レンズ分析

【レンズ性能評価】HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR -分析099

ペンタックス FA 21mm F2.4 Limitedの性能分析・レビュー記事です。

レンズの仕組みやその性能は一体どう違うのか、具体的な違いがほとんどよくわかりませんよね。

雑誌やネットで調べても似たような「口コミ程度のおススメ情報」そんな記事ばかりではないでしょうか?

当ブログでは、レンズの歴史やその時代背景を調べながら、特許情報や実写作例を元にレンズの設計性能を推定し、シミュレーションによりレンズ性能を技術的な観点から詳細に分析します。

一般的には見ることのできない光路図や収差などの光学特性を、プロレンズデザイナー高山仁が丁寧に紐解き、レンズの味や描写性能について、深く優しく解説します。

あなたにとって、良いレンズ、悪いレンズ、銘玉、クセ玉、迷玉が見つかるかもしれません。

それでは、世界でこのブログでしか読む事のできない特殊情報をお楽しみください。

作例写真は準備中です。

レンズの概要

PENTAXのLimitedシリーズとは、描写性能と製品サイズ感のバランスを取りつつ、上質で確かな造りの外装を纏わせることで「所有する喜び」も追及する現代の銘品と言えるレンズシリーズです。

Limitedシリーズにはフルサイズ用のFA-Limited、PAS-Cサイズ用のDA-Limitedの二系統が存在し、執筆時現在(2022年)フルサイズ用のFAL imitedは計4本のレンズが販売されております。

当記事で紹介するFA 21mm F2.4は、前のLimited製品であるFA 77mmが発売された2002年からおよそ20年の沈黙期間を経て、久しぶりに発売されたフルサイズ用Limitedレンズとなります。

詳しくは大変に力の籠った公式サイトにある特設ページをご覧いただくことをお勧めします。

この特設ページで私が気になった情報を引用させていただくと、PENTAX内にはLimited委員会なる専門組織が存在し、設計性能を評価し製品化の判断を行っているそうです。

思うにLimited委員会とは、信じられないぐらいカメラやレンズに詳しい会社の役員クラスの重鎮が、鬼のような形相でレンズの設計値を評価している、そんな非情な組織と推測されます。

設計担当者としては心底恐ろしい組織ではないでしょうか…

 ※注:すべて勝手な推測です。

私的回顧録

もう少し、レンズ仕様について考えてみましょう。

まずは焦点距離と画角の関係を表にまとめてみました。

焦点距離[mm]画角[度]
2191.7
2484.1
3169.8
3563.4
4353.4
51.6(50)45.5
5542.9
7731.4
8528.6
10523.3

広角側は当記事のレンズと同じ焦点距離21mm、表の中央部には焦点距離51.6mmを記載しています。

なぜ標準レンズ50mmではなく51.6mmかと言うと、LEICAのレンズの仕様に由来しています。

LEICAの標準レンズは、表記としては焦点距離50mmですが実際の数値は51.6mmになっており、多くのメーカーがこれを踏襲しています。

よって、業界標準の数値を基準値とし51.6mmとしました。

ここで、焦点距離51.6mmの標準レンズの画角は45.5度になり、この画角を2倍すると91度なので「焦点距離21mmレンズに相当」します。

言い換えると、PENTAX 21mm Limitedは、標準レンズの約2倍の画角のレンズ、と言えます。

同様に、PENTAX 31mm Limitedは、標準レンズの約1.5倍の画角

さらに、PENTAX 77mm Limitedは、標準レンズの約0.7倍の画角

Limitedレンズは、一見するとあまり見慣れない焦点距離仕様の構成となっていますが「偶然ではない必然」の数値で構成されていると推察されます。

要は「この3本をそろえて持つ事に意義がある」とPENTAXは暗示しているわけですね。

となれば、次なるLimitedレンズは、標準レンズの約0.5倍の画角となる「焦点距離105mm」に期待してしまいますが、いつのことになるでしょうか…

ただし、PENTAX 43mm Limitedはこれと異なる法則で、35mm版フィルムの対角線長に合わせたとされています。

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文献調査

日課となっている特許データパトロールのさなかに発見しましたのは、特開2022-117772と特開2022-117775の2件です。

同時期に似た構成の実施例を元に出願されているようです。

特許は、その特徴(権利範囲)が異なれば実施例は同じでもかまいませんので、このように似た実施例を使い複数の特許を同時に出願する事はよくある事です。

その分だけ多く目を通さなければならない私としては、面倒なので1件にまとめていただきたいものですが…

実施例は厳密には全てことなるようですが、性能的には大きな差異は無いようなので、特開2022-117772の実施例1を製品化したと仮定し、設計データを以下に再現してみます。

