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【見てわかる】標準レンズとは?その意味と発展の歴史

カメラの交換レンズのひとつ「標準レンズ」とは何を指すのか?

どうして「標準」と呼ばれるのか?いまいちよくわからない、そんな疑問がありませんか?

この記事では、そんなカメラ用語の中でも「標準レンズ」について、その意味や歴史をシミュレーション技術を使いわかりやすく紹介します。

さて、私こと高山仁は写真用レンズの分析ブログ「レンズレビュー」を運営するいわばレンズのプロです。

そんな私が、わかるようでわからないカメラ用語を基礎から丁寧に解説しますが、数式はできるだけ使わずに図や事例で丁寧にわかりやすく紹介します。

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標準レンズとは

結論から申しますと、カメラ業界では焦点距離が50mmのレンズを標準レンズと呼びます

焦点距離とは簡単に言えばレンズによって「写る範囲」を指し、焦点距離に関して詳しくはこちらの記事でご確認ください。

 関連記事:焦点距離

どうして焦点距離50mmが標準なのか?

50mmレンズが標準となった理由は、現代的なカメラシステムの元祖であるライカの最初のレンズが50mmだったためです。

1925年に発売されたライカは、当時とても画期的なシステムであり、多くのメーカーがライカを模倣したことで、いつしか50mmが標準レンズとなりました。

このような事象をデファクトスタンダード化と言ったりします。

ではなぜ、ライカは50mmレンズを最初に採用したのでしょうか?

残念ながらその理由は記録が残っていないようで現代でも謎のままとなっており、諸説語られています。

実は50mmじゃない

前の項で「50mmだ」と散々説明しながらこんな事を言うのもなんですが、ライカの標準レンズは正確に表現すると50mmではありません

理由は明かされていませんが「51.6mm」と設計されています。

ライカを模倣した各社も焦点距離をぴったり合わせないとズレが生じてしまうため、51.6mmで設計されています。

このカメラ業界における慣習は、現在でも引き継がれているようです。

例えば、最新のニコンのミラーレス一眼用標準レンズに関係する特許文献の実施例に記載された数値から、焦点距離を示すfの欄を見ると「f 51.6」と記載されています。

なんと、すでに100年経過した現在でも当時の伝統を守っているようですね。

 関連文献:ニコンミラーレス用の標準レンズの特許

古代レンズの歴史

まずは写真レンズが登場し、標準レンズが誕生するまでの簡単な歴史を紹介しましょう。

少なくとも記録が残る物としてはレンズは古代ローマの頃にはあったとされ、当時の哲学者セネカの手記に残されているそうなので、西暦50年ごろには拡大鏡としてすでに利用されていると推定されます。

その後、レンズは拡大鏡や望遠鏡として発展を続けますが、中世の頃になるとカメラの原始的段階であるカメラ・オブスクラが発明されました。

初期カメラ・オブスクラは、ピンホール(小穴)を通して屋外の様子を観察する装置でしたが、ピンホールの代わりにより明るく鮮明に見えるようにレンズが使われるようになります。

この時代はまだフィルムへ残すような技術はありませんから、レンズで集光した結像を紙に描き取るなどしていました。

1800年代の中頃には、ようやくフィルムやプリントといった化学技術による「写真」が発明されます。

その後1900年代へ入る頃には、現代的なレンズ設計理論の基礎とガラス製造方法が確立し、科学技術によりレンズを工業的に生産することが可能となります。

1925年に現代的カメラの始祖となるライカが発売され「標準レンズ」が50mmに決定されるのです。

標準レンズの始まり トリプレット型とテッサー型

ここからは具体的なレンズの設計データを見て参りましょう。

この項では、ライカ誕生の少し前の1800年代の終わりから、ライカ誕生の1920年代の標準レンズを紹介します。

まずは、最も構成が簡素であるがゆえに、史上最も採用されたと言われるトリプレットです。

トリプレットの発明者Harold Dennis Taylorが出願した1895年の特許文献から、当時のレンズ性能を再現してみましょう。

 特許文献:HD Taylor TRIPLET

1895 TRIPLET 50mm F5.6

光路図、縦収差(球面収差像面湾曲歪曲収差)

