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【深層解説】 パナソニック大口径標準レンズ Panasonic LUMIX S PRO 50mm F1.4 -分析111

パナソニック フルサイズ ミラーレス一眼用の大口径標準レンズ50mm F1.4の性能分析・レビュー記事です。

さて、写真やカメラが趣味の方でも、レンズの仕組みや性能の違いがよくわからないと感じませんか?

当ブログでは、光学エンジニアでいわゆるレンズのプロである私(高山仁)が、レンズの時代背景や特許情報から設計値を推定し、知られざる真の光学性能をやさしく紹介します。

当記事をお読みいただくと、あなたの人生におけるパートナーとなるような、究極の1本が見つかるかもしれません。

作例写真は準備中です。

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レンズの概要

Panasonic LUMIX S PRO 50mm F1.4は、2018年に発足したLマウントアライアンスの規格に準拠するフルサイズミラーレス一眼カメラ用の大口径標準レンズです。

Lマウントとは、PANASONIC 、Leica、SIGMAが主体のミラーレスカメラの協業規格で、各社のカメラとレンズの互換性が保証されているため自在に組み合わせて使用することができます。

例えば、本記事のPanasonic 50mm F1.4も「Leica」のミラーレスカメラに装着することも可能です。

Panasonicは、2008年からマイクロフォーサーズに準拠したカメラ・レンズを販売しておりましたが、2018年のLマウントの発足と同時にフルサイズミラーレス一眼カメラ市場へ参入を発表します。

そこで標準レンズとして用意されたのが、本記事のLUMIX 50mm F1.4となります。

私的回顧録

『ナショナルの情景』

お若い方には何のことかと思いますが、当記事の「Panasonic」というメーカーは、かつて「松下電器」との名称でありました。

その松下電器の製品の多くは、日本国内において「ナショナル」のブランド名で販売されていました。

昭和の頃の家庭は、台所にはナショナルの冷蔵庫が鎮座し、居間ではナショナルの電球に照らされ、家族でナショナルのテレビを見る、そんな情景が広がっていたのです。

 ※他のメーカーもありましたが

一方、Panasonicのブランド名も昭和の昔からあったのですが、こちらは主に海外輸出用のブランド名でした。

平成の時代に入った1990年頃、テレビや音響関係の製品は「Panasonic」ブランドへ統合されていきます。

その後、2003年には日本国内向け白物家電も「Panasonic」へ統合され、2008年には社名も「パナソニック株式会社」商号変更し「ナショナル」の名前は完全に霧散してしまいました。

私のような世代からしますと、未だ「Panasonic」と聞くと、つい「あぁ、昔のナショナルね…」と心で呟いてしまいます。

そしてふと、昭和の頃のオレンジ色の電球に照らされた食卓と、そこに並ぶ懐かしい家族の面影がぼんやりと薄暗く思い出されるのでした。

さて、思い出話はこのあたりにしまして、早速レンズの分析に取り掛かりましょう。

文献調査

特許文献を調査しますとWO2020158622として製品に極めてよく形態の似ている文献を発見しました。

なかでも実施例3が最も近いと推測されますので、これを製品化したと仮定し、設計データを以下に再現してみます。

 関連記事:特許の原文を参照する方法

!注意事項!

以下の設計値などと称する値は適当な特許文献などからカンで選び再現した物で、実際の製品と一致するものではありません。当然、データ類は保証されるものでもなく、本データを使って発生したあらゆる事故や損害に対して私は責任を負いません。

設計値の推測と分析

性能評価の内容などについて簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。

 関連記事:光学性能評価光路図を図解

光路図

上図がPanasonic LUMIX S PRO 50mm F1.4の光路図になります。

当ブログが独自開発し無料配布しておりますレンズ図描画アプリ「drawLens」を使い、構造をさらにわかりやすく描画してみましょう。

実に美しい構成図が描かれています。

レンズの構成は11群13枚、球面収差や像面湾曲に効果的な非球面レンズ(aspherical)を第4/13レンズに採用し、色収差の補正に好適な特殊低分散ガラス(ED)を第5/6/12レンズへ採用しているようです。

一昔前までは、標準レンズ50mm F1.4とあればダブルガウス型と相場が決まっておりましたが、超高解像度が求めれらる現代ではガウスの面影など微塵も感じさせない高度な構成となっています。

