レンズ分析

【レンズ性能評価】OLYMPUS Zuiko 135mm F3.5 -分析088

オリンパス の一眼レフカメラ用交換レンズシリーズより、小型 望遠レンズ ズイコー 135mm F3.5の性能分析・レビュー記事です。

このレンズは、フィルム時代のカメラであるOM専用の交換レンズですが、マウントアダプターを利用すれば現代のミラーレスカメラでも使用できます。


さて、レンズの仕組みやその性能は一体どう違うのか、具体的な違いがほとんどよくわかりませんよね。

雑誌やネットで調べても似たような「口コミ程度のおススメ情報」そんな記事ばかりではないでしょうか?

当ブログでは、レンズの歴史やその時代背景を調べながら、特許情報や実写作例を元にレンズの設計性能を推定し、シミュレーションによりレンズ性能を技術的な観点から詳細に分析します。

一般的には見ることのできない光路図や収差などの光学特性を、プロレンズデザイナー高山仁が丁寧に紐解き、レンズの味や描写性能について、深く優しく解説します。

あなたにとって、良いレンズ、悪いレンズ、銘玉、クセ玉、迷玉が見つかるかもしれません。

それでは、世界でこのブログでしか読む事のできない特殊情報をお楽しみください。

作例写真は準備中です。

レンズの概要

OLYMPUS Zuiko 135mm F3.5は、オリンパスの一眼レフカメラOMシステム用のズイコーレンズシリーズの小口径中望遠レンズです。

OMシステムは、1972年からスタートし、当レンズも早期からラインナップされていたとされています。

Zuikoレンズシリーズは発足時から小型化に力を入れており、特に現代のレンズと比較すると本当に小さく感じられます。

Zuikoレンズの135mmは、当記事のF3.5の小口径仕様と、半段明るいF2.8の大口径仕様の2種類が販売されており、当記事ではFnoが控えめで庶民的なF3.5の分析を行います。

レンズの外観を眺めると、鏡胴先端には簡易的なフードが組み込まれており、撮影時引き出して使います。

この簡易フードは、他のZuikoレンズでも同様の仕掛けがありますが、現代の巨大なフードと異なり小さく可愛らしいもので効果はさほどないのかもしれませんが、荷物が小さくまとまりますから便利な物で現代でも復刻して欲しい機能です。

私的回顧録

『かつては望遠レンズ』・・・その1

厳密な決まりは無いと思いますが、現代(2022年)的な感覚では焦点距離200mm以上を望遠レンズとし、焦点距離150mm~70mmあたりは中望遠レンズと分類しているように思います。

かつて、一眼レフの黎明期の1970年代あたりを振り返ると、135mmは望遠レンズであったと記憶しています。

当時から焦点距離300mm程度のレンズやズームレンズも存在しましたが、ISO感度の低いフィルムしかありませんでしたし、マニュアルフォーカスですから一般人が300mmで動体撮影するのはなかなか至難の業で、現代のダブルズームキットとは異なり誰もが買うような製品ではありません。

また、一眼レフカメラ以前のシステムカメラであるレンジファインダーカメラ(いわゆるライカ)は、構造上の問題から135mmまでが使用限界であったこともあり、1960年代までは望遠レンズの開発があまり進んでいなかったことも135mmがひとつの上限だった要因です。

よって、135mmは1970年代当時は立派な望遠レンズであり、ZuikoレンズシリーズでもF3.5とF2.8の2種が用意されていました。

その後、時が流れ大口径望遠レンズや望遠ズームが次々と開発されるなかで、いつか135mmは望遠レンズの役目を終え郷愁のレンズとして日陰の存在となりました。

しかし、そんな135mmに新たな価値を見出そうと様々な試みが行われたのもこの仕様のレンズの面白いところですが、それはまたの機会にご紹介しましょう。


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文献調査

発売された年代の関係上、日本の特許データベースには電子化された資料が登録されていないようでしたが、米国の特許データでは電子化されておりました。

US3838911に記載された実施例1と3が、当レンズに近い物と推測されます。

文献のデータは焦点距離100mmに縮小されていますが、焦点距離135mmへ拡大し戻すと製品形状に酷似した状態になりますので、実施例1を製品化したと仮定し、設計データを以下に再現してみます。

製品の発売された正確な年が不明でしたが日本で特許出願されたのが、1972年となっています。

OMシリーズが1972年に開始されていますから、特許出願の時期から勘案するとカメラと同時か、もしくは1~2年程度の遅れの中で発売されているものと思われます。

 関連記事:特許の原文を参照する方法

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。


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設計値の推測と分析

性能評価の内容などについて簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

上図がOLYMPUS Zuiko 135mm F3.5の光路図になります。

4群5枚構成、単焦点レンズとしてはFnoが暗めのF3.5とはいえ、現代的なレンズに比較しますととても少ないレンズ枚数に感じます。

しかし、当時の似たような仕様のレンズを見てみますと、NIKKOR-Q Auto 135mm F3.5 (1969年) は3群4枚だと言いますから、さらに1枚少なく、当レンズは必ずしも安い設計ではないのです。

