PR レンズ分析

【光学エンジニアの解説】 ミノルタ中望遠レンズ MINOLTA STF 135mm F2.8 [T4.5] Part1:収差編 -分析090

ミノルタ STF 135mm F2.8 [T4.5]の性能分析・レビュー記事です。

さて、写真やカメラが趣味の方でも、レンズの仕組みや性能の違いがよくわからないと感じませんか?

当ブログでは、光学エンジニアでいわゆるレンズのプロである私(高山仁)が、レンズの時代背景や特許情報から設計値を推定し、知られざる真の光学性能をやさしく紹介します。

当記事をお読みいただくと、あなたの人生におけるパートナーとなるような、究極の1本が見つかるかもしれません。

作例写真をお探しの方は、記事末尾にありますのでこのリンクで移動されると便利です。

レンズの概要

MINOLTA STF 135mm F2.8 は世界初のオートフォーカス対応のシステム一眼レフカメラαシリーズ用にラインナップされた大口径中望遠レンズです。

STFとは、スムース・トランス・フォーカス(Smooth Trans Focus)の略称で、ボケ味をきれいにするためのアポダイゼーション素子を内部に搭載する極めて特殊なレンズです。

まずは、MIMOLATの焦点距離135mmレンズの系譜をオートフォーカス化される少し手前のMDマウントレンズから振り返ってみましょう。

MDマウントレンズは、マニュアルフォーカス時代の後期の製品で、1970年代後半から発売されています。

  • MD TELE ROKKOR 135mm F2.8 5群5枚
  • MD TELE ROKKOR 135mm F2.8 4群4枚
  • MD TELE ROKKOR 135mm F3.5 4群4枚

続いて、1980年代なると改良されたNewMDレンズへと置き換わります。

  • New MD135mmF2 5群6枚
  • New MD135mmF2.8 5群5枚
  • New MD135mmF3.5 5群5枚

ここで特筆すべきは、MDシリーズでは3種の焦点距離135mmレンズが発売されており、続くNewMDシリーズではさらに光学設計を変更し販売が継続されました。

この時代までは135mmレンズが「望遠レンズ」として人気であったことが伺い知れますね。

時代が進み、1985年に発売となった世界初のオートフォーカス一眼レフカメラMINOLTA「α」シリーズの時代からは、Aマウントに刷新され、レンズ名は基本的には「AF」となりました。

  • AF 135mm F2.8(1985) 5群7枚
  • STF 135mm F2.8(1999) T4.5 6群8枚

Aマウントレンズでは、焦点距離135mmは残念ながら2本に削減されています。

1本目のAF 135mmは一般的な仕様のレンズではありましたが、MINOLTA「α」カメラ用としてオートフォーカス化を実現した世界初のレンズであったと言えます。

続いて、2本目のSFT 135mmはオートフォーカスには非対応ですが、アポダイゼーション素子を搭載することで、極めて美しいボケと高い次元の解像感を両立する特殊なレンズです。

当記事のSTF135mmは、MINOLTAからカメラ事業を引き継いだSONYが2021年まで製造しており、現在(2022執筆時)でも在庫品が販売されているようです。

私的回顧録

前々回(OLYMPUS Zuiko 135mm)前回(MINOLTA AF135mm)と焦点距離135mmのレンズを分析し、その中でもご紹介したように、かつては望遠レンズとして人気だった135mmレンズは一眼レフの発展と供にいつしか不遇の存在となりました。

当然ですが各社ともにその気配を察知し対策を練るわけです。

対策として、焦点距離135mmレンズには特殊な機能を搭載することで、新たな価値観を創造しようと試みたメーカーがいくつか出現しました。

そのひとつとして例えば、NIKON Ai AF DC Nikkor 135mm F2Sではボケ味コントール機能を搭載することで独自性を出していました。

また、当記事のレンズMINOLTA STF 135mm F2.8では「アポダイゼーション素子」を搭載することで、ボケ味の滑らかさと美しさを追求しています。

今回からの、MINOLTA STF 135mm の分析では、記事を前後編の2部構成として掲載いたします。

前編となる当記事では「収差分析編」として、いつもの分析記事と同様に基本的なレンズの構造と収差の様子について分析を行います。

後編では「アポダイゼーション編」として、アポダイゼーション素子と収差の関係について、より詳しくご紹介したいと思います。

それではまずは前編「収差分析編」をお楽しみください。

文献調査

特開平11-231209を見ると、当レンズSTF 135mmとおぼしき光学系の断面図が第1図として記載されています。

本文を読むと、MINOLTAの考える美しいボケの形状とは何か、アポダイゼーション素子をどのように配置するのか、と言った内容が克明に記載されています。

私は普段から色々な特許を読みますが、ここまで丁寧に狙いや原理を記載した特許も珍しいように思います。

ご興味があれば是非とも本文をご一読ください。

さて、設計値とおぼしき実施例を見ますと2種記載されており、記載された球面収差図を見ると2種の方針で設計していることがわかります。

実施例1は、球面収差が直線的で解像感を重視したタイプです。

実施例2は、球面収差がマイナスにふくらむフルコレクション型で、オールドレンズ的な味のあるボケのタイプです。

アポダイゼーション素子を搭載しているということは、実施例1のように球面収差の形状が直線的でクセの無い形の方が、素子の効果を生かした写真を撮影できるように推測されます。

また、形状的にも実施例1の方が製品の構成に近いようなので、実施例1を製品化したと仮定し、設計データを以下に再現してみます。

 関連記事:特許の原文を参照する方法

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。

レンズレビュー公認レンズクリーナー:公認の秘密はこちら

設計値の推測と分析

性能評価の内容などについて簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

上図がMINOLTA STF 135mm F2.8 [T4.5]の光路図になります。

その他のレンズ分析記事をお探しの方は、分析リストページをご参照ください。

以下の分析リストでは、記事索引が簡単です。

もしよろしければ下のボタンよりSNS等で共有をお願いします。

  • この記事を書いた人

高山仁

光学設計一筋40年を超えるの世界屈指のプロ光学設計者。 さてその実態は零細光学設計事務所を運営するやんごとなき窓際の翁にしてレンズレビュー・コンソーシアム会長。 当ブログへのリンクや引用はご自由にどうぞ。 更新情報はXへ投稿しております。

-レンズ分析
-, , , , ,