レンズの仕様は、35mm換算で焦点距離50mm F5.6。

トリプレット型は、その名の通り3枚のレンズで構成され、凸レンズ、凹レンズ、凸レンズの順で並ぶ3群3枚構成となります。

このような中心から対称の形のレンズ配置を「対称型光学系」と称し、簡素ながら収差補正が容易となる事が知られ、レンズ配置の基礎となります。

実際に性能を見ると、球面収差は少々補正残りが大きいですが、像面湾曲も同じ方向に倒れるためバランスはとれています。

一方、驚異的なのは対称型光学系の最大の特徴である歪曲収差が劇的に小さくまとまっています。

トリプレット型はレンズ一体型のカメラや二眼レフなど安価なカメラに長年採用されました。

近年でも、非球面レンズを多用したトリプレット型を携帯電話やスマートフォンのカメラ用レンズとして採用することがあります。


続いてはライカの最初のレンズと同じ構成となるテッサー型の原型を見てみます。

テッサー型は、現代にもその名を轟かせるドイツの光学機器メーカーCarl Zeissから生まれた銘レンズです。

Carl Zeissは、現代的な光学設計技術の基礎を確立したメーカーでもあります。

さて、1902年の特許文献には最初期のテッサー型レンズが記録されています。

 特許文献:Carl Zeiss Tessar

今回は実施例1の再現データを作成しました。

今回の趣旨である50mmの設計例ではありませんが、最初期のレンズとその性能の事例としてご覧ください。

1902 Carl Zeiss Tessar 38mm F5.5

光路図、縦収差(球面収差像面湾曲歪曲収差)

レンズの仕様は、35mm換算で焦点距離38mm F5.5。

テッサー型は、被写体側から順に凸レンズ、凹レンズ、絞り 、凹凸貼り合わせレンズの3群4枚構成です。

元はCarl Zeissの商品名ですが、あまりにも有名になり、この見た目はみなテッサー型と呼ばれています。

テッサー型は、設計技術の発展と材料開発によってFnoがF3.5までは十分実用性の高い性能域まで達し、最終的にはF2.8まで拡張されました。

トリプレットとの差はレンズ1枚分だけですが、球面収差は1/3ぐらいになっているでしょうか、サジタル方向とタンジェンシャル方向の像面湾曲の差である非点格差も半減しています。

対称配置に近いので歪曲収差も十分に小さい範囲ですね。

なお、この時代はまだコンピューターはありませんから、レンズ構成の差もありますが設計技術の差も非常に大きいためご注意ください。


この項の最後となるのが、現代カメラの始祖ライカの最初のレンズであるエルマー 50mm F3.5になります。

 特許文献:LEICA ELMAR

見た目はテッサー型ですが、焦点距離は50mmで、Fnoも1段以上明るいF3.5となります。

1925 LEICA ELMAR 50mm F3.5

光路図、縦収差(球面収差像面湾曲歪曲収差)

レンズの仕様は、焦点距離50mm F3.5。

被写体側から順に凸レンズ、凹レンズ、絞り 、凹凸貼り合わせレンズの3群4枚構成です。

公式にはライカのエルマーは、トリプレット型から発展させた物と説明されるようですが、実際の見た目は明らかにテッサー型ですね。

Fnoが明るく、焦点距離も長くなったため球面収差や軸上色収差はちょっと苦しい量ですが、一段絞れば十分使える性能です。

さらに詳しい分析記事はこちらのリンク先をご確認ください。

 関連記事:LEICA ELMAR 50mm F3.5の分析

ライカ誕生以降、その革新的システムが当時の世界中のカメラメーカーにより模倣されたことで、ライカの標準レンズ(焦点距離50mm)が、世界の標準レンズとなります

標準レンズの大口径化 ダブルガウス型とゾナー型

この項では、標準レンズの大口径化の始まる1920年代から1930年代のレンズを紹介します。

すでにフィルムカメラが衰退していますので、少しピンと来ないかもしれませんが、フィルムカメラはISO感度が低く、これを補うため少しでも明るい仕様の大口径レンズが求められていました。