まだ、望遠レンズの設計が未発達だったこともあり、このような構成枚数が妥当であったわけですね。

もう少し形をよく見てみますと、絞りよりも被写体側(前側)の3枚の並びはダブルガウスタイプ的な凸凸凹の並びです。

ガウスタイプは一般に焦点距離50mm~100mm程度の場合に絞りを挟んで対称型となりますがそれ以上に望遠となりますと対称性が薄れていき、被写体側が大きい「いわゆる頭でっかち」な形になります。

過去に分析したZuiko 100mm F2などがその典型でしょうか。

当レンズはさらに焦点距離の長い135mmであるため、絞りより撮像素子側(後側)は退化したかのように緩い凹レンズと凸レンズが一枚づづ残る構成となっています。

縦収差

左から、球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

球面収差から見てみましょう、基準の光線であるd線(黄)は控えめなFno仕様であることからわずかにマイナス(左)に膨らむフルコレクション型です。

軸上色収差は、望遠よりの焦点距離の割に、レンズ構成枚数が大変に少なく、色収差の補正に好適な異常分散ガラスも採用していないためかなり太ましいグラフになっています。

上端に向かってすぼまるような特性のため絞りを開けたた開放Fnoではあまり気にならないと思われます。

球面収差のスケールはFnoに比例した調整がなされないため、Fno暗い製品は実際の写りよりも過剰に表現される結果となるためスポットダイアグラムなどで詳細確認するのが肝要です。

像面湾曲

像面湾曲は、望遠系のレンズの特徴で変動は小さくなります。

一般的に、望遠レンズは像面湾曲や歪曲収差が小さく収まり、一方で軸上色収差や倍率色収差は甚大となりやすい特徴があります。

歪曲収差

歪曲収差は、望遠系のレンズの特徴で変動は小さく、わずかにプラス側へ倒れるいわゆる糸巻き型の歪曲収差になっています。

倍率色収差

倍率色収差は、レンズ構成枚数の少なさもあり、そこそこに大きいようです。

横収差

タンジェンシャル、右サジタル

横収差として見てみましょう。

Fnoの暗いレンズは、タンジェンシャル方向(左列)のコマ収差、サジタル方向(右列)のコマフレア供に小さくなります。

明るいレンズを絞った時を想像すれば効果のイメージは容易でしょうか。

一方で色収差の補正が苦しいため f線(水色)やC線(赤)の変動は大変に大きくなっていますが、うねりながらも先端部が収束するような形状にまとめてありますので、平均値としてみると小さくなります。

このあたりが、レンズ枚数が少なかった時代のレンズでもそこそこ十分な像を結ぶための設計テクニックが垣間見えますね。


記事の途中ですが、カメラマンは眼が命です。眼精疲労を感じたらこちらはいかがでしょうか?

スポットダイアグラム

スポットスケール±0.3(標準)

ここからは光学シミュレーション結果となりますが、最初にスポットダイアグラムから見てみましょう。

Fnoが控えめなF3.5の仕様であることもあいまって、そこそこ十分に収まっています。

スポットスケール±0.1(詳細)

さらにスケールを変更し、拡大表示したスポットダイヤグラムです。

画面中心にピントを合わせていることと同義である縦の中央列はC線(赤)が目立ちます。

白いシャツなどの高輝度な被写体には注意がいるでしょうか。

MTF

開放絞りF3.5

最後にMTFによるシミュレーションの結果を確認してみましょう。

画面中心の像高0mm(青)は、現代的なレンズに比較すれば低いのですが、像面湾曲の少なさから、画面全域で均質な特性です。

構成枚数からすると意外な高さではないでしょうか。

山の形が幅広い形状となっていますが、これはピントの深度が深いことを示しますが、FnoがF3.5と暗いためですね。

小絞りF5.6

FnoをF5.6まで絞り込んだ小絞りのMTFです。

わずかに向上するものの、絞りを小さくしても軸上色収差としてはむしろ悪化するためMTFの改善は限定的です。

開放から意外な性能がありますから、むしろ絞る必要などなく開放で楽しむのがこのレンズの嗜むうえで重要とわかりましたね。

総評

光路図を見ると、意外な構成枚数の少なさに一瞬不安がよぎりますが、そこそこ十分な画質の得られるよく練られた光学系であることがよくわかりました。

外観としては可愛らしいことこの上ないレンズですが、いざと言う時には頼れる旧友のような存在、とでも称すれば良いのでしょうか。

さて、今回からしばらく焦点距離135mmレンズをいくつか連続して分析し、そのあふれる郷愁と紆余曲折の発展の歴史を見て参りたいと思います。

なお、現代的な超高性能レンズの代表格として、過去にSIGMA 135mm F1.8 Artを分析しておりますので比較されてはいかがでしょうか?

 関連記事:SIGMA 135mm F1.8 DG DN Art

作例・サンプルギャラリー

OLYMPUS Zuiko 135mm F3.5の作例集は準備中です。


作例製作時に参考にさせていただいてます、絶景を撮るための撮影ガイド本を記事にまとめております。

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当ブログの作例写真の現像には国産現像ソフトSILKYPIXを使用しております。

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製品仕様表

製品仕様一覧表 OLYMPUS Zuiko 135mm F3.5

画角18度
レンズ構成4群5枚
最小絞りF22
最短撮影距離1.5m
フィルタ径55mm
全長73mm
最大径60mm
重量290g
発売日1972年?

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