた世界屈指のプロレンズ設計者。 実態は、零細光学設計事務所を運営するやんごとなき窓際の翁で、孫ムスメのあはれなる下僕。 当ブログへのリンクや引用はご自由にどうぞ。 更新情報はXへ投稿しております。

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