ダブルガウス型とゾナー型に絞って1930年ごろの頃の標準レンズの大口径化の様子を確認してみましょう。

まずは、現代的なレンズの基礎ともなったダブルガウス型から大口径化の一端を紹介します。

1920年、トリプレットを販売したテーラー・ホブソン社(Taylor, Taylor & Hobson)から、Fnoが明るく現代的でとてもシンプルな構成となったダブルガウス型の特許が出願されており、多くのメーカーがこの特許の使用料を払い採用したと言われています。

 特許文献:Double Gauss F2.0

1920 Taylor & Hobson Double Gauss 50mm F2.0

光路図、縦収差(球面収差像面湾曲歪曲収差)

レンズの仕様は、焦点距離50mm F2.0。

レンズの構成は4群6枚構成です。

現代レンズの基礎と言われるダブルガウス型といえばこの形で見覚えのある方も多いでしょう。

最初に紹介したトリプレット型も対称型配置ですが、厳密に言うと絞りの位置を中心に置くことができません。

ダブルガウス型は完全に対称な配置で、レンズの材料も絞りの前後で同じ物を採用しています。

構成の美しさはレンズの性能に直結するのは有名な話ですが、性能の素性は良さそうですね。

ライカの最初のレンズエルマーがF3.5ですから、ダウブルガウスのF2.0は1段以上も明るくなっているのに収差量は減り、高性能化を果たしています。


さらに1930年にテイラー・ホブソン社は、大口径化を進めFnoがF1.5と非常に明るい変形ダブルガウス型の特許を出願しています。

 特許文献:Double Guss F1.5

1930 Taylor & Hobson Double Gauss 50mm F1.5

光路図、縦収差(球面収差像面湾曲歪曲収差)

レンズの仕様は、焦点距離50mm F1.5。

レンズの構成は4群7枚構成です。Fnoがだいぶ明るくなったのでレンズの巨大化がわかりますね。

FnoがF2.0からF1.5と約1段の明るさ向上による収差悪化を抑制するために、完全対称ダブルガウス型の撮像素子側に1枚凸レンズを追加した変形型となっています。

性能を見ると1枚追加では「焼け石に水だったのではないか」と思うほどに、かなり甚大な収差が残っています。

私が思うに、計算機も無いこの時代にしてはレンズ枚数が多すぎて「設計の際にコントロールできていないのではないか」と思うところです。

さらに1936年に発売されたライカの大口径標準レンズであるクセノン(Xenon) 50mm F1.4も同じレンズ構成で、この特許にライセンス料を支払い利用していることが知られています。

 関連記事:ライカレンズの大口径化

ダブルガウス型のレンズは、当時では設計が難し過ぎたことに加えて、レンズ表面のコーティング技術が無い時代なので内面反射によるフレアが大きく、人気が無かったと言われています。


一方で、当時人気となったレンズがゾナー型の大口径標準レンズです。

ゾナー型は、Carl Zeissの名設計者ベルテレ博士による設計で1937年の特許文献が残されています。

 特許文献:Carl Zeiss Sonnar

1937 Carl Zeiss Sonnar 50mm F1.5

光路図、縦収差(球面収差像面湾曲歪曲収差)

レンズの仕様は、焦点距離50mm F1.5。

レンズの構成は一挙に増えて3群7枚構成です。

FnoがF1.5と劇的に明るくなったためレンズが極端に巨大化しているのが一目でわかりますね。

球面収差を比較するとダブルガウス型の半減と高いレベルの補正が施されています。

さらに貼り合わせレンズを多用することで、レンズ表面の空気との接触面数が減りフレア対策も施されています。

当時のダブルガウス型の問題を解決しており、人気となるのも納得です。

 関連記事:Carl Zeiss Sonnarの分析

ゾナーはCarl Zeiss社のカメラシステムであるコンタックス(Contax)のレンズとして用意されたのですが、多くのメーカーが模倣し各社からゾナー型のレンズが販売されています。