 関連記事:特許の原文を参照する方法

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。


当記事を読み終えますとレンズを購入したくなる恐れがございますので、事前に防湿庫の増設を検討されることをおススメいたします。

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設計値の推測と分析

性能評価の内容などについて簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

上図がPENTAX-D FA 21mm F2.4 Limitedの光路図になります。

8群11枚構成、色収差を補正するための3枚(第3/第5/第7/第11レンズ)の特殊低分散ガラスとさらに超特殊低分散ガラスも1枚(第9レンズ)採用し、球面収差や像面湾曲の補正に効果的な非球面レンズを2枚(第2/第11レンズ)採用していますが、うち1枚(第11レンズ)は異常分散ガラスを非球面レンズへ加工しているようです。

現代的なレンズとしては控え目な11枚のレンズ枚数ですが「そのレンズ総数の半数以上の6枚が特殊レンズで構成されている」実に豪華な構成です。

Limitedレンズらしい外観的な品位を実現するために、あるだけの特殊材料をつぎ込み小型化と画質の両立を図ったことがわかります。

過去に分析した古き良き時代のZuikoレンズと比べていただくとわかりやすいかもしれません。

 関連記事:OLYMPUS Zuiko 21mm F3.5

特殊低分散ガラスとは、異常分散ガラスとも称され、多くのメーカーではEDとの略称で表記される特殊なガラス材料です。

ガラス材料の一覧である「ガラスマップ」の中でどのような位置の材料を指すのか表記してみました。

異常分散性とは、ガラスが及ぼす色収差への影響度の異常性を示す指標で、一般的なガラスとどれだけ異なるかを示し、本来は「Θgf特性図」なるグラフで比較するのがわかりやすいのですが、あまり一般的ではないのでガラスマップと呼ばれる「nd-vd特性図」で表現してみます。

この図は、日本の写真用レンズを生産するメーカーでも最大手のHOYA社のガラス全種類を表示したnd-vd特性図を元に、少し見やすく加筆させていただいたものです。

このグラフの概念は、縦軸は屈折率(nd)で光を曲げる強度、横軸は分散(vd)で色収差の発生量のに相当します。

小さな点がたくさんありますが、この1点づつがガラスの種類に相当します。数えていませんが全100種はあるでしょうか。

一般的に、どの材料を特殊低分散(ED)と称するかは具体的には公表されていませんが、特許文献やレンズメーカーの公式サイト情報などから推測すると「特殊低分散ガラス(ED)は青丸」あたりの領域で、「超特殊低分散ガラス(SuperED)は赤丸」あたりの領域の材料を指しているようです。

現代において、特殊低分散ガラス(ED)を1枚程度採用するレンズはさほど珍しくはありませんが、当記事のPENTAX FA 21mm F2.4 LimitedはEDを4枚も採用し、かつ1枚は非球面レンズに加工しています。

ただでさえ高価な材料を、これまた超高価な加工法で製造しているわけです。

さらに、超特殊低分散ガラス(SuperED)とは、「蛍石(ほたるいし)」と同程度の色収差補正効果を持つ大変に高価で加工も難しいとされる材料です。

蛍石とは、例えばNIKONのレンズでも400mm F2.8大口径超望遠などしか採用されない素材ですから、これに近い材料であると言えばいかに高価で希少性が高いのかをご理解いただけるでしょうか。

これだけの材料を厳選したレンズ枚数の中に凝縮するのですから「豪華」とか「贅を尽くす」と表現せずにはいられないわけです。

さらにレンズ外観にも金属を多用するなどこだわりの造りでありながら、価格は他社と比べるとむしろ控えめ?なぐらいです。

なんとなく気が付いておりましたが「PENTAXという組織は利益を生むことを目的にしていない」ことが容易に理解できますね。

余談ですが、もう少しガラスの種類に関してまとめた記事がありますので参考にご覧ください。

 関連記事:ガラスと色収差

縦収差

左から、球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

球面収差から見てみましょう、極めて鋭く補正されています。古き良き時代のレンズはフルコレクション型と言ってマイナス側にふくらむ形状となることが多いですが、近年の超高性能レンズは先端が少しプラス側へわずかにふくらむ形が多くなっているように思います。