ミラーレス用レンズらしく、撮像素子付近までみっしりとレンズが詰まっています。

完全に酷似するわけではありませんが、ミラーレスカメラ化により空間できたレンズの撮像素子側に凹レンズを配置を配置するのはNIKON NIKKOR Z 50mm F1.8などでも見られる構成です。

 関連記事:NIKON NIKKOR Z 50mm F1.8

縦収差

左から、球面収差像面湾曲歪曲収差のグラフ

球面収差 軸上色収差

球面収差から見てみましょう、基準光線であるd線(黄色)を見ようにもあまりに各波長の収差が小さすぎて判別ができません。

過去の分析でもこれほどまでに補正されたレンズがあったでしょうか…

軸上色収差も異常なレベルで補正されています。

像面湾曲

像面湾曲も、もはや何かの間違いかと見紛うばかりの高度な補正を実現しています。

歪曲収差

歪曲収差は、画面の隅である像高21mmでは6%程度に達し、一般的な50mm F1.4レンズの倍以上の収差があります。

これは画像処理による補正を前提としていることの現れであります。

倍率色収差

倍率色収差も画像処理により補正の容易な種類の収差ですが、歪曲とは異なりほとんど完全に除去しています。

倍率色収差を画像処理で補正することで色のにじみは除去できても、解像度の低下は残るため、画像処理に頼らず収差補正することで少しでも解像度の向上を図ったのでしょうか。

横収差

タンジェンシャル、右サジタル

横収差として見てみましょう。

左列タンジェンシャル方向、右列サジタル方向もどちらなのか見間違うほどに小さく補正されています。

F1.4の大口径レンズで、ここまでの補正をしているレンズは無いように思います。

新発売

スポットダイアグラム

スポットスケール±0.3(標準)

ここからは光学シミュレーション結果となりますが、最初にスポットダイアグラムから見てみましょう。

まずは、標準スケールでの表示からですが、スポット像が小さすぎて優劣がわからないレベルですね。

スポットスケール±0.1(詳細)

さらにスケールを変更し、拡大表示したスポットダイアグラムです。

拡大しても十分に補正されていることがわかります。

MTF

開放絞りF1.4

最後にMTFによるシミュレーションの結果を確認してみましょう。

開放絞りでのMTF特性図で画面中心部の性能を示す青線のグラフから、画面の隅の性能を示す赤線のグラフまで高く位置も高いレベルで一致しています。

中心から周辺まで高い解像度で、なおかつ湾曲成分もほとんどない事を示しています。

小絞りF4.0

FnoをF4まで絞り込んだ小絞りのMTFです。

絞り込むことにより、収差が除去されより解像度が高まります。

ほとんどのグラフが天井に接するような高さまで改善しますね。

総評

記事の冒頭、昭和の思い出に浸っていた私の目を覚まさせるかのような超高性能を見せつけたPanasonic LUMIX S PRO 50mm F1.4。

激戦となりつつあるこの仕様の領域で、頭一つ抜き出た性能であることは間違い無さそうです。

遅れてフルサイズカメラの市場へ参入したPanasonicですが、後発のハンデを跳ね除ける秘密兵器がここにあったようですね。

カメラ本体も更新され、選択肢も潤沢となったようですから今後も目が離せませんね。

以上でこのレンズの分析を終わりますが、最後にあなたの生涯における運命の1本に出会えますことをお祈り申し上げます。

LENS Review 高山仁

このレンズに最適化なカメラをご紹介します。

作例・サンプルギャラリー

Panasonic LUMIX S PRO 50mm F1.4の作例集は準備中です。

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製品仕様表

製品仕様一覧表 Panasonic LUMIX S PRO 50mm F1.4

画角--度
レンズ構成11群13枚
最小絞りF16
最短撮影距離0.44m
フィルタ径77mm
全長130mm
最大径90mm
重量955g
発売日2019年3月23日


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  • この記事を書いた人

高山仁

いにしえより光学設計に従事してきた世界屈指のプロレンズ設計者。 実態は、零細光学設計事務所を運営するやんごとなき窓際の翁で、孫ムスメのあはれなる下僕。 当ブログへのリンクや引用はご自由にどうぞ。 更新情報はXへ投稿しております。

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