なおゾナーの名称は標準レンズ以外にも名付けらているのでご注意ください。ここで紹介しているのは標準レンズ仕様のゾナーとなります。

ダブルガウス型の発展

時を進め1960年から1970年代あたりに移りましょう。

ゾナー型におされ苦境のダブルガウス型のライカでしたが、光学設計へコンピュータが導入され、レンズ表面のコーティング技術の発展と、新ガラス材料の開発により再びダブルガウス型が脚光を浴びるようになります。

続いて紹介するレンズは、1959年に再設計されたライカのズミクロン50mm F1.4です。

前項の1930年のテイラー・ホブソンの50mm F1.5とほぼ同じ構成ですが、性能が劇的に改善していることがわかります。

 特許文献:Summilux 50mm F1.4 (1st)

1959 Summilux 50mm F1.4 (1st)

光路図、縦収差(球面収差像面湾曲歪曲収差)

レンズの仕様は、焦点距離50mm F1.4。

レンズの構成は4群7枚構成です。

少々球面収差に補正残りがあるものの、現代でも販売されているダブルガウス型の性能と差が無いレベルですね。


さらに、ダブルガウス型のレンズが現代レンズの基礎と言われる要因となったのが、一眼レフカメラの勃興です。

国産初の一眼レフカメラが1952年に発売され、一眼レフカメラの時代が到来します。

一眼レフにはファインダーへ光を導くためのミラーが配置されているため、バックフォーカスが長いレンズが必要とされました。

バックフォーカスが、適度に長いダブルガウス型が好適であり、各社が研究と採用を進めました。

 関連記事:一眼レフカメラのしくみ

各社から様々な変形ダブルガウス型の製品が発売されましたが、結果的に見てみるとFnoがF2.0程度の仕様の標準レンズの構成は、被写体側の接合を分離した構成が終着点のようです。

 特許文献:NIKON NIKKOR 50mm F1.8D

1978 NIKON NIKKOR 50mm F1.8D

光路図、縦収差(球面収差像面湾曲歪曲収差)

レンズの仕様は、焦点距離50mm F1.8。

レンズの構成は5群6枚構成です。

被写体側の接合を分離することで、バックフォーカスを長く保ちながらコマ収差の補正が可能となるため、各社からこの見た目の安価な標準レンズが多数発売されています。

より高性能化を狙って1枚レンズを追加する製品や非球面レンズを採用するなどの構成もありますが、費用対効果が悪いようでこのタイプが結果的に終着点になっているようです。

 関連記事:NIKON NIKKOR 50mm F1.8Dの分析


さらに、大口径化したダブルガウス型の終着点は、撮像素子側へ1枚レンズを追加する構成が良いようです。

同じくニコンの超大口径標準レンズの特許文献から再現したデータをご覧ください

 特許文献:Ai Nikkor 50mm F1.2

1978 NIKON Ai Nikkor 50mm F1.2

光路図、縦収差(球面収差像面湾曲歪曲収差)

レンズの仕様は、焦点距離50mm F1.2。

レンズの構成は6群7枚構成です。

タンジェンシャル方向の像面湾曲が画面周辺で少々苦しい雰囲気ですが、球面収差は大口径の割に十分補正されています。

他にも同仕様であるOLYMPUS Zuiko 50mm F1.2など同じ構成のレンズは数多く存在することから、この形が超大口径ダブルガウス型の終着点と言えそうです。

 関連記事:OLYMPUS Zuiko 50mm F1.2の分析
 関連記事:NIKON NIKKOR Ai 50mm F1.2の分析

この後、1980年代に入るとレンズのカメラの電子化とオートフォーカス化、そしてズーム化が進みます。

特にその利便性ゆえに標準レンズは「標準ズームレンズ」にとって代わられてしまい哀愁漂う存在になります。

デジタル時代の標準レンズ

2000年代を越えると一眼レフカメラにもデジタル化が到来すると同時に、ボケ味などの新たな表現力の追求から単焦点レンズの見直しが進みます。

また、フィルムを越える高い解像度のデジタル一眼レフカメラに呼応するように、超高性能な標準レンズが誕生します。

まずは、超高性能標準レンズのブームの火付け役となったSIGMA 50mm F1.4 Artの性能をご覧ください

 特許文献:SIGMA 50mm F1.4 Art

2014 SIGMA 50mm F1.4 DG HSM Art

光路図、縦収差(球面収差像面湾曲歪曲収差)

レンズの仕様は、焦点距離50mm F1.4。

レンズの構成は8群13枚構成です。

レンズ構成枚数はかつてのダブルガウス型の2倍以上で非球面レンズも導入しています。

一体、この時のシグマで「何があったのだろうか?」少し心配になる設計ですが、結果的に各社これに対抗して高性能なレンズを開発する方向へ進みます。

 関連記事:SIGMA 50mm F1.4 DG HSMの分析


一眼レフカメラ時代の最高峰かつ最後の標準レンズは、こちらのペンタックスのレンズではないかと思います。

国産初の一眼レフカメラを発売したペンタックスのレンズがトリを飾るのは運命なのでしょうか…

 特許文献:PENTAX 50mm F1.4

2018 HD PENTAX-D FA ★50mm F1.4 SDM AW

光路図、縦収差(球面収差像面湾曲歪曲収差)

レンズの仕様は、焦点距離50mm F1.4。

レンズの構成は9群15枚構成です。

各特性はほとんど直線状のグラフとなっており説明しがたい状態です。

 関連記事:PENTAX FA 50mm F1.4の分析

このレンズが発売された2018年、各社ともミラーレス一眼へ本格的なシフトが始まります。

 ※注:ペンタックスだけは一眼レフ宣言を発しています

ミラーレス一眼の標準レンズ

一眼レフカメラからミラーを取り払った「ミラーレスカメラ」これをいち早く開始したのはオリンパスやパナソニックなどのマイクロフォーサーズ陣営で2008年から開始し、フルサイズカメラではソニーが2013年から開始しています。

ミラーレスという形態は、デジタルカメラの完成形態であるとわかっていたものの、現実的には電子ビューファインダーの表示遅れ問題や、オートフォーカス速度や精度の課題から、各社が本格的にミラーレスへ移行するには2018年までかかりました。

ミラーレス一眼は、ミラーの無いぶん光学設計上の自由度が向上し、標準レンズも旧来のような「ダブルガウス型」に縛られる必要性がなくなり、各社個性的なレンズ配置が登場しています。

 関連記事:ミラーレス一眼のしくみ

この項では、フルサイズ用の標準レンズからF1.8の仕様を比較してみましょう。

まず、フルサイズのミラーレス一眼として最初に登場した標準レンズのソニーからです。

 特許文献:SONY 55mm F1.8

2013 SONY Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA

光路図、縦収差(球面収差像面湾曲歪曲収差)

レンズの仕様は、焦点距離55mm F1.8。

レンズの構成は5群7枚構成です。

色々とツッコミどころ満載で「いきなりブッこんできた」と驚嘆するしかない、そんなレンズです。

これまでのガウスとは何だったのか?異世界すぎて言葉を失います。

そして製品の名前には懐かしき「ゾナー」の名を冠していますが、「どうゾナーなのか?小一時間ほど問い詰めたい」そんな奇想天外なレンズ構成ですが、予想に反しておそろしく性能が良い…

 関連記事:SONY 55mm F1.8の分析


次は年代順でニコンです。

ニコンは2018年に長年に渡り採用を続けたFマウントから、ミラーレス一眼専用のZマウントへ移行し、同時に標準レンズを発売しています。

 特許文献:NIKON Z 50mm F1.8

2018 NIKON NIKKOR Z 50mm F1.8 S

光路図、縦収差(球面収差像面湾曲歪曲収差)

レンズの仕様は、焦点距離50mm F1.8。

レンズの構成は9群12枚構成です。

光学系の中央部分にダブルガウスを想起させるような形状のレンズがあり、被写体側と撮像素子側に凹レンズを配置しています。

ビオゴンだと表現することもできるようですが…

前項のソニーも十分良いのですが、それを上回る性能で衝撃的です。

「このレンズには収差がありません」そう説明しても良いのかもしれませんね。

 関連記事:NIKON Z 50mm F1.8の分析


F1.8では最後になりますのはパナソニックです。

パナソニック、シグマ、ライカが共同で運営する「Lマウント」を立ち上げ、フルサイズ市場へ参入したパナソニックの標準レンズご紹介します。

 特許文献:Panasonic 50mm F1.8

2021 Panasonic LUMIX S 50mm F1.8

光路図、縦収差(球面収差像面湾曲歪曲収差)

レンズの仕様は、焦点距離50mm F1.8。

レンズの構成は8群9枚構成です。

なんと、被写体側の2枚のレンズを除くと、ソニーのレンズの形によく似ているんです。

ソニーの光学系にはかなり先見の明があったということなんでしょう。

構成枚数的にはソニーとニコンの間なので、性能もそのような順ですね。

 関連記事:Panasonic 50mm F1.8の分析

ミラーレス一眼の大口径標準レンズ

1970年代までは各社からF1.4よりも明るいレンズがラインナップされていたのですが、単焦点レンズの人気の陰りとともに姿を消してしまったり、オートフォーカス化されなかったりと、すっかり廃れてしまいました。

ところが2020年代にさしかかる頃、写真文化の中に「ボケを愛でる」という日本独自の感性が世界中に伝搬したことで、Fnoの明るいボケの豊かなレンズが新たにラインアップされるようになりました。

ニコンでは初めてFnoがF1.2の超大口径レンズがオートフォーカス化され登場しました。

 特許文献:NIKKOR Z 50mm F1.2

2020 NIKON Nikkor Z 50mm F1.2S

光路図、縦収差(球面収差像面湾曲歪曲収差)

レンズの仕様は、焦点距離50mm F1.2。

レンズの構成は15群17枚構成です。

「ダブルガウスとかゾナーとか、もうそんな小さな事にこだわるのはやめよう」そんな思いに浸る構成ですね。

F1.2の超大口径なのに素晴らしい性能です。

 関連記事:NIKKOR Z 50mm F1.2の分析


驚いたことにソニーからもF1.2のレンズが登場しています。

ソニーのミラーレス一眼カメラ用のEマウントは他社よりも口径が小さく、F1.2のようなレンズは無理ではないかと言われていたのです。

 特許文献:SONY 50mm F1.2

2021 SONY FE 50mm F1.2 GM

光路図、縦収差(球面収差像面湾曲歪曲収差)

レンズの仕様は、焦点距離50mm F1.2。

レンズの構成は10群14枚構成です。

口径の問題など吹き飛ばすような高性能なF1.2レンズを投入し、ミラーレス一眼市場の制覇を目論んでいるのでしょう。

 関連記事:SONY 50mm F1.2の分析


最後にニコンの超弩級標準レンズをご紹介します。

ニコンのミラーレス一眼Zマウントシステムの登場時からその存在をにおわせていた極大口径レンズが、予告からおよそ半年後に実際に発売されました。

 特許文献:NIKKOR 58mm F0.95

2019 NIKON NIKKOR Z 58mm F0.95 S

光路図、縦収差(球面収差像面湾曲歪曲収差)

レンズの仕様は、焦点距離58mm F0.95。

レンズの構成は10群17枚構成です。

FnoはF1.0よりも明るいF0.95、値段も約100万円とまさに超弩級レンズで、これは標準とは言えませんね…

 関連記事:NIKKOR Z 58mm F0.95

まとめ

およそ100年に渡る標準レンズの歴史をわずか10本ほどのレンズでご紹介いたしました。

ミラーレス一眼がカメラの主流となり、すでにレンズのリニューアルを始めている会社もおりますので、これからも標準レンズの改良の歴史は続いていくのでしょう。

以上でこのレンズの分析を終わりますが、最後にあなたの生涯における運命の1本に出会えますことをお祈り申し上げます。

LENS Review 高山仁

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  • この記事を書いた人

高山仁

いにしえより光学設計に従事してきた世界屈指のプロレンズ設計者。 実態は、零細光学設計事務所を運営するやんごとなき窓際の翁で、孫ムスメのあはれなる下僕。 当ブログへのリンクや引用はご自由にどうぞ。 更新情報はXへ投稿しております。

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