ボケ味と解像度のバランスが良いのでしょうか。

軸上色収差は、控えめなレンズ構成枚数でありながら高価な材料を多用しているだけあって綺麗にまとめられています。

像面湾曲

像面湾曲は、超広角レンズでありながらも非球面レンズを2枚配置することで良好に保っています。

歪曲収差

歪曲収差は、画面も隅の像高21mmあたりでマイナスに倒れる樽型ですが、大きいわけではなく普通レベルでしょうか。

私個人の趣味としては、超広角レンズで歪曲収差が異常に少ないのも違和感がありますので適度であると思えます。

気になる方は、画像処理に補正も容易となっていますので補正機能を活用ください。

倍率色収差

倍率色収差は、構成枚数の少なさを豪華材料で補っているためか複雑怪奇な特性ではありますが、全体として小さくまとまっている不思議な特性です。

横収差

タンジェンシャル、右サジタル

横収差として見てみましょう。

左列タンジェンシャル方向は、現代的なレンズらしくコマ収差は小さく収めらていますが、ほんのり収差の残る特性です。

右列サジタル方向は、画面周辺の像高18mmを超え始めるとサジタルコマフレア少々残ります。

高画素なカメラの出現する現代でも十分に使える性能でありながら、絶妙な収差の残し加減でボケ味に配慮する実にLimitedレンズらしい空気を感じる収差図です。

公式サイトを見ても、収差を取り過ぎることによるボケ味とのバランスの悪化に配慮している旨の記述がありますので、ボケとのバランス解の結果となっているのでしょう。

解像度ばかりを求めた巨砲主義のような風潮を感じる昨今の流行を戒めるかのような姿勢が見られますね。


レンズが増えるとケースも必要ですよね。Amazonの格安ケースが手軽でおススメです。

スポットダイアグラム

スポットスケール±0.3(標準)

ここからは光学シミュレーション結果となりますが、最初にスポットダイアグラムから見てみましょう。

画面中間の像高12mmあたりまではスポット自体がきれいに小さくまとまっています。

スポットスケール±0.1(詳細)

さらにスケールを変更し、拡大表示したスポットダイアグラムです。

画面周辺の像高18mmを超えますと左右に散らばる様子がわかりますが、21mmの超広角レンズとしては十分に高性能な領域です。

星景撮影のような場合ならば半段程度絞る必要があるかもしれませんが、一般撮影では気になるほどでは無いでしょう。

MTF

開放絞りF2.4

最後にMTFによるシミュレーションの結果を確認してみましょう。

開放絞りでのMTF特性図で、画面中心部の性能を示す青線のグラフを見ると、ほぼ理想値レベルまでの高さに達しています。

画面の周辺に行くに従い多少の低下はありますが、十分に高いレベルを維持しています。

似た焦点距離で、過去に分析したSIGMA 20mm F1.4 Artをご覧いただくとわかりやすいのではないでしょうか、Fno仕様は異なるので比較は難しいですが、重量や構成枚数を度外視しても超広角レンズのMTFを限界まで高めるのはなかなか難しいものです。

 関連記事:SIGMA 20mm F1.4 DG HSM Art

SIGMAの20mmは、キログラム単位の重量ですからね…

小絞りF4.0

FnoをF4まで絞り込んだ小絞りのMTFです。

十二分な高さに達しますね。

総評

改めてPENTAXのLimitedレンズの性能を拝見しますと、近年の解像度ばかりを求めた巨砲主義的風潮を戒めるかのような「凛とした姿勢」を感じます。

レンズ設計とは、科学ではなく美学であり、ゆえに背景となる哲学や思想がその質を左右します。

PENTAXのLimitedレンズは、美観、質感、佇まい、所作と言った「趣き」を大切にしながら、画作りとの最適解を模索する「ものづくりの極地」を目指しているのでしょうね。

しかし、利益を忘却したかのような絢爛豪華のこのレンズが「もしも大人気」になると、PENTAXのカメラ事業が超赤字に陥落するのではないかと心配でなりません。


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作例・サンプルギャラリー

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価格調査

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製品仕様表

製品仕様一覧表 PENTAX-D FA 21mm F2.4 Limited

画角92度
レンズ構成8群11枚
最小絞りF22
最短撮影距離0.18m
フィルタ径67mm
全長89mm
最大径74mm
重量416g
発売日2021年11月12日

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以下の分析リストでは、記事索引が簡単